雪氷
Online ISSN : 1883-6267
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66 巻, 6 号
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  • 力石 國男, 高森 泰人, 宮畑 信吾, 半田 友美
    2004 年 66 巻 6 号 p. 623-636
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    気象観測データの気候値,ロボット積雪深計による日降雪量データ,北半球の客観解析データを解析して,北海道と本州の日本海側の降雪特性を比較した.北海道では日降雪量の変動が小さく少量の雪がコツコツと降る傾向があり,本州(特に北陸地方)では変動度が大きく,時々多量の雪が降る傾向がある.北海道の降雪と本州の降雪の間には相関関係が殆ど見られない.北海道の降雪は基準となる地点と高い相関を示す地域が狭い範囲に限られている.本州では南北に広い範囲で高い相関が見られるが,沿岸部同士の相関,内陸部同士の相関となっている.本州の降雪は海面気圧場や500hPa高度場と明瞭な相関があるが,北海道の降雪はこれらとほとんど相関がない.
    このような降雪特性の違いが生じるのは,降雪に対する地形効果の違いに加えて,本州の降雪は一般的にシベリアから日本海南部への寒気の南下(季節風)によるものであり,その影響が東北・北陸地方の広い範囲に及んでいるのに対し,北海道の降雪は季節風以外にベーリング海方面に移動する低気圧の影響を強く受けており,その影響が低気圧の強さや移動経路によって異なるためであると推論される.
  • その1 粒径および落下速度計測の画像解析手法について
    椎名 徹, 石坂 雅昭, 村本 健一郎, 中井 専人, 佐藤 篤司, 岩本 勉之
    2004 年 66 巻 6 号 p. 637-646
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    画像処理による降雪粒子の自動測定技術を改良して,降雪粒子の種類や降雪形態に関する情報を連続的に取得するための手法を開発した.本手法の根幹は粒子の特徴を落下中の粒径と終端落下速度から推定するところにある.落下中の粒子の形を明瞭にとらえるために速いシャッター速度(1/4000秒)で連続撮影し,画像解析した.従来の量的な計測で採用していた遅いシャッター速度(1/60秒)による落下方向の残像から落下速度を推定する手法を本研究では用いることはできず,別の画像解析手法が必要となった.ここでは,その解析手法を中心に観測の基本的な構成等について述べる.また,本手法と従来手法との測定結果の対比を行う.
  • その2 長岡で観測された降雪粒子と自動観測による検出手法の検証
    石坂 雅昭, 椎名 徹, 中井 専人, 佐藤 篤司, 岩本 勉之, 村本 健一郎
    2004 年 66 巻 6 号 p. 647-659
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    その1で述べた画像処理手法を用いた連続自動観測から,降雪粒子の種類を同定する方法を探った.除風した空間に降雪粒子を導き,終端速度で落下する環境下で落下中の粒子をCCDビデオカメラで連続的に撮影し,その1で述べた画像処理手法によって粒子情報を数値化して連続的に記録できるシステムを構築した.その一方で,降雪時に人手による顕微鏡観測や落下後の粒子の連続画像記録を行い,先の連続自動取得データとの対比によって,降雪粒子の種類がどれくらいの詳しさで同定されるかを調べた.その結果,画像処理をして得られた粒子の粒径と落下速度との関係から,降雪があられであるか雪片であるか,あるいは,単体の霰状雪か雪結晶か,また,雪片であれば雲粒付着の度合い,あられであればその種類による差異などについて推定できることがわかり,これらの粒子群を判別する連続自動観測の可能性を示すことができた.なお,本論文では,雪片については一般にあまり紹介されていないことを考慮して,観測で得られた降雪粒子の写真を示して,自動観測からのデータを対応させながら紹介した.
  • 粉川 牧
    2004 年 66 巻 6 号 p. 661-668
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    アイスドーム上に人間が載る場合の構造安全性に関する数値的検討方法を示した.まず,構造体の氷は弾性的に振舞うと仮定して,載荷半径が小さい円形等分布荷重を受ける偏平球殻の力学問題として捉え,その理論解を求めた.そして,その円形等分布荷重がドーム上の1箇所(シングル荷重)と2箇所(ツイン荷重)に作用する場合について,それぞれ,ドーム下面に生ずる最大引張応力を算定する近似式を提示した.人間一人の重さが100kg,氷の許容曲げ応力を3kg/cm2程度とした場合,この近似式に基づいてアイスドームの最小氷厚を計算すると(但しツイン荷重の場合,荷重中心間距離は1m),底面直径が15m以下の場合は6cm,15mを超え30mまでのアイスドームの場合は7cm,となる結果を得た.
  • 山野井 克己, 竹内 由香里, 村上 茂樹
    2004 年 66 巻 6 号 p. 669-676
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    積雪のせん断強度を高分解能で迅速に求めるため,デジタル式荷重測定器(プッシュゲージ)で測定した硬度からせん断強度を推定する方法を考案した.せん断強度は硬度と相関が高く,雪質によらず硬度のべき乗で表せることがわかった.この関係を用いて,プッシュゲージで測定した硬度分布からせん断強度の分布を推定し,雪崩が発生した斜面積雪の安定度を計算した.一般に雪崩発生基準とされる安定度が1.5以下の層と,実際に確認したすべり面や弱層が一致し,本手法の有効性が確かめられた.
  • 熱収支モデルの構築と熱負荷線図の作成
    上村 靖司, 星野 真吾
    2004 年 66 巻 6 号 p. 677-692
    発行日: 2004/11/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    路面融雪装置の設計の際に必要となる自然要因の熱負荷について,路面上の熱収支に基づくモデルを作成し,入手の容易な気象データを用いて,1時間単位で算出する方法を示した.そこでは路面状態を積雪と露出の端的な状態に分けてモデル化することによって,空間的・時間的不均質な路面状況の変化に言及することなく熱負荷を算定できるよう工夫した.
    国内代表6地点における11年間にわたる熱負荷の頻度分布を求め,札幌,青森など寒冷な地域では露出部の方が熱負荷は大きく,新潟,長岡,富山では積雪部が大きいことを示した.また,全ての降雪時間を無雪化するのは融雪装置に過剰な熱出力を求めることになり,現実的でないことも示した.
    路面のサービス水準を示す指標として無雪化時間率φ(熱負荷発現の累積相対頻度)と設計降雪時間δの2つを導入し,この2つのパラメータから設計熱負荷を求めるφ―δ線図を提案した.従来基準としてきた(δ,φ)=(3h,80%)の条件での熱負荷の計算値は,現在実際に設計に使われている値より小さく,設計指針の見直しが必要であることを指摘した.今後は(3h,90%)または(1h,80%)を基準とし,交通要所等の特に重要な場所については,(3h,95%)または(1h,90%)を採用することを提案した.
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