環境科学会誌
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11 巻, 4 号
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  • 李 南周, 中根 周歩
    1998 年 11 巻 4 号 p. 329-340
    発行日: 1998/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     西中国山地の森林地域を調査域とし,そこに,38カ所のトレーニングエリアを設定した。現地調査によって,地上部バイオマスと林齢との関係を森林植生タイプ(落葉広葉樹林,アカマツ林,スギ・ヒノキ人工林)別に得た。そしてこの関係を用いて,地形補正を行ったランドサットTMデータ(植生化指数)から推定されたバイオマスに基づき,調査域の全森林の林齢を推定した。一方,伐採から再生に至る炭素収支のシミュレーションの結果を引用して,TMデータによって推定した林齢から,各森林植生タイプ別に炭素収支を調査域全林分のメッシュについて推定した。その結果,落葉広葉樹林とアカマツ林については,その収支が-4~4tCha-1y-1の範囲に,スギ・ヒノキ人工林については一8~6tCha-1y-1の範囲にわたっていた。また,どの森林タイプも林齢が10~20年以下の林分で収支はマイナスとなっていたが,このような林分は相対的に少なく,各森林タイプの平均収支は1.69tCha-1y-1(落葉広葉樹林),3.05(アカマツ林),3.39(スギ・ヒノキ林)となった。結局,森林地域(2,040ha)全体で推定された平均炭素年収支は約2.76tCha-1,また,総炭素年収支は5.63×103tCy-1となった。すなわち,西中国山地の典型的な森林域が少なからずの炭素の吸収源として機能していることが示された。
  • 宮崎 英男, 鈴木 誠治, 辻坊 裕, 今田 勝美
    1998 年 11 巻 4 号 p. 341-347
    発行日: 1998/11/30
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     エチレンジアミン四酢酸(EDTA)は人工のキレーターであり,諸工業や農業用などの面で多量に使用されてきた。しかしながら,EDTAはそのまま排出すると生分解性が悪いため,有害金属を捕捉,溶出するといった環境への悪影響が懸念され,実際欧州では規制が布かれつつある。これまでこのEDTA類の分解に関する研究がいくつかなされてきたが,いずれの方法も経済性や効率などの点で実用化に問題があった。そこでわれわれは神奈川県秦野市西部の土壌よりEDT-Feキレートを分解する微生物を分離してその分解能を明らかにしてきた。 今回,その微生物(B-3菌と称す)の特性および分類学的性状を調べた。振盪培養条件下でのFeキレート体の分解率は約50%以下であったが,静置培養下では37℃,10日間で約90%に達した。菌の増殖を促進するためグルコースの添加を試みたが,pHが下降し分解率が悪くなった。洗浄菌体を使ってFe(III)-EDTA分解の至適pHを求めたところpH8.7であった。各種金属存在下での培養では,EDTAのFeキレートのほかMn,Zn,NiおよびCuキレートの存在下では増殖を示した。しかしNa,MgおよびCa塩の存在下では増殖が阻害された。 Bergeyの分類学に準じて分類学的性状を調べたところ,本菌は好気性のグラム陽性の桿菌で芽胞を有し,オキシダーゼおよびカタラーゼテスト陽性であった。また,G+C含量は36.6%であることなどから,Bacillus属に属する細菌の特徴を示した。 EDTA-Feキレートを分解する微生物として単離されたものは,文献上いままでAgrobacteriurn属およびわれわれの見い出したPseudomonas属に属する微生物(A-1菌)の二種が知られているが,前者はEDTA-Feキレート体が高濃度の場合のみ分解し,例えば写真処理廃液のように,低濃度(例えば0.01%)の場合分解しないという問題点があった。今回われわれが見い出したBacillus属の細菌は,先に報告したA-1菌と同様に,低濃度においてEDTA-Feキレート体を効率良く分解する特徴がある。
  • ―環境クズネッツ曲線は成立するか―
    松岡 俊二, 松本 礼史, 河内 幾帆
    1998 年 11 巻 4 号 p. 349-362
    発行日: 1998/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     本研究は,近年,経済成長と環境問題に関する有力な仮説となっている環境クズネッツ曲線の正否を検証する。まず先行研究の整理を行い,その分析方法の問題点を指摘する。次に,それをふまえて行った本研究の結果報告を行う。本研究の対象とした環境指標は,SOx,NOx,CO2(各1人当り排出量),安全な水及び衛生設備への各アクセス率(人口比),森林減少率である。これらの指標の1980年,1990年時点の29力国のデータを用い,回帰分析を行った。まず,各国の環境指標のそれぞれの動向を捉えるために,弾性値分析を行い,想定する関数形を決定した。その結果,2次式で回帰させる妥当性があるのはSOxのみであり,NOx,CO2,安全な水,衛生設備には1次式で回帰させることが妥当であることが明らかとなった。また森林減少率には経済指標で回帰させる妥当性が得られなかった。本研究の結果から,環境クズネッツ曲線の一般性は主張し得ない。また,森林減少など,経済以外にその要因を持つ環境問題があることが明らかとなった。
  • 藤森 英治, 市川 賢治, 高田 英之, 浅井 勝一, 千葉 光一, 原口 紘〓
    1998 年 11 巻 4 号 p. 363-372
    発行日: 1998/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     産業廃棄物焼却炉から排出された焼却飛灰試料について,主成分から超微量元素までの多元素分析を行った。試料をメタほう酸リチウム(LiBO2)を融剤とするアルカリ融解法を用いて溶液化し,誘導結合プラズマ発光分析法および誘導結合プラズマ質量分析法により測定した。本法によりCoalFlyAsh(石炭飛灰)標準試料(NISTSRM1633b)を分析した結果,精度・正確さとも良好であり,本法が飛灰試料の分析に有効であることが確認された。本法を都市ごみ焼却飛灰および産業廃棄物焼却飛灰試料に適用したところ,試料中%~ng/gレベルの約50元素の定量が可能となった。そこで,各元素について地殼の元素存在度に対する試料中濃度をA1を基準とする濃縮係数として求め,各試料間での比較を行った。石炭飛灰では元素の濃縮はほとんど見られなかったが,都市ごみ焼却飛灰および産業廃棄物焼却飛灰では親銅元素(Cu,Zn,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pb)の濃縮係数が特に大きいことが分かった。さらに産業廃棄物焼却飛灰では,Ti, Cr, Ni, Co, Zrなどの濃縮も見られた。これらの差異は,元素の化学的性質に加えて,焼却される廃棄物の種類と起源の違いを反映するものと考えられる。
  • 田中 恒夫, 川島 博之, 岡本 勝男, 黒田 正和
    1998 年 11 巻 4 号 p. 373-380
    発行日: 1998/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     利根川へ流入する窒素負荷量(流入窒素負荷量)の増加は今日の大きな関心事である。本研究では,利根川流域である群馬県で発生する窒素負荷量(発生窒素負荷量)の推定を原単位法より行い,その結果から窒素負荷低減化対策を検討した。窒素の発生源は,家畜(牛,豚,鶏),農耕地(水田,畑地),市街地,森林および人間とした。畜産廃棄物からの発生窒素負荷量は全体の約50%を占め,最も多かった。特に,群馬県南東部(利根川中流域)において,畜産廃棄物からの発生窒素負荷量の増加は著しかった。利根川中流部の刀水橋調査地点の流入窒素負荷量と群馬県での発生窒素負荷総量のそれぞれのピークの間に数年の時間遅れが存在し,流域での窒素蓄積の可能性が示唆された。また,流入窒素負荷量と発生窒素負荷総量から求めた流達率の時期による変化は大きかった。窒素負荷低減化対策として畜産廃棄物の農耕地へのリサイクルが最も有効と判断されたが,農耕地面積は減少傾向にあるため,リサイクルの方法やリサイクル以外の畜産廃棄物の利用の方法を検討する必要があると考えられた。すなわち,畜産業の分散化,流域外への畜産廃棄物の供給も考慮した広範囲の定量的なリサイクル,そして畜産廃棄物の発電等への利用等である。
  • 山田 真知子, 東 輝明, 濱田 建一郎, 上田 直子, 江口 征夫, 鈴木 學
    1998 年 11 巻 4 号 p. 381-391
    発行日: 1998/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
  • 柳 哲雄
    1998 年 11 巻 4 号 p. 393-399
    発行日: 1998/11/30
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
  • 上 真一, 多田 邦尚
    1998 年 11 巻 4 号 p. 401-406
    発行日: 1998/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
  • 門谷 茂, 小濱 剛, 徳永 保範, 山田 真知子
    1998 年 11 巻 4 号 p. 407-420
    発行日: 1998/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
  • ―北九州市洞海湾を例として―Capitella sp.1(イトゴカイ,多毛類)を用いた洞海湾湾奥部の底質環境の修復
    堤 裕昭, 濱田 建一郎, 上田 直子, 山田 真知子, 藤木 智子, 中村 仁美, 和田 育子, 徳田 貴子, 門谷 茂
    1998 年 11 巻 4 号 p. 421-429
    発行日: 1998/11/30
    公開日: 2012/02/09
    ジャーナル フリー
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