環境科学会誌
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11 巻, 2 号
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  • 川西 琢也, 戸田 任重, 野村 信博, 田中 高志, 林 良茂, 小泉 博, 川島 博之
    1998 年 11 巻 2 号 p. 123-130
    発行日: 1998/05/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     米の生産調整対策,いわゆる「減反政策」の結果,現在わが国の休耕田面積は65 .9万haに達し,水田作付け面積の実に30%を占めている。この広大な地域を適切に管理し,有効利用するためには,そこでの物質動態を把握することが重要である。本研究では石川県金沢市において休耕田を湛水状態で管理し,年間(無雪期,5月~12月)の炭素・窒素収支を2年間にわたり調査した。調査地における水生植物による純生産量は400~580gC/m2/yrで,土壌への炭素蓄積量は170~210gC/m2/yrであった。表面流出水および浸透水を通して,10~60gC/m2/yrの溶存有機炭素が調査地から周辺の水域に流出した。有機物の分解にともない放出される炭素量は220gC/m2/yrと推定された。窒素に関しては,水生植物による窒素の吸収量が15~18gN/m2/yr,土壌への蓄積量が4~22gN/m2/yr,脱窒量は8gN/m2/yrであり,調査地を通過する間に9~20gN/m2/yrの硝酸態窒素=水中から消失した。 本研究の結果,湛水した休耕田は少なくとも湛水開始後数年間は,土壌への有機炭素の蓄積が認められ,炭素のシンクとして機能していること,また同時に周辺水域への溶存有機炭素の供給源となっていることが示された。窒素に関しては,休耕田は,流入水の硝酸態窒素=かなり低濃度でも,土壌への蓄積,脱窒により,水中からの窒素除去機能を保持していることが認められた。
  • 鹿角 孝男, 宮島 勲, 塩澤 憲一
    1998 年 11 巻 2 号 p. 131-138
    発行日: 1998/05/30
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
     長野県南部の山地は,酸性雨に対する緩衝能の低い花崗岩地帯にあり,年間降水量が約2600mmと県内の平均的なレベルよりも多く,酸性雨の陸水域への影響が現れやすい地域である。本研究では,長野県南部に位置する平谷村において,酸性物質沈着量が増加する夏季に降水および溪流水の化学成分濃度を測定し,酸性雨が溪流水に及ぼす短期的な影響について検討した。溪流水の導電率は平均9.7μS/cm,アルカリ度は平0.042meq/Lと,共に極めて低い値であり,多雨で知られる屋久島の河川水と同様に溶存物質濃度が低かった。溪流水のpH連続測定の結果,降雨後の増水時にpHの一時的な低下現象(pH6.5→6 .1)が観測され,同時に金属成分濃度の増加が認められた。
  • 来田村 實信, 田中 皓, 志村 公久, 本田 由治, 高月 紘
    1998 年 11 巻 2 号 p. 139-146
    発行日: 1998/05/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     湿式フェライト化処理法における有機化合物混入による影響を系統的に解明するために,9種のカルボン酸水溶液およびその水溶液にニッケルを混入した模擬廃液を用いて,フェライト化処理から得られたスラッジ(反応生成物)の飽和磁化δ,処理水中の重金属濃度等を測定することにより,カルボン酸混入量,重金属混入量,およびカルボン酸の諸特性と飽和磁化の関係などについて詳細に検討した。 ニッケルを混入したリンゴ酸,クエン酸および酒石酸系のスラッジの6値はニッケル混入のない系のそれよりそれぞれ小さく,リンゴ酸,クエン酸,酒石酸の順に小さくなる。飽和磁化一カルボン酸共存濃度曲線はその濃度の高い領域において急激に減少し,この減少は水酸基を有するこれらのカルボン酸と鉄イオンとの錯形成相互作用に起因するものと考えられる。 ニッケルを混入した系において,処理水中に残存するニッケル濃度は,3価のクエン酸を除いてカルボン酸のニッケルに対する安定度定数の大きさとともに大きくなる。しかしながら,ニッケルに対する安定度定数の大きいシュウ酸とグルタミン酸については,生成フェライトのσ値は大きく,鉄イオンはフェライト結晶格子点に組み込まれ易く,フェライト粒子の生成には妨害とならず良質のフェライトが生成する。
  • 一ポリカーボネート製造法の評価一
    阪元 勇輝, 廣渡 紀之, 河邊 豊太郎
    1998 年 11 巻 2 号 p. 147-154
    発行日: 1998/05/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー

    バッチ界面プロセス,従来型溶融プロセスおよび非ホスゲン化溶融プロセスによるポリカーボネートの製造につき,CO2排出原単位およびエネルギー原単位を推算し,比較した。その結果,ポリカーボネートのいずれの原単位も,非ホスゲン化溶融プロセス>バッチ界面プロセス>従来型溶融プロセスの順であることが明らかになった。しかし,バッチ界面プロセスで製造されたポリカーボネートに対して再沈精製を追加すると,両原単位の点で,非ホスゲン化溶融プロセスの方がバッチ界面プロセスよりも有利になった。さらに,CO2排出およびエネルギー消費の視点から,非ホスゲン化溶融プロセスの改良について考察した。
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