気象官署とアメダス(地域気象観測点)の平年値を利用して,日本の温暖積雪地域である「湿り雪地域」(1月の月平均気温が0.3℃以上で冬期12月から3月のいずれかの月の最深積雪が10cm以上の地域)について,1,2月両月の平均値を用いて月最深積雪と月平均気温および月降水量間の関係を調べた.その結果,両月平均の月最深積雪の平年値には,同じ期間で平均した月平均気温と月降水量で決まる上限があることが明らかになり,その目安を与える式を提案した.その式によれば,月最深積雪の上限は,月平均気温が一定であれば降水量に比例して増加し,月降水量が一定であれば,降水量によって定まる値から月平均気温に比例して減少する.また,同式は月平均気温(1,2月の平均)が6℃を超えると,降水量の如何に関わらず,冬期12月から3月のいずれの月においても月最深積雪が10cm以上にならないことも表している.その他,本論では提案した式の意味づけや応用についても触れた.本式を用いると,気温や降水量から月最深積雪の取りうる範囲を推定することができ,気候変動下の積雪の多寡を検討するのに役立つと考えられる.
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