CVM (Contingent Valuation Method,仮想市場法や仮想評価法と訳される)は,環境の価値を測定するための一手法である。Arrow et al.(1993)では,CVMの精度向上のために面接法の利用が推奨されたが,多大な調査費用が課題である。これに代わる手法として郵送法があるが,調査過程においてどのような要因がどの程度の誤差を生じるのか十分に明らかではない。そこで本研究は,面接法および郵送法それぞれの支払意志額(以下WTP)への影響を,一連の調査過程との関連において示すことを目的とした。本研究では,北海道十勝地方札内川の環境保全に関して,面接法および郵送法によるCVM調査を実施した。さらに,自由回答式と二段階二肢選択式の調査票をそれぞれに用い,札内川流域居住世帯から無作為抽出された4つの被験者群に割り当てた。 結果は以下のとおりであった。第一に自由回答式の場合,面接法と郵送法の間でWTP平均値および中央値ともに有意な差が生じなかった。また,平均値の信頼区間の広がりがほぼ同じであることから,統計的な観点からの両手法の信頼性は同等と思われた。第二に,二段階二肢選択式においてTurnbu11法による生存分析を行った結果,面接法と郵送法の平均値,またそれぞれの累積分布に有意差がみられなかった。ただし,郵送法におけるTurnbull平均値の信頼区間は広く,統計的な観点から信頼性に劣ることが示唆された。第三に,回答者の個人属性,調査票の内容伝達について比較を行った結果,自由回答式では面接法と郵送法の優劣がつけがたかった。一方,二段階二肢選択式では調査票の内容伝達の観点で面接法が優れていた。
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