環境科学会誌
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17 巻, 6 号
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  • 小口 正弘, 田崎 智宏, 亀屋 隆志, 浦野 紘平
    2004 年17 巻6 号 p. 419-429
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     使用量の増加にともなって排出量の増大が予想される各種の小形電池について,回収・再資源化などの対策に向けたより詳細な検討を優先的に行うべき電池種や金属類のスクリーニングをねらいとして,使用済み小形電池に含まれる金属類の資源消費および水質汚染潜在負荷の評価を行った。5種の小形電池について,2002年度に使用済みとなった個数や36種の金属類の含有量および埋立潜在溶出量などを調査,実測し,金属類の資源消費指数および水質汚染潜在負荷指数を算出して,それらの比較を行った。評価においては,スクリーニングという目的を考慮して,多くの電池種,金属類について評価するといった網羅生と結果の分かりやすさに留意した。 5種の小形電池に含まれる金属類のうち,ニカド電池のCdについての資源消費指数および人の健康保護のための水質汚染潜在負荷指数がいずれも他の電池種,金属類と比較して桁違いに大きく,ニカド電池の回収,Cdの再資源化の促進を検討することが重要であると考えられた。また,マンガン電池,アルカリ電池のZn,Mnについての資源消費指数および水生生物保護のための水質汚染潜在負荷指数は,回収が義務付けられているニッケル水素電池やリチウムイオン電池に含まれる金属類よりも大きくなり,不燃ごみとしての処理が認められているマンガン電池やアルカリ電池について,回収・再資源化対策へ向けたより詳細な検討が必要であると考えられた。
  • 磯部 友護, 王 青躍, 坂本 和彦
    2004 年17 巻6 号 p. 431-438
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     バイオフリケットは,低品位石炭,バイオマス,および硫黄固定剤を混合,高圧成型した造粒物の一種であり,低品位石炭の代替燃料として利用することにより,優れた脱硫効果を有するため,中国の酸性雨地域での民生用燃料としての利用性が高い。このような酸性雨地域においては土壌酸性化による植物生長への影響が懸念されている。本研究では,バイオブリケットの燃焼灰が高いアルカリ性を有していることから,酸性土壌の改良材としての有効利用性を評価するために,燃焼灰を添加した酸性土壌を用いて栽培試験を行った。燃焼灰の無添加土壌での栽培植物に対し,燃焼灰添加土壌での栽培植物は乾重量,長さが増加し,植物生長が促進されることが明らかになった。これは燃焼灰添加による酸性土壌の中和効果および燃焼灰に含まれ栄養金属であるカルシウムの供給に起因するものと推定された。さらに,アルミニウムなどの植物生長に有害な金属成分の植物への取り込み量が抑制されていることが示唆された。これらの結果から,バイオブリケットの燃焼灰が酸性土壌の改良材として有効であることが明らかとなった。
  • 鑪迫 典久, 小田 重人, 阿部 良子, 森田 昌敏, 井口 泰泉
    2004 年17 巻6 号 p. 439-449
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     幼若ホルモン様作用物質曝露によって小型甲殻類ミジンコ仔虫の性決定が左右されることを示した研究を受けて,本論文では,(1)曝露の時期をずらした実験における,幼若ホルモン様作用物質(フェノキシカルブ)によるミジンコ仔虫の性決定時期の推定,(2)フェノキシカルブによる雄仔虫誘導効果の曝露停止後の曝露効果の持続期間推定,(3)脊椎動物の内分泌攪乱化学物質として疑われている3物質(ビスフェノールA,ノニルフェノール,オクチルフェノール)と無脊椎動物の脱皮ホルモン(20ヒドロキシエクジソン)についての性決定への影響評価試験を行った。 これらの結果,ミジンコにおける性決定は,育房への産卵前の限られた期間(産卵前0-18h程度)に起きていることが示された。 また,曝露停止によって仔虫性比,産仔数ともに効果が速やかに消失し,回復したことから,幼若ホルモン様作用物質による仔虫性比の変化は,残留効果が少ない攪乱作用によるものであることが示唆された。 ビスフェノールA,ノニルフェノール,オクチルフェノールについてのオオミジンコ繁殖阻害試験では産仔数の低下は確認できたが,雄仔虫は誘導されなかった。このことから,雄仔虫誘導は単なるケミカルストレスによるものではなく,内分泌攪乱によるものであると考えられる。一方,脱皮ホルモンである20ヒドロキシエクジソンでは産仔数の低下はほとんど生じず,試験個体が全個体死亡する高濃度まで試験したが,すべての濃度において雄仔虫出現は確認されなかった。 本研究の結果から,オオミジンコの仔虫性比の変化を利用して幼若ホルモン様作用を持つ化学物質の影響評価が行えること,また短期曝露によって幼若ホルモン様物質の簡易スクリーニングを行うことも可能であることが示された。
  • 岡村 秀雄, 毛利 紫乃, 山田 正人, 井上 雄三, 三重野 紘央, 井藤 悠貴, 藤田 あい, 国本 学
    2004 年17 巻6 号 p. 451-460
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     最終処分場管理における化学物質リスクの早期警戒システム構築のために最適な生態毒性試験バッテリーを選択することを目的として,処分場からの水試料の生態毒性を定量的に評価した。4種類の植物試験および2種類の甲殻類試験を用いて,27種類の浸出水試料の毒性を評価した。供試した水試料は濃縮操作することなしに,供試生物に対して毒性を及ぼした。実験:で得られた50%影響濃度(甲殻類では50%致死濃度)から算出した毒性単位を基準にして毒性強度を3段階に分類したところ,13試料に強い毒性を認め,14試料の毒性は弱いと判断した。12組の原水と処理水の生態毒性を比較すると,処理水10試料には有意な毒性の低減が認められたが,2試料には毒性の低減は認められなかった。また,処理水1試料は強い毒性を保持していた。供試生物の内,藻類および淡水産甲殻類は感受性が高く,かつ毒性の検出頻度が高かったので,これらの試験はテストバッテリーを構成する試験として有用であると考えた。浸出水の生態毒性と化学パラメータとの相関分析から,藻類およびウキクサに対して毒性を生じる4種類の化学物質を推定した。しかし,観察された毒性を浸出水中に検出された化学物質の濃度で説明することは,殆どの試料において困難であった。
  • 尾崎 夏栄, 柏田 祥策, 山田 亜矢, 小野 芳朗
    2004 年17 巻6 号 p. 461-468
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
     我が国の一般廃棄物は安定化および減量化を目的として焼却処分を中心とした中間処理が行われており,2000年度においては,一般廃棄物のうち77.4%が焼却処分されている。焼却飛灰の溶出毒性評価は化学分析により行われているが,この方法では分析対象としている化学物質がどの程度溶出しているかを評価しているにすぎず,複数の化学物質が共存している状態の相互作用による毒性影響評価および生体へのリスク評価は全く考慮されていない。そこで,本研究では焼却飛灰溶出液のヒメダカを用いた1)成魚に対する急性致死毒性試験,2)CYP1A誘導試験,3)雄メダカ成魚に対するビテロジェニン(Vitellogenin; Vtg)誘導試験を行った。その結果,CYP1A誘導はいずれの試料においても観察されず多環芳香族炭化水素類およびダイオキシン類の溶出はヒメダカの肝臓中CYP1A誘導を引き起こさないレベルであった。しかしながら,試験に供した4試料のうち3試料において強い急性致死影響が観察され,96時間半数致死濃度は溶出液濃度40%以下であった。また,曝露試験を行ったすべての試料において0.45~10μg/mLの低レベルのVtg誘導が観察された。本研究により,複数の化学物質が含有される廃棄物焼却飛灰の溶出毒性評価にヒメダカのバイオアッセイが適用可能であることが示された。
  • 中山 秀謹, 庄司 良, 毛利 紫乃, 山田 正人, 井上 雄三, 滝上 英孝, 別府 敏夫, 酒井 康行, 迫田 章義
    2004 年17 巻6 号 p. 469-478
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     廃棄物処分場や工場等の事業所からの地下浸透水による土壌汚染の有害性評価手法の問題点の抽出,評価に用いる植物の感度の比較を目的とし,汚染土壌及び安定型廃棄物固形試料と各溶出試験試料に陸生並びに水生植物のバイオアッセイを適用した。その結果,植物種によって有害性評価の結果が大きく異なった。PCB汚染土壌や重金属汚染土壌の3種類の汚染土壌の中ではリクトウに最も大きな生長阻害が見られたことから、感度の高い有害性評価のためにはリクトウが最適であると判断された。ポット試験においては,発芽率よりも生長率に強い阻害がみられた。しかし,個体差が大きく発芽が不安定であったため,ポット試験においては発芽の安定性を向上させる必要があることが明らかとなった。また,植物を用いたバイオアッセイによる有害性評価に際して,低濃度領域での過増殖の考慮が必要不可欠であることが示された。ポット試験と濾紙試験の結果の比較から,ポット試験と濾紙試験は結果が相関しないことが明らかとなった。その一因として給水の違いによる液固比や溶出方法の相違が考えられた。植物による有害性評価の利用の一例として,PCB汚染土壌のイソプロパノール洗浄前後の有害性を3種の植物で比較した結果,洗浄に効果が認められ,汚染土壌の浄化度合いを把握する方法としての陸生植物の有用性が明らかとなった。水生植物と陸生植物を溶出試料について比較した結果,陸生植物の感度よりも水生植物の感度が良いことが明らかとなった。
  • 毛利 紫乃, 山田 正人, 庄司 良, 酒井 康行
    2004 年17 巻6 号 p. 479-491
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     最終処分場への搬入審査における生物毒性試験の適用法の検討のために,都市ごみ焼却施設の飛灰・底灰,建築廃材と不燃物混合物中間処理後の埋立処分される分別残土,シュレッダーダスト,石膏ボード粉砕物,木くず,都市下水脱水汚泥の7種の廃棄物について環境庁告示第13号による溶出試験液の一般水質,無機・有機機器分析ならびに大ミジンコ急性遊泳阻害試験,藻類生長阻害試験,ヒト肝がん細胞毒性試験,ならびに培養細胞EROD活性試験を行った。ICP-発光/質量分析結果から飛灰溶出液のPbが埋立基準値を超えた他は超過はないが,飛灰,木くず,脱水汚泥でZnが1mg/1を超えるなど灰以外の廃棄物,とくに脱水汚泥からの金属溶出についての考慮が必要であった。急性毒性について飛灰,ついで底灰とシュレッダーダストの溶出液が10倍希釈時も毒性を示し,重金属の寄与は確認されなかった。また,脱水汚泥に有意なEROD活性が検出され,PAHの寄与が示唆された。浸出水,溶出液にみられる高濃度塩類の毒性の考え方と有機物質の影響による藻類の過増殖について毒性試験における対処法を示し,藻類,甲殻類試験:では塩化ナトリウムによる標準曲線補正,培養細胞では培地の塩類濃度調整による対応が適当であるとした。
  • 原科 幸彦
    2004 年17 巻6 号 p. 493-502
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     環境に大きな影響を与える人間行為の意思決定において,環境配慮を支援する手段として環境アセスメントがあるが,事業直前で行われる従来の事業アセスでは十分な環境配慮ができない。このため,より早期の計画や政策の段階から環境配慮を行う方法として戦略的環境アセスメント(SEA)が注目されている。だが,計画段階での住民関与の手段として事業者により行われるパブリックインボルブメント(PI)で対応すれば,SEAは不要だとの議論もある。しかし,アセスはPIの主要な手段であり,SEAを行うことは,PIを行うことでもある。PIは本来,意味ある応答のなされるものでなければならないが,これは,公共空間での議論がなされることを意味する。SEAは計画の意思決定への公衆関与であり,それは維持可能な社会づくりへのPIである。
  • 江原 洋一
    2004 年17 巻6 号 p. 503-509
    発行日: 2004/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     埼玉県では1981年の環境影響評価制度導入以来,事業実施段階でのアセスメントの審査実績を積んできたが,事業内容がほぼ決定されてから環境アセスメントが行われるので,環境影響を回避・低減するために選択できる措置が限定されるという課題に直面した。そこで,2000年7月から事業の計画立案段階において環境影響評価の検討を開始し,2002年3月,「埼玉県戦略的環境影響評価実施要綱」を制定した。この要綱によって計画策定者は,事業の計画立案段階において計画の社会経済的側面を考慮しつつ環境影響評価を実施することとなったが,検討過程では,複数案,ゼロ・オプション,社会経済面の評価,収集された情報に対する計画策定者の説明責任の履行等をどう規定するかが議論となった。要綱に基づいて2002年7月現在までに,「地下鉄7号線延伸(浦和美園~岩槻)計画」及び「所沢市北秋津地区土地区画整理事業」に関してSEAが実施されており,その概要を述べる。
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