西中国山地の森林地域を調査域とし,そこに,38カ所のトレーニングエリアを設定した。現地調査によって,地上部バイオマスと林齢との関係を森林植生タイプ(落葉広葉樹林,アカマツ林,スギ・ヒノキ人工林)別に得た。そしてこの関係を用いて,地形補正を行ったランドサットTMデータ(植生化指数)から推定されたバイオマスに基づき,調査域の全森林の林齢を推定した。一方,伐採から再生に至る炭素収支のシミュレーションの結果を引用して,TMデータによって推定した林齢から,各森林植生タイプ別に炭素収支を調査域全林分のメッシュについて推定した。その結果,落葉広葉樹林とアカマツ林については,その収支が-4~4tCha
-1y
-1の範囲に,スギ・ヒノキ人工林については一8~6tCha
-1y
-1の範囲にわたっていた。また,どの森林タイプも林齢が10~20年以下の林分で収支はマイナスとなっていたが,このような林分は相対的に少なく,各森林タイプの平均収支は1.69tCha
-1y
-1(落葉広葉樹林),3.05(アカマツ林),3.39(スギ・ヒノキ林)となった。結局,森林地域(2,040ha)全体で推定された平均炭素年収支は約2.76tCha
-1,また,総炭素年収支は5.63×10
3tCy
-1となった。すなわち,西中国山地の典型的な森林域が少なからずの炭素の吸収源として機能していることが示された。
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