氷水輸送方式地域冷房システムが開発途上にある.このうち,冷熱輸送媒体として水以外に添加剤などを一切混ぜないシステムでは,用いられる氷の粒径が比較的大きくなるので,需要家側熱交換装置として,氷水直接接触式熱交換器と既存の隔壁式熱交換器を組み合わせる方式が最適と考えられる.本研究は,この直接接触式熱交換器の基本構造を決定することを目的として,鉛直円筒容器内の氷粒子層とそこを通過する水の間の伝熱特性をバッチ式実験によって調べた.用いた氷粒子は粒径10mm程度のチップアイスである.容器入口水温に対する出口水温の比は氷粒子層厚さにより決まり,入口水温,熱交換部内径,および流速にほとんど依存しない.この結果は,氷粒子層と水の間の熱伝達率が入口水温,熱交換部内径には影響されず,流速に比例することを示している.水の流れ方向については,下向きよりも上向きの方が熱交換性能は高く,かつ安定性もよい.この結果は,本研究で扱ったような粒径が比較的大きい氷粒子を用いる場合の氷水直接接触式熱交換器は鉛直円筒形で水の流れ方向を上向きにするのが構造の単純さ,省スペース性の観点のみならず,熱交換性能の観点でも最適であることを示している.
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