環境科学会誌
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15 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • フェルナンド ダブリュー.クリシャンティ, 巣山 弘介, 井藤 和人, 田中 秀行, 山本 広基
    2002 年 15 巻 2 号 p. 95-102
    発行日: 2002/03/29
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     トウモロコシデンプンをアシル化した生分解性プラスチックの土壌中における分解性について試験した。アシル化の程度あるいは可塑剤などの異なる5種類のプラスチックシートを18~48週間,4種類の土壌中に埋設した。この間,経時的にシートを取り出し,その重量減少から分解性を評価した。供試した4種類の土壌は,有機物含量,土性(粒経分布) ,pHなどが幅広く異なる理化学性を有しており,また,1種類は火山灰土壌とした。また,炭素化合物である材料の分解が窒素の添加によって促進される可能性を検討するため,土壌に硫酸アンモニウムを添加した区を設けた。紙にプラスチックをラミネートした材料(L)は18週後に79%の重量減が認められ,プラスチックフィルム部分は脆く変質していた。短鎖のアシル基を有する材料(S)および(MS)は18週後にそれぞれ45%および40%分解した。一方,長鎖のアシル基を有する材料(PF)および(2V)は18週後にそれぞれ6%および1.2%分解したにすぎず,デンプン分子を修飾しているアシル基の長さが生分解性に大きく寄与することが推察された。一部のプラスチックについて48週後まで埋設期間を延長したところ,品質の低下は著しく,材料(S)はほとんどが分解/崩壊し,土壌中から回収することができなかった。以上のような分解性は,幅広く異なる理化学性を有する土壌間で有意な差違が認められなかった。農薬等の比較的低分子の化合物の分解が土壌の種類によって著しく異なる場合が多いが,本試験で用いた材料の場合,多くの土壌中で一定の分解性を示すことが強く示唆された。また,土壌中のC/N比の改変は分解性に影響しなかった。
  • 升田 尚宏, 原科 幸彦
    2002 年 15 巻 2 号 p. 103-111
    発行日: 2002/03/29
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
      公共事業の意思決定過程における近年のトラブルは,早い段階に情報が公開されず,住民は計画が進んでいることを十分に知らされていないことが大きな要因であったといわれる。諸外国の環境アセスメントの早期段階には,代替案の検討等を行うスコーピングと呼ばれる最も住民参加の必要なプロセスがある。しかし,日本ではスコーピングの位置づけが不明確であり,住民参加が保証されるものとなっていない。合意形成を十分に行うためには,事業段階のアセスでは不十分であり,その上位計画における情報の開示を促進させ,戦略的環境アセスメント(SEA)の導入も視野に入れる必要がある。日本では,政策方針の検討あるいは公共事業等の計画を決定する場合,審議会(国家行政組織法第8条に基づき設置されている合議制の機関)で合議する形式をとり,政策決定していくというプロセスを経ることとなっている。その答申内容いかんにより,計画がスタートする場合とストップする場合があり,計画を動かすかどうかは諮問者の意思決定による。その審議内容は,諸外国のアセス手続きで位置づけられているスコーピングと一部重なる。審議会は,傍聴が不可能な場合も少なくないが,吉野川可動堰建設を検討する審議会では,市民やマスメディアの強い要求によって,途中から段階的に審議の市民の傍聴が許された。会議場だけでなく,別室におけるテレビモニターでの傍聴も可能とする方法で公開にした結果,少しずつ関心を持つ市民が増えていった。審議内容が公開され,建設省(現国土交通省)の可動堰建設の根拠となるデータを得た市民団体は,独自に専門家に依頼して水位計算を行い,審議会の中で発表し,その結果が審議会の議論に影響を与えるに至った。この現象は審議の公開の意義を示した一例といえ,今後の公共事業をめぐる合意形成のあり方におけるモデルになると考えられる。審議会の公開は戦略的環境アセスメントの導入につながる第一段階である。
  • 渡邉 泉, 前畑 亜希子, 尾崎 宏和, 久野 勝治
    2002 年 15 巻 2 号 p. 113-125
    発行日: 2002/03/29
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     1999年の5月から10月に日光国立公園尾瀬の周辺,群馬県沼田市から利根郡鳩待峠までの国道および県道より道路粉塵を採取し,V,Cr,Ni,Cu,Zn,Cd,Pt,Pb濃度を測定した。その結果,Ptを除く元素で,山岳部である鳩待峠から近隣の都市部と位置付けた沼田市にかけて濃度が上昇する傾向が認められ,交通量との関係が推察された。山岳部においても,渋滞が頻発する分岐点津奈木付近は,都市部と同レベルの元素濃度が認められ,Pb,Cd,Znで顕著であった。また,ほとんどの元素は,夏山シーズンである9月および7月に最高濃度を示し,入山者が使用する自動車の影響が窺われた。 調査地全域の道路粉塵でPb,Zn,Cu,Cd,Ni,Cr,V濃度間に有意な相関が認められた。このことは,これら元素が類似した起源から放出された可能性を示唆している。また,都市部と山岳部では元素間関係が異なる地域差も認められ,さらに,夏期の尾瀬周辺には,特定の元素組成をもつ比較的大きな汚染源の存在を示唆する季節変動も確認された。 これら重金属類の地理的分布や季節変動は,本地域の交通量および入山者数の変動と類似しており,自動車走行に起因した汚染である可能性が推察された。さらに,山岳部においても観光地は,時期や地点によって都市部と匹敵する重金属レベルを示すことが明らかとなり,本調査地で問題となっている観光客のオーバーユース(過剰利用)がもたらした現象とも捉えるごとが出来る。本調査を実施した1999年は,片品村戸倉から鳩待峠においてマイカー規制の強化が行われ,入山者数が減少した特殊な年である。その後,2000年は規制の緩和が実施され入山者数は回復の兆しをみせた。つまり,本研究は自動車による影響が最も軽度であった年でさえ,調査地の沿道環境に重金属汚染が存在したことを明らかにしており,観光地の自動車利用を再考する必要性を示していよう。
  • 武田 和明, 山本 一清, 竹中 千里, 箕浦 宏明, 福山 薫
    2002 年 15 巻 2 号 p. 127-136
    発行日: 2002/03/29
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     愛知県の三河地域で1994年から1995年にかけて発生した樹木枯損の原因解明を目的として,地形,標高,土壌,樹種,地質,降水量,およびオキシダントと樹木枯損との関係をGIS(地理情報システム)を用いて広域的に分析した。その結果,土壌,地質,及び降水量については,樹木枯損との関係は認められなかった。一方,枯損被害地は,地形的には200m~400mの標高で,主に豊川や矢作川などの主要河川沿いに位置していた。このような地点は,伊勢湾,三河湾上空の汚染大気が侵入してくる経路に位置していること,さらにオキシダントの濃度分布と風向から高濃度オキシダント気塊の侵入が推測されたことから,1994年から1995年にかけて発生した三河地方の樹木枯損の背景には,慢性的なオキシダントストレスによる樹木の衰退の可能性があることが示唆された。
  • 棚田 成紀, 中西 亜紀夫, 玉井 元治, 川崎 直人, 中村 武夫, 松本 和興, 平田 瑞穂
    2002 年 15 巻 2 号 p. 137-141
    発行日: 2002/03/29
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     有機性未利用物質のリサイクルは,持続可能な開発を行っていくために非常に重要である。今回,有機性未利用物質(コーヒー豆かすおよびウーロン茶抽出残渣)の炭化により調製された炭素材料を屋内調湿材として適用するため,有機性未利用物質由来炭素材料への調湿能について検討した。コーヒー豆かすおよびウーロン茶抽出残渣を673~1073Kの温度で炭化し,ヨウ素吸着量を測定した。その結果,ヨウ素吸着性能は炭化温度が高い炭素材料において高くなった。水分吸着量は,873Kで2時間炭化したウーロン茶抽出残渣由来炭素材料において最も高値を,また高い炭化温度で調製された炭素材料の水分吸着量は,市販の活性炭より高い調湿性能を示し,炭素材料の灰分の量に依存することが示唆された。以上の結果より,コーヒー豆かすまたはウーロン茶抽出残渣由来炭素材料は,調湿材として適用できることが明らかになった。
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