土の凍上に関する研究には長い歴史がある.しかし,そのメカニズムは未だに解明されていない.このため,一般には最近の研究成果に基づいた理解が得られていないため,凍上に関して誤った対応が散見される.また,凍上の研究者間でも同一の「凍上現象」を共有しているとは考え難い状況と思われる.
このような認識から本論文ではまず,既往の実験的研究結果から演繹される凍上のプロセスを概説し,「凍上現象」の共有化の一歩としたい.具体的には,凍上の現象的特徴および凍上現象発生の主体となるアイスレンズ近傍の微視的構造を不凍水の諸性質から論じ,これらに齟齬の無い凍上,すなわちアイスレンズ成長のプロセスを記載する.
次に,凍上におけるアイスレンズの成長の初期条件を与えるアイスレンズ発生のプロセスを,先に示した微視的構造を前提に提案する.具体的には,アイスレンズの発生する部位における間隙氷の圧力が,その部位の構造を破断するプロセスを示し,その結果発生する不凍水圧の局所的な低下が続いて起きるアイスレンズ成長に必須の吸水力となることを実験的に示す.
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