雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
65 巻, 4 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 伊豫部 勉, 原口 昭, 西尾 文彦, 小林 俊一
    2003 年 65 巻 4 号 p. 365-376
    発行日: 2003/07/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    北海道東部太平洋岸に位置する落石地区において,土壌凍結期における泥炭地集水域内の物質動態を評価するために,流出水の化学性とその変動要因を,降水の化学性と泥炭土壌凍結との関連から検討した.降水中の主なイオン種はNa+とCl-であり,林内雨中のMg2+,Ca2+,SO2-4,K+,NO3-は林外雨と比較して高濃度であった.流出水のイオン種はNa+,Cl-が主体であり降水の化学性を反映していた.林内雨中の電気伝導度およびNa+,Cl-,Mg2+,SO42-,Ca2+濃度のピークは,25日間の無降水期直後の降水において観測された.この林内雨中の濃度上昇は,林冠が無降水期間中に捕捉した乾性沈着物質を,降雪が林冠を通過する際に取り込んだことが原因である.3月上旬の流出水には,Na+,Cl-,Mg2+,Ca2+,SO42-,K+が高濃度で含まれていた.この流出水中の濃度上昇は,無降水期間中に大気から沈着した乾性降下物の積雪表面への蓄積と表層土壌凍結による土壌内への融雪水の浸透が阻害された結果,降雨により高濃度の化学成分を含んだ表面流出水が生成し,これが流出水として流出したことによる.
  • 関口 辰夫, 丸井 英明, 秋山 一弥
    2003 年 65 巻 4 号 p. 377-387
    発行日: 2003/07/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    平成12年6月18日,新潟県浅草岳でブロック雪崩災害が発生し4名の犠牲者を出した.ブロック雪崩は,浅草岳山頂北西側のヤスノ沢右支谷上流部,地すべり滑落崖の稜線付近で発生した.崩落した雪崩ブロックは筋状地形に沿って流下し,斜面下方の雪渓で犠牲者を直撃した.災害発生直後に撮影された空中写真の判読によれば,災害発生斜面の周辺では,ブロック雪崩が発生している斜面やブロック雪崩発生の可能性が高い斜面が多数みられた.判読されたブロック雪崩はいずれも災害発生斜面と同様に遷急線上から発生し,見通し角が30~42°,到達距離が90~350mとなり,到達距離や見通し角は,既往の全層雪崩や表層雪崩の見通し角や到達距離と同程度であった.また,周辺のブロック雪崩発生の可能性が高い斜面に存在する残雪の多くは,遷急線直上部に位置し,クラックやオーバーハングの形態がみられた.これらのブロック雪崩発生斜面やブロック雪崩発生の可能性が高い斜面の特徴から,ブロック雪崩は残雪が融雪やグライドにより遷急線から崩落して発生したと推定される.また,これらの斜面の多くは全層雪崩頻発斜面にみられる筋状地形が存在し,しかも,デブリ中に削剥物が多数混在していることからブロック雪崩は全層雪崩と同様に地形形成作用の一部を担っていると考えられる.これらを総合すると,調査地におけるブロック雪崩の発生過程は,以下の四つの段階を経るものと考えられる.すなわち,第一段階;降雪と積雪,第二段階;クラックの形成とグライドの発生,第三段階;全層雪崩の発生,第四段階;ブロック雪崩の発生,である.
  • 金澤 繁樹, 荒川 政彦, 前野 紀一
    2003 年 65 巻 4 号 p. 389-397
    発行日: 2003/07/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    非回転式の摩擦測定器を製作し,低温室(-10℃)で滑り速度10-7m/s~10-3m/sおよび垂直応力123,245,368kPaにおける氷・氷および氷・他物質(ガラス,花崗岩)の摩擦測定を行った.氷・氷摩擦係数は,速度を10-4m/sから10-7m/sまで減少させるにつれて,0.1から1まで増加した.一方,氷・ガラス摩擦では速度10-3m/sから10-5m/sまで減少させるにつれて,0.04から0.02まで減少した.この速度領域における氷・氷摩擦係数が,低速度ほど増加する結果は,これまでの伝統的な凝着理論,すなわち摩擦面の氷の塑性流動だけでは説明できない.氷・花崗岩の摩擦係数は,速度を10-3m/sから10-6m/sまで減少させるにつれて,はじめ増加した後に減少した.氷・氷摩擦の摩擦様式はスティック・スリップと滑らかな滑りに分けられたが,速度減少とともにスティック・スリップは徐々に滑らかな滑りへ移行した.しかし,氷・他物質摩擦では,今回実験を行った全ての速度領域で摩擦様式は滑らかな滑りであった.これらの結果は,摩擦接触面における氷焼結を考慮したMaeno and Arakawa(2003)の凝着せん断理論によって説明された.
  • 福嶋 祐介, 木本 二郎, 原 正栄, 小林 敏夫, 酒井 龍市, 石丸 民之永, 八戸 剛志
    2003 年 65 巻 4 号 p. 399-403
    発行日: 2003/07/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    長岡市よりの委託を受けて,新しい地下水節水型の消雪パイプの有効性を確認し実用化を図るために,長岡市道にて消雪パイプの実証試験を行なった.このプロジェクトは産・官・学の協力の下でおこなわれ,現場実験は実質的に平成15年1月15日に始まった.消雪パイプは極めて有効な除排雪システムではあるが,地下水を用いることで地盤低下,地下水位減少に伴うくみ上げの困難,歩行者に対する散水など,さらに消雪パイプを普及させるためには困難も多い.本実証試験は,降雪強度計を用いて降雪量を測るとともに,インバータで揚水ポンプを制御して,必要最小限の散水を行なおうとする新型の消雪パイプである.この消雪パイプの有効性を確認するため,流量計,水位計,圧力計などを取り付け,これらからの出力をADSLを介してサーバーにデータを蓄積し,いつでもデータを利用可能なシステムとした.また,現地にはデジタルカメラを3台取り付け,画像データもインターネットを介して閲覧可能にした.このことで,1月15日から3月31日まで1分間隔(画像データは10分間隔)で保存するようにした.それ以外にADSLを介して制御パラメータの変更もできる.データはまだ十分な解析を行なっていないが,ここに2003年冬季分の成果を示すことにした.
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