環境科学会誌
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14 巻, 6 号
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  • 萩原 清子, 萩原 良巳, 清水 丞
    2001 年 14 巻 6 号 p. 555-566
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    近年,都市住民の身近な自然環境への関心の高まりから都市域の水辺環境の整備が望まれるようになってきた。本稿は,都市域の水辺の望ましい姿を描く過程の一段階として,都市住民はどのような水辺を望んでいるのかということを水辺環境への評価を通して把握しようとするものである。環境評価の対象とする環境の価値としては利用価値と非利用価値が挙げられている。しかし,本稿では周辺に多くの人が居住している都市域の水辺の環境評価を行うことを目的としており,人々が利用することにより水辺の評価が高まるとの考えから水辺の利用価値を求めることとした。そのため水辺の環境価値を求める手法として本稿では離散的選択モデルを採用した。離散的選択モデルの水辺環境評価への適用に際しては,選択肢の構造が複雑であること,特性変数が人々の主観的認識に基づくものであることなどを考慮に入れてモデルを構築した。このモデルを実際の都市域の河川に適:用するため周辺住民にアンケート調査を行った。モデル推定に際しては,水辺環境整備のための多くの情報を得るため3つの方法を試みた。まず,得られたデータ(顕示選好データ,Revealed Preference data:RP)をそのまま用い,サンプルを類型化することで良い結果を得ることができた。つづいて,潜在変数を導入することで人々の漠然とした印象で水辺利用の意思決定を行うことを表すモデルの推定を行うことができた。さらに,今後の水辺環境整備へのより多くの情報を得るため表明選好データ(Stated Preference data:SP)を利用した推定も行った。最後に,これらのモデルに基づいて経済的評価額を求めた。しかし,この評価額に関しては,時間価値問題が未だ解決されてない現状では代替案の比較の際のみに使用されるのが望ましく,評価額の絶対値を用いることには注意が必要であることを指摘した。
  • 山内 俊彦
    2001 年 14 巻 6 号 p. 567-575
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
     ダイオキシンの赤外レーザーによる分解には熱分解及び多光子解離がある。熱分解及び多光子解離では,入射波長の選択,つまり吸収係数の大きい波長にレーザーを合わせることが重要である。
    赤外レーザー光による分解で多光子吸収に必要なパワー以下では,ダイオキシンの熱分解が重要な役割を果たす。この時,ダイオキシン類と共に大気中に存在する水蒸気の,レーザー吸収・温度上昇・解離という物理現象による分解(脱塩素化),アシストの可能性を初めて提案した。
  • 中川 吉弘, 小林 禧樹
    2001 年 14 巻 6 号 p. 577-585
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー

    酸性霧による植物影響を調べるため,人工的に酸性霧水液を調製し,暴露チャンバー内でポット植えした3年生スギ苗の地上部に暴露した。葉内の成分分析から次のような結果を得た。
    1. 霧水液のNH4+,NO3-の濃度に比例して葉内のNH4+-N,NO3--Nの濃度も増大した。一方,葉内のMg,Ca濃度は霧水液中の窒素(NH4++NO3-)濃度が3meq/1までは増加するが,それより高い濃度域では低下した。葉のNH4+,NO3-の吸収,Mg,Caの溶脱はpH3.0>4.5であった。
    2. 葉の栄養状態を示す指標とみなせるN/Mg,N/Caをみると,対照木では各々0.072~0.101,0.024~0.026に対し,窒素の高濃度暴露域で各々0.247,0.087とその比は2~3倍大きくなった。このとき同時に葉が黄褐色化を呈することを観察した。
    3. 各地の山地から採取した樹葉の成分分析の結果,樹木衰退が観察されている関東地方赤城山から採取したスギ葉のN/Mgは0.114~0.273,N/Caは0.025~0.043となり,いずれも衰退の見られない芦生に比してその比が2~3倍高かった。これは,NH4+の取り込みに伴う栄養状態の不均衡が既に生じていることを示していると考える。
    以上のことから,酸性霧による植物への影響は強酸性度によりもたらされる影響(葉面からのMg・Caの溶脱)と,高濃度の窒素の供給によりもたらされる影響(NH4+,NO3-成分の過剰吸収)の2つの側面を持つことを明らかにし,これらの両反応が植物体内における窒素(NH4+-N+NO3--N)とMg,Caの比で示される栄養状態の不均衡を引き起こすことにより,生理的な機能障害がもたらされるものと考えた。
  • 鹿角 孝男, 内田 英夫, 薩摩林 光, 畠山 史郎, 村野 健太郎
    2001 年 14 巻 6 号 p. 587-596
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー

    中部山岳地域の八方尾根山腹において,標高の異なる3地点で1997年5月から9月までの5ヵ月間,オゾン濃度(O3)の測定を行った。その結果,夜間は標高の高い地点ほどO3が高い値を示したが,日中は上下の濃度差が減少する傾向が見られ,混合層の発達による取り込みのため下方地点の濃度が上昇すると推定された。しかし,下方地点の濃度が上方地点を上回るケースは少ないことから,山腹での光化学生成は少なく,八方のO3濃度はバックグラウンド(BG)値を示していると考えられた。
    次に,都市域の光化学オキシダント(Ox)が環境基準(>60ppb)を超過した時間帯の,Ox に占める都市大気中での光化学生成O3の寄与を求めた。仮想的物質であるポテンシャルオゾン濃度(PO)の比較から,八方と周辺3都市(長野市,松本市,大町市)のBGはほぼ同じであると考えられたため,八方山腹のBG値と都市域のOx濃度との差を光化学生成O3と見なして算出した。その結果,長野市,松本市および大町市のOxに占める都市大気中での光化学生成O3の寄与率は,5月がそれぞれ18,19,20%と最も低く,その後夏季にかけて上昇し,9月には40,37,46%の高い値を示した。一方,積算濃度(ppb・h)は春季に高く夏季に低い逆の傾向を示した。
  • 青柳 みどり
    2001 年 14 巻 6 号 p. 597-607
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    本論文では,日本全国の16歳以上の男女を対象とした個人面接調査結果を用いて,一般的価値観と環境に関する価値観および環境保全行動との関連を分析した。アメリカにおける既存の知見と比較吟味したところ,環境に関連する価値観を表す項目の結びつきが,アメリカにおける結びつき方と違っていることがわかった。特に伝統的な秩序を重んじることを表す項目は,アメリカ合衆国では,環境重視の考え方とは対抗する関係にあるのに対して,日本においては環境重視の考え方と結びついていた。 また,環境保全行動と価値観,個人属性の関連についてみると,伝統的な秩序を重んじる価値観,利他主義的な価値観は環境保全行動を促す要因として働いていることがわかった。また,環境重視の価値観は政治的な行動に関しては有意に働いていたが,エネルギー節約,消費者行動に関しては有意でなかった。エネルギー節約,消費者行動に関してみると,経済成長優先的な考え方が,負の方向に有意に働いていることがわかった。教育,年齢などについてみると一般に高い教育を受けた方が行動にいたりやすい傾向にあり,年齢が高い方もまた同じ傾向にある。男性よりも女性の方が行動に至りやすいことがわかった。
  • 石川 創
    2001 年 14 巻 6 号 p. 609-618
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     伊勢湾内奥部と当該海域に注ぐ河川で1996年5月から1999年2月まで揮発性有機化合物(VOCs)19成分を調査した。海域では,クロロホルム,プロモホルム,P-ジクロロベンゼン,ジクロロメタンの濃度が高く,河川では,1 ,1,1一トリクロロエタン,クロロホルム,ジクロロメタン,cis-1,2-ジクロロエチレン,0-キシレン,トルエン,トリクロロエチレン,P-ジクロロベンゼンの濃度が高かった。クロロホルムは両水域全体に渡って高い濃度で検出され,海域ではプロモホルムも広く検出された。多くのVOCs成分は河川,海域ともに冬に濃度が高くなる傾向が認められたが,濃度ではなく流下量でみると,生活排水や産業排水の流入が多い都市河川では夏に流下量が多くなることがわかった。多くの塩素系成分が相互および水質汚濁項目(BOD,COD,SS,T-N)との間で相関が認められたが,1,2-ジクロロエタンとプロモホルムには他の塩素系成分や水質汚濁項目との相関が認められなかった。VOCsの検出濃度と頻度の季節変化からそれらの由来が推定された。
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