近年,特に都心部では,工場排煙による汚染濃度は減少する一方で,自動車排ガスのそれには改善の兆しが見られない。それ故,自動車排ガスを起因とする大気汚染は,現在も進行中の公害であるといえよう。そこで,これら問題を抑制するための手段として,通行車両に追加的な費用を負担させることで,交通量のコントロールを図ることを目的とした「ロードプライシング」制度の導入が検討されている。ロードプライシングの実施によって,社会的に最適な交通量を達成するには,外部費用を計測する必要がある。自動車交通に伴う汚染物質の排出は,周辺の居住者など第三者に対する典型的な外部不経済であるが,この汚染による外部費用を内部化した社会的費用を道路利用者に負担させることで,最適な交通量の達成が可能となるからである。 そこで本研究では,兵庫県尼崎市を対象に,自動車排ガスによる外部費用の計測を行なった。計測には地価と環境属性との関係を統計的に分析する手法であるヘドニック価格法を用いた,その結果,最も環境基準の緩い場合を想定したときでさえ,年間約38億円の外部費用が発生していることが明らかになった。またこの場合,通行車両1台当たりの外部費用は普通車で約74円,大型車で約341円となった。
抄録全体を表示