雪氷
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69 巻, 2 号
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  • 概要と雪氷学への応用・展望
    安仁屋 政武
    2007 年 69 巻 2 号 p. 147-153
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    リモート・センシングについて,その概要,データの種類と特徴,解析方法について概説し,雪氷学への応用をレヴューして,これからの展望を行った.レヴューは,国内外の雪氷学関係の学会誌と主要なリモート・センシング関係の学会誌(日本4雑誌;外国6雑誌)に1985年以降に掲載された論文をとりあげ(約400編),解析内容,衛星/センサー,対象地域(氷河)などで整理して行った.日本の雑誌に掲載された論文は少なく,その多くは海氷関係であった.雪氷学の代表雑誌,J.Glaciol.とAnnals Glacio1.には併せて約270篇の論文が載っており,内容は氷河流動,質量収支,氷河変動,氷厚変化,など多岐にわたっている.衛星/センサーは光学系ではランドサットMSS/TM/ETM,レイダーではERS-1/-2が多かった.対象地域は南極が圧倒的に多く,グリーンランドが続く.その他アラスカ,アイスランドも多い.ヒマラヤ/チベット,パタゴニアは少なく,アルプスがほとんどなかった.海氷のリモート・センシングも盛んであるが,今回レヴューした雑誌には僅かに散見される程度であった.1990年代半ばからの傾向として,全天候・全日型のレイダーの活用が増えている.
  • 青木 輝夫
    2007 年 69 巻 2 号 p. 155-167
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    衛星リモートセンシングによって積雪に関する物理量を抽出する方法及びセンサについて解説した.紫外・可視・近赤外域,熱赤外域,マイクロ波領域における積雪の光学特性は,第一に氷の光学的な性質に依存し,次に積雪粒子や積雪層による散乱,吸収,射出といった放射特性に依存する.このため,積雪の光学特性は非常に大きな波長依存性を持っている.その特徴を利用し衛星リモートセンシングによって抽出可能な物理量は,積雪分布,積雪深,積雪水量,濡れ雪の検知,アルベド,雪面温度,雲検知,積雪粒径,不純物濃度などである.これらの物理量は主に光学センサと受動型マイクロ波センサを使って求められる.光学センサでは空間分解能が高く,大気とのエネルギーのやりとりを直接あるいは間接的に測定できるメリットがある(例えば,アルベドや雪面温度)が,雲がある場合には地表面が見えないため,雲の影響を受けにくい受動型マイクロ波センサもよく用いられる.マイクロ波センサは光学センサに比べ,積雪内部の情報も含んでいるため積雪深や積雪水量といった物理量の抽出が可能である.これら衛星センサの特徴と,積雪に関する物理量抽出の原理を概説する.
  • 筒井 浩行
    2007 年 69 巻 2 号 p. 169-184
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    地球上の積雪は,気候メモリーやテレコネクション(遠隔結合)を介し,全球規模の水循環変動,ひいては気候変動へ影響を与えている.その影響を理解するためには,全球規模で時空間的な連続性を保ちながら積雪を定量的に計測する必要がある.その手段として,現在,比較的,天候に左右され難い人工衛星を活用した受動型マイクロ波リモートセンシング技術が広く普及している.本論文では,受動型マイクロ波リモートセンシング技術の中核をなし,また,これまで多くの研究者により積雪を評価する上で生ずる様々な問題に直面しながらも,改善を繰り返し開発され続けている積雪水量(snow water equivalent; SWE),あるいは積雪深を推定するための積雪衛星アルゴリズムの発展について記述する.また最近の受動型マイクロ波リモートセンシング技術の動向として,積雪衛星アルゴリズムに代わり,注目されている積雪を対象とした陸面データ同化手法の研究事例を紹介する.
  • 谷川 朋範
    2007 年 69 巻 2 号 p. 185-200
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    人工衛星による可視・近赤外域のデータを解析する際,しばしば対象としている物体の反射分布をランベルト反射(等方反射)と仮定することがある.これは放射収支を議論する上で重要なアルベドや各種物理量を推定するとき,解析が容易であるからである.しかし,積雪の場合,その反射率は非常に非等方的であるため,この仮定のもとで推定されるアルベドや積雪物理量は過大評価,もしくは過小評価される危険性がある.このため衛星データからアルベドや各種物理量を推定するためには入射角と反射角の角度依存性を考慮した方向性反射率を十分把握する必要がある.本稿では積雪の方向性反射率について,これまで行われてきた分光観測結果,積雪放射伝達モデルによる計算結果を中心に解説する.
  • バルカーサ ゴンサロ, 安仁屋 政武
    2007 年 69 巻 2 号 p. 201-220
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    空中写真や衛星画像は,世界の氷河に関する知識を向上・蓄積させて来た道具として非常に効果的で,それらが果たしてきた役割は大きい.この解説記事ではリモート・センシング・データを使って主に南極・グリーンランド・アラスカ・スバールバル・パタゴニア・山岳地域の氷河を対象として行った研究についてレヴューした.内容を大きく,(1)ある地域の氷河インベントリー作成や氷河変動を求めるための,あるいは氷河表面状態などの氷河マッピング,(2)氷河表面高度の変化から,あるいは夏の終わりの画像を使って氷河質量収支を求める方法,そして(3)氷河流動とその変化,あるいは氷河流出などによる氷河ダイナミクスの解析,などに分けてレヴューを行った.古い空中写真と最近の衛星データを比べることによって,過去数十年間の氷河末端変化・面積変化・体積増減などが求められ,最近の地球温暖化への応答や海面上昇への寄与などが評価されるようになった.
  • 串田 圭司, 原田 鉱一郎, 森 淳子, 岩花 剛, 澤田 結基, 片村 文崇, 福田 正己
    2007 年 69 巻 2 号 p. 221-228
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    凍土に関わるリモートセンシングの研究をレビューした.凍土は生態系と密接な関係がある.凍土一生態系システムは大気との熱・水収支および温室効果ガス収支に関わっている.永久凍土地帯で予想されている温暖化とそのフィードバックを考えると,凍土の変化の広域把握はますます重要性を増す.凍土はたいていの場合,上空から直接見ることはできない.マイクロ波のPバンド(周波数320MHz,波長0.9m)を用いてもせいぜい土中1mの深さまでの情報しか得ることができない.こうした意味で,凍土のリモートセンシングは限られたものであるという見方もあろう.しかし別の見方をすれば,それは,凍土と密接な関係のある1)凍土上の生態系のリモートセンシング,2)地表面の凍結融解のリモートセンシング,3)凍土上部もしくは活動層のリモートセンシング,4)融解湖のリモートセンシング,5)マイクロ波リモートセンシングと地中レーダの統合,6)リモートセンシングを基礎にした地理情報システムによる総合的な解析,から成る広範で学際的な研究分野であると言える.
  • 中村 和樹
    2007 年 69 巻 2 号 p. 229-240
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    オホーツク海における海氷の変化を継続的に観測するための,海氷のモニタリング手法の確立が必要である.海氷のモニタリングのための手法の研究開発を目的とし,比較的薄い一年氷の海氷が存在するオホーツク海北海道沿岸と北海道サロマ湖において,1993年から継続して合成開口レーダ(SAR)と同期した海氷の現地検証観測が行われている.この観測結果からは,氷の成長に伴う氷表面の誘電率の変化をSARにより観測できることが推察された.この観測事実に基づいて,オホーツク海において海氷観測へのマルチパラメータSAR(多周波,偏波,入射角)データの有効性を検証するために,衛星および航空機に搭載されたSARと同期するトルースデータとの比較解析が進められている.本稿では,オホーツク海におけるマルチパラメータSARデータの解析結果を通して, SARを用いたリモートセンシングによる,オホーツク海における海氷のモニタリング手法の研究を解説する.
  • 西尾 文彦, 中山 雅茂, 直木 和弘
    2007 年 69 巻 2 号 p. 241-247
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    海氷は大気-海洋間の熱輸送を抑制するとともに,その分布面積は減少傾向にあり,温暖化の指標として注目されている.海氷は極域の海洋上に広く分布することから,その観測には衛星リモートセンシングが有効である.ここでは,衛星に搭載されたマイクロ波放射計を用いた海氷の観測手法について,衛星による観測データから海氷密接度の情報を抽出する代表的な手法を紹介する.また,海氷から大気への熱輸送量を推定するために必要な海氷の厚さを,衛星搭載マイクロ波放射計の観測データから推定する研究についてまとめた.
  • 石田 邦光, 大島 慶一郎
    2007 年 69 巻 2 号 p. 249-262
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    衛星リモートセンシングデータの中で,多くのデータ蓄積があるにもかかわらず,利用されずにいるデータの一つがMOSデータである.3つの異なったセンサによる同時観測という優れた特性を有しながら,取得されたデータが広く研究に利用されることはなかった.しかしながら,雪氷研究においては,観測対象域が極域に多くあることから,少ないながらも利用されてきたといえる.特に,南極域においては,昭和基地において精力的に受信されたことから,貴重なデータを数多く得ることができた.MOSの一つのセンサであるMESSRによって観測された範囲は昭和基地沖周辺に限られるが,これらの画像からは,南極季節海氷域のさまざまな特徴を知ることができる.a)定着氷から氷縁に向かって氷野内の海氷分布構造がいくつかの特徴的な領域に分類できること.b)沿岸ポリニヤの定常的な出現やポリニヤ内における海氷移動の特徴を知ること.c)氷縁だけでなく氷縁内部まで形成されるアイス・バンド構造を理解できることなどである.ここでは,これらの研究成果を紹介することで,MOS MESSRデータの海氷観測における有効性を示した.
  • 牛尾 収輝
    2007 年 69 巻 2 号 p. 263-271
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    沖合のみならず,大陸沿岸においても南極海氷域は激しい時間・空間変動を示す.砕氷船による昭和基地への人員・物資輸送や基地を拠点とした沿岸海氷上の観測作業を安全かっ円滑に遂行するためには,行動する海域とその周辺の海氷状況を把握することが不可欠である.海氷状況に関する有益な情報となる衛星画像の活用について,最近の事例から紹介する.また,衛星画像を用いて海氷状況の推移を調べることによって,沿岸定着氷の崩壊・流出などの変動特性が見出された.
  • IGOS-P Cryosphere(雪氷圏に関する総合地球観測戦略)から学ぶ
    浮田 甚郎, 西尾 文彦
    2007 年 69 巻 2 号 p. 273-278
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    雪氷圏衛星観測の基本的計画として国際的に動き出しているIGOS-P Cryosphere(雪氷圏に関する統合地球観測戦略)の概要,および国際極年との関係を紹介し,今後,雪氷圏衛星観測に関して日本がとるべき戦略的計画について提言を行った.
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