雪氷
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66 巻, 2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 赤川 敏
    2004 年 66 巻 2 号 p. 149-161
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    土の凍上に関する研究には長い歴史がある.しかし,そのメカニズムは未だに解明されていない.このため,一般には最近の研究成果に基づいた理解が得られていないため,凍上に関して誤った対応が散見される.また,凍上の研究者間でも同一の「凍上現象」を共有しているとは考え難い状況と思われる.
    このような認識から本論文ではまず,既往の実験的研究結果から演繹される凍上のプロセスを概説し,「凍上現象」の共有化の一歩としたい.具体的には,凍上の現象的特徴および凍上現象発生の主体となるアイスレンズ近傍の微視的構造を不凍水の諸性質から論じ,これらに齟齬の無い凍上,すなわちアイスレンズ成長のプロセスを記載する.
    次に,凍上におけるアイスレンズの成長の初期条件を与えるアイスレンズ発生のプロセスを,先に示した微視的構造を前提に提案する.具体的には,アイスレンズの発生する部位における間隙氷の圧力が,その部位の構造を破断するプロセスを示し,その結果発生する不凍水圧の局所的な低下が続いて起きるアイスレンズ成長に必須の吸水力となることを実験的に示す.
  • 岩花 剛, 町村 尚, 小林 義和, 福田 正己
    2004 年 66 巻 2 号 p. 163-175
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    連続的永久凍土帯に属し,北方針葉樹林(タイガ)帯である東シベリアのヤクーツ近郊で2000年5月~9月の融解期において活動層のモニタリングを行った.観測対象地の活動層の熱収支特性を明らかにすること,および森林と攪乱地における熱・水収支特性を比較し,森林攪乱による永久凍土環境,主に活動層の物理的環境への影響を評価することを目的とし,火災後伐採され11年経過したサイトと成熟カラマツ林の活動層の熱・水収支解析を行った.熱収支解析の結果,調査地での活動層熱収支において融解潜熱の項が地中熱流量に対して大きな割合(カラマツ林で74%,攪乱地で86%)を占めることがわかった.攪乱地では,森林より地中熱流量が大きかったにもかかわらず,融解深に違いが見られなかった.これは攪乱地で融解前の初期含氷率が高く,融解深の進行に,より多くの融解潜熱が必要であることが原因であった.水収支解析の結果からは,6月~9月においては攪乱地で蒸発散量が少なく(カラマツ林の75%),活動層に水分が維持されやすい環境であることが示唆された.土壌水分プロファイルの違いがこの地域の最大融解深を決定する重要な要素であるといえる.
  • 石川 守
    2004 年 66 巻 2 号 p. 177-186
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    不連続永久凍土帯では,凍土の分布形態が複雑であったり,不凍水含有量が一年を通じて大きく変化したりする.これらの凍土特性を観測するために,著者は比抵抗映像法電気探査を北海道大雪山やネパールヒマラヤ,モンゴルなどで実施してきた.本論ではこれらの観測結果に基づき,本手法の有効性とその適用上の問題点を述べる.凍土の比抵抗値は地域によって大きく異なり,比抵抗値のみから凍土の有無を決めることはできない.しかし,地温観測を組み合わせたり,氷の電気比抵抗値を参照したりすることによって,比抵抗映像法は微小空間スケールでの凍土層の広がりや厚さ,地下氷などの検出に有効な手法となる.また,活動層や永久凍土層中に含まれる土壌水分量や凍結融解状態などが観測できることが,モンゴルでの事例から示された.これらの土壌水分状態の観測を,特に複雑な地下構造下で実施するには,掘削やトレンチなどの直接的手法,またTDR法や炉乾法などのような従来の土壌水分観測よりはむしろ比抵抗映像法電気探査が適している.
  • 福井 幸太郎
    2004 年 66 巻 2 号 p. 187-195
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    飛騨山脈北部の立山は豪雪かつ多雨という特異な気候環境下にある.ここでは,永久凍土が一年の大半を積雪に覆われるカール内の北向き斜面に分布しているが,その形成維持機構は不明であった.そこで,永久凍土が分布しているカール内と分布していない稜線付近の2地点で2000~2002年にかけて地中温度,降水量,土壌水分の無人観測を行い,両地点の地中温度状況の比較から,永久凍土の形成維持機構を検討した.稜線付近では梅雨期の降水の浸透により地下深部まで熱が速やかに運ばれ,凍土の急速な融解を引き起こす.故に永久凍土が分布できる環境にない.一方,カール内では,10月下旬~11月上旬の積雪から露出している時期に生じる速やかな凍結と1~5月の積雪を冷源とした凍結により凍土が形成,冷却され,夏遅くまで残る積雪により凍土は一年の大半を融解から免れる.このため,カール内では永久凍土が形成維持される.
  • 上田 保司, 森内 浩史, 生頼 孝博
    2004 年 66 巻 2 号 p. 197-205
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    地盤凍結工法を実施するとき,凍土と既設構造物との凍着せん断強度は掘削中の止水維持を左右する重要な力学特性である.しかし,現場の掘削深度に応じた大きさで凍着面に作用する垂直応力の影響が不明なため,凍着せん断強度は設計上の不確定要素となっている.
    本研究では両者の関係を明らかにするため,凍着面に垂直応力を作用させた,凍土と鉄材との凍着せん断実験を行った.その結果,鉄材との凍着せん断強度は,垂直応力が大きいほど,砂凍土および粘土凍土とも増加したが,増加勾配は前者の方が後者よりも大きくなった.また,試料土と鉄材とを凍着させる際にも両者の接触面に垂直応力を与えると,凍着せん断強度はさらに大きくなった.さらに,その増加には,凍土と鉄材との静止摩擦力が寄与し,内部摩擦角が大きい凍土ほど垂直応力が強く影響することが示された.
  • 松岡 啓次, 生頼 孝博
    2004 年 66 巻 2 号 p. 207-215
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    冷熱蓄熱では,昼夜間の利用として既に氷蓄熱が実用化されている.凍土の潜熱を生かし,地盤を冷熱蓄熱材として冬期に凍土造成し,夏期に冷熱利用する季節間利用が考えられる.冷凍機を用いて冬期に凍土造成することは,冷却効率が夏期に比べ向上するため,効果的な蓄熱が期待される.
    凍土蓄熱及び冷熱回収についての実用モデルによる3年間のシミュレーション解析を行った.効果的な冷却管の群設により,冷熱利用時の熱回収効率(冷却熱量に対する回収熱量の割合)は,2年目には80%以上の値が得られた.冷凍機を用いた場合の効果的な冷却温度の試算結果を示すと共に,冷凍機を用いないで冬期の冷気とヒートパイプのみの利用による凍土造成の検討結果を示す.
  • 宗岡 寿美, 土谷 富士夫, 辻 修, 武田 一夫
    2004 年 66 巻 2 号 p. 217-226
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    地点・勾配が同一で方位の異なる4方位斜面を対象として冬期の気象環境に関する現地観測を寒冷・少雪の地域で5冬期間にわたり実施した.とくに斜面方位に着目し,全天日射量などの冬期の気象環境と積雪・凍結との関係に示唆を与えるなどの検討を加えた.
    その結果,全天日射量の最も多い南向き斜面では他の方位より気温・地温がともに高い.一方,北向き斜面では,全天日射量が圧倒的に小さいために気温は最低となり,地温も比較的低い.しかし,こうした北向き斜面と比較して,積雪深は東向き斜面で大きく西向き斜面では凍結深さがつねに最大となる.このように,斜面方位の違いによって,全天日射量のみならず積雪深などが凍結深さに大きく影響している.
    これらの知見をもとに考えると,北向き・西向き斜面は最大凍結深さが相対的に大きいため,ほかの方位の斜面と比較して保全上留意すべき方位である.今後,斜面を造成・保全していく上で斜面方位を考慮した保全対策が必要となる.
  • 曽根 敏雄
    2004 年 66 巻 2 号 p. 227-233
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    北海道置戸町,鹿ノ子ダム左岸の風穴が分布する斜面において地温観測を行なった.ここには永久凍土が存在していたが,1979年の人工改変により斜面の状況が変化し,1990年までには永久凍土は消滅したと考えられている.しかし寒冷であった2001年に地下2m深で越年性凍土が形成された.年平均気温が約4℃以下の寒冷な年が継続すれば,再び永久凍土が形成される可能性が高い.
  • 池田 敦, 松岡 憲知, 末吉 哲雄
    2004 年 66 巻 2 号 p. 235-239
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    黄河源流域(青蔵高原北東縁)で進行中の永久凍土の変動と乾燥化との関連を解明する研究計画の一環として,簡易弾性波探査によって永久凍土と季節的融解層厚の空間分布を予察的に調べた.黄河源流域の共和(コンホー)と瑪多(マドゥ)の間では不連続永久凍土帯の下限は海抜4100m付近にあり,その下限高度での年平均気温は約-3℃と見積もられる.源流域の高原上のほぼ全域に永久凍土が存在するのに対し,高原縁辺の山間部の主な谷沿いには永久凍土は存在しない.高原上の海抜4200~4300mにおける8月下旬の季節的融解層厚は約3mである.広大な青蔵高原での永久凍土分布を把握するうえで,弾性波探査は簡便で適している.
  • パイプラインと永久凍土の相互作用にかかわる問題の概要
    Anatoli BROUCHKOV, Gennady GRIVA
    2004 年 66 巻 2 号 p. 241-249
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    本稿では,寒冷地域での主にガスパイプラインの現状について,既存の情報と筆者らの研究結果とをあわせて述べる.永久凍土帯のパイプラインではパイプ周辺の地盤とパイプとが直接的な相互作用をする.この部分では凍結・融解によるさまざまなプロセスが発生・活発化する.パイプ周辺の湿地化の結果,ガスパイプラインには顕著な水平方向および鉛直方向の変位が生じ,強い応力腐蝕によるパイプの破壊が起こる.氷点下の温度でパイプラインを稼動させた場合には,ガスパイプラインが通過するタリクの凍結にかかわる新しい問題が発生する.最近の統計では,これらの問題とかかわっていると考えられる事故が数多く報告されている.
  • 土谷 富士夫
    2004 年 66 巻 2 号 p. 251-257
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
  • 生頼 孝博
    2004 年 66 巻 2 号 p. 259-268
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    凍土の研究は,寒冷地の冬期凍結が建物や道路に及ぼす“凍上害”から始まった.その後,冷凍機や液化低温ガスによる冷熱で地盤を凍結させる状況が生まれ,人工凍土研究の必要性が高まった.自然凍土の研究成果が人工凍土研究に生かされたのは当然ではあるが,両者の凍土にはいくつかの条件の違いもあり,新たな研究の必要性も生じた.また,我が国では外国に比べて地盤が軟弱であり,地中温度も比較的高いという条件もあり,独自の研究が進められてきた.本稿では,凍土の持つ遮水性と強度特性を利用した人工凍土の研究成果を,課題発生状況と共に,概説する.
  • 2004 年 66 巻 2 号 p. 338
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
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