雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
62 巻, 2 号
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  • 杉江 伸祐, 成瀬 廉二
    2000 年 62 巻 2 号 p. 117-127
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    積雪中の水の移動を知る上でもっとも重要なパラメータである不飽和透水係数を, しまり雪 (平均粒径0.5mm, 平均密度530kg/m3) および中ざらめ雪 (1.3mm, 620kg/m3) と大ざらめ雪 (1.7mm, 610kg/m3) の3種類の雪について実験室で測定した.実験は, 0℃の恒温槽内にて, 水の流下フラックスを一定にする「フラックス制御型定常法」によって行った.積雪中の水の負圧 (サクション : h) と流下フラックスから, 不飽和透水係数Kとサクションhの関係K (h) を求めた.次に水分特性 (サクションと含水率の関係) の測定結果を用い, 不飽和透水係数と重量含水率θwの関係Kw) に変換した.その結果, 不飽和透水係数Kは, 含水率の減少にともないべき乗の関係で減少することが分かった.これをK=aθmで表わすと, 減少率を表わすmは雪質の違いによって大きな差があり, しまり雪 : 1.9, 中ざらめ雪 : 4.8, 大ざらめ雪 : 6.3となった.従来の研究では, べき乗数を一義的に3とすることがあるが, 雪質によって使い分けなくてはならない.また不飽和透水係数は, 高い含水率の時, ざらめ雪>しまり雪, 低い含水率の時, ざらめ雪<しまり雪の関係が得られた.このことは, ざらめ雪としまり雪で層を形成している時, 含水率によっては浸透を阻害する層構造があることが示唆された.
  • 岩田 修二
    2000 年 62 巻 2 号 p. 129-136
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    ヨーロッパ各国語で氷河を意味するglacier, Gletscherなどの語に対応する日本での最初の訳語は, 1846年にあらわれた「宿氷」「氷野」である。その後, 「氷山」も氷河の訳語として辞書に現れる.明治時代には「氷田」もひろく用いられた.「氷河」を使用し始めたのは地質学者神保小虎で, 1891年のことである.谷を下流に流動するという谷氷河の実態が理解されるようになったため, 川との類似性から氷の川として「氷河」の語が生まれたと推定される.
  • 山田 知充
    2000 年 62 巻 2 号 p. 137-147
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    地球温暖化の影響でネパール王国は, 1960年代以降少なくとも14回, 3年に一度以上の頻度で氷河湖決壊洪水 (Glacier Lake Outburst Flood, 略称GLOF) に襲われている.氷河湖は岩屑に覆われた氷河の末端に形成されて, モレーンで堰き止められている.モレーンは小氷期にできた不安定な堆積物である.容易に決壊し, 数百万m3から数千万m3の湖水が数時間のうちに一気に溢れ出すためGLOFは鋭い洪水波形をもつ.インフラや村落の生活基盤の破壊, 人命や家畜の損失に加えて, 斜面崩壊, 森林破壊, 河床への膨大な堆砂など, ヒマラヤの自然にも深刻な損傷を与える.多量の土砂を含むため土石流の様相を呈し, 破壊力が大きい.現在拡大を続けているネパールの氷河湖は1950~1960年頃に誕生した.その後急激に成長し, 長さ1~3km, 幅500m, 深さ80~130m, 貯水量3000~8000万m3もの大きさに拡大を遂げ, 今後のGLOF発生の危険は極めて高い。本総説では氷河湖を持つ氷河の特徴と氷河湖の分布, 氷河湖決壊洪水の実態, その急激な成長過程を紹介し, 今後に残された課題を述べる.
  • 寧 培愛, 谷口 慶治, 小泉 仁, 仲野 豊, 渡辺 貞一, 平川 仁彦, 山本 洋一
    2000 年 62 巻 2 号 p. 149-157
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    スキーヤーの技能レベルの評価を客観的に行うために, 画像処理の技法を導入して定量的に評価する方式の研究を行った.その方法はスキーヤーの動画像を1/30秒毎にサンプリングして静止画像としてコンピュータに入力し, そこから次の3つのパラメータを抽出して, これらを技能レベルの評価に用いた.
    (1) ターンの安定性を表す角付け角と上半身と下半身の体軸の差の角の和.
    (2) スキーのズレの大きさを評価する迎え角.
    (3) スキーヤーの前後のバランスを評価するため, スキーに垂直な線とスキーヤーの重心のなす角
    これらの3つのパラメータを組み合せることにより, 全日本スキー連盟 (SAJ) の実施する1級並びに2級の技能テストの受験者の技能レベルを総合評価できることが明らかになった.
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