積雪地における高齢者の人力除雪の実態を明らかにし,体力,自立生活能力と除雪能力との関係を検討することが本研究の目的である.北海道各地の在宅高齢者に対しライフスタイルと身体活動に関するアンケート調査を実施し,男性334名,女性397名の有効回答を得た.さらに,調査対象者のうち男性102名,女性196名に対し文部科学省の体力テストおよび自立生活能力調査(ADL調査)を実施した.
「降雪の毎に除雪をしている」と答えた割合は,男性の場合,65~69歳,70~79歳および80~89歳の各年齢層でそれぞれ80%,88%および73%,女性の場合,それぞれ46%,47%,27%と高い割合であった.男性の場合,通院中の群と通院していない群間および高血圧症の群と正常血圧の群間で「降雪の毎に除雪をしている」と答えた割合に差がなかったことから,多くの高齢者が無理を押してきつい作業に従事していることが示唆された.女性の場合,「降雪の毎に除雪をしている」群と「体力的に無理なのでしない」群との間で有意な差が見られた指標は,年齢(72.8±6.1と78.6±7.3歳),身長(148.2±5.4と145.3±7.0cm),握力(22.7±5.0と19.1±5.3kg),10m障害物歩行(10.1±3.9と13.2±5.3秒),6分間歩行(494±77と426±88m)およびADL得点(27.1±4.5と22.0±4.7点)であった.これらの結果から,積雪地の高齢者にとって筋力、脚パワーおよび持久性などの体力が除雪の重要な決定要因であることと結論される
抄録全体を表示