本研究では居住環境内における騒音改善に対する人々の支払意思額(WTP : Willingnes to Pay)モデルの構築を目的として,実験:室内で様々な騒音環境下の仮想住環境を構築してその騒音変化に対するWTPをCVMによって計測した。その際に音源として道路交通騒音,鉄道騒音,新幹線騒音,航空機騒音を用いることで交通騒音種間での評価値の差異を検証した。また様々な騒音レベルの変化量に対するWTPを計測することで,騒音改善区間及び改善量の差によるMWTP (Marginal WTP:限界支払意思額)の差異を検証した。その結果,(1)騒音改善量とWTPには正の相関があること,(2)評価額は騒音の種類に依存すること,(3)MWTPは改善区間に関らず一定の値に近似できる可能性があることを明らかにした。評価値に関して,調査Aでは騒音改善量とWTPの関係をモデル化し,道路交通騒音,鉄道騒音,航空機騒音,新幹線騒音でそれぞれ2,159,1,700,2,219,2,184[\/dB/人/年],調査Bでは騒音改善区間とWTPの関係をモデル化し,道路交通騒音鉄道騒音,航空機騒音についてそれぞれ3 ,468,2,880,3,564[\/dB/人/年]を得た。最後にこれまで行われてきた騒音に対する研究事例をまとめ,今後の騒音の経済評価の課題に触れた。
抄録全体を表示