環境科学会誌
Online ISSN : 1884-5029
Print ISSN : 0915-0048
ISSN-L : 0915-0048
20 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 森 保文, Eric W. WELCH
    2007 年 20 巻 2 号 p. 87-94
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     ISO14001の普及が遅れているとされる中小の事業所におけるISO14001導入の理由やISO14001の環境負荷削減に対する効果を見るために,事業所の規模によるISO14001の審査登録の動機および環境に関する削減目標の違いについて,事業所に対して実施したアンケート調査に基づいて,統計的解析を実施した。ここでは従業員数300人未満の事業所を中小事業所とし,調査は2001年の1月から3月に実施した。 ISO14001の審査登録の動機としては,大事業所でEUとの取引が,中小で経営者の支持が特異的に有意であった。エネルギー・廃棄物の削減目標については,中小の事業所と大事業所で設定の理由に特に大きな違いは見られず,ISO14001の審査登録は事業所の規模によらず有意であった。法的に規制されている排出についての削減目標設定の理由についてみると,ISO14001の審査登録はやはり事業所の規模によらず有意であり,事業所の規模による唯一の違いは,規制排出においては中小の事業所で社会的責任が重要である点であった。 中小の事業所においては,大事業所に比べ,経営陣の環境問題への認識の度合いが,ISO14001の審査登録や環境負荷の管理により影響するものと考えられた。 なお中小事業所には支社が含まれており,今後,親会社の規模を含めより詳細に事業所を分類した解析が必要である。
  • ―2002年,2006年のパネル調査による分析―
    原科 幸彦, 杉本 卓也, 清水谷 卓
    2007 年 20 巻 2 号 p. 95-106
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     戦略的環境アセスメント(SEA)は,持続可能な社会づくりのための重要な手段になると期待されるが,その導入は容易ではない。だが,一部の自治体では新しい動きが見られる。SEA制度の我が国での制度化実現のための知見を得るには,現実の動向を把握し,制度化への条件を明らかにすることが必要である。そこで,都道府県と政令市を対象に,2002年に実施された先行調査に対応するパネル調査を2006年1月に行なった。その結果,SEA制度の制定自治体は4団体から8団体に増加した。一方,SEA制度等の導入の態度が後退した自治体も相当数あることが明らかになった。制度化した自治体の導入要因のひとつは,以前はメディアの影響が強かったが,今回は専門家の意見の影響が強いという変化が見られた。制度導入の態度が後退した自治体では,他の制度を運用するためという理由が多いが,その他の導入阻害要因としては人材や手法の不備をあげており,導入時の問題が指摘されていることは制度化が次第に具体的な課題になりつつあることを示唆している。また,SEAの核心である代替案の評価方法では,社会・経済面の比較考量は一般的には導入困難だが,SEA制度の導入自治体では,これを含む試みもあることが確認された。制度規定の実現度の分析結果では,調整困難項目は先行調査と同じだが,導入可能項目は先行調査のものに加え,新たに意見書提出と説明会開催が加わり,第三者審査の必要性への認識が高まるなど,実現性への前進が見られた。
  • 山形 与志樹, 中村 仁也
    2007 年 20 巻 2 号 p. 107-117
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     本研究は,近年新たに気候変動への影響が懸念されている炭素吸収源の変動リスクが,グローバルな温暖化対策に関する国際合意形成に与える影響についてのシミュレーション分析である。従来の統合評価モデルによるグローバルな温暖化対策に関する分析に,陸域炭素吸収源の変動リスク(排出源への転換)の評価を加えるとともに,利害得失が異なる多様な意思決定主体(地域・国家エージェント)間における地球温暖化対策に関する国際合意形成を,微分ゲーム手法を用いて動的ゲームとして記述して,モデルシミュレーションを実施した。基本となる統合評価モデルとしては,国際的に利用されているRICE (Regional Dynamic Integrated model of Climate and the Economy)モデルを用い,その上に炭素吸収源の変動リスクと国際合意形成の動的ゲームのモデルを組み込んだ。また,炭素吸収源の変動リスクのモデルでは,CO2の濃度上昇に伴って決定論的に吸収量が低減するケースと,確率的に吸収量が消滅するケースを考慮した。分析の結果,炭素吸収源の変動リスクの考慮が,温暖化影響の損害が大きく評価される場合には排出を抑制すること,特に,確率的に炭素吸収源が変動する場合では,将来の急変リスクに備えて,さらに排出を抑制しようとすることが示された。
  • 川島 元樹, 戸部 達也, 加賀 昭和, 近藤 明, 井上 義雄, 達脇 浩平
    2007 年 20 巻 2 号 p. 119-132
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     本研究では,高度に都市化された地域における化学物質のリスク評価の必要性から,琵琶湖・淀川流域圏におけるヒトの健康や生態系に対する詳細リスク評価の必要がある化学物質を同定するために,PRTR法第一種指定化学物質の中の214物質に対して,その排出量から簡易型マルチメディアモデルを用いて環境リスク評価を行なった。 領域内で化学物質の濃度が均一であるとしたOne Box型マルチメディアモデル(以下OBM)を用いた濃度計算の結果は,大気と水域において全ての計算値が,環境省が推定した全国の実測値予測最大濃度よりも低くなったが,両者の間には正の相関が見られた。環境省が初期リスク評価に用いた手順に準拠して,全国の実測値予測最大濃度のかわりにOBMにより計算された濃度を用いたリスク評価を行ったところ,慢性吸入毒性の評価ではアクロレインが,生態毒性の評価ではフタル酸ビス(2-エチルヘキシル),クロロタロニル,ベルメトリン,カルバリル,キシレン,ヒドラジンが詳細評価の必要性があるという結果が得られた。 小流域に分割したSeveral Box型マルチメディアモデル(以下SBM)を用いてOBMによる評価で,ある一定以上リスクが高いとされた100物質について再度計算した結果,大気濃度を用いたスクリーニングレベルの評価ではOBMでもリスクを過小評価する可能性は小さいが,水域濃度を用いた評価ではOBMではとくに淀川下流域でリスクを過小評価してしまうことが分かった。大きな湖沼を含む流域ではスクリーニングレベルであっても少なくとも河川と湖沼を分離したSBMを用いないと充分な精度が得られないと考えられた。
  • 久保田 領志, 藤原 純子, 阿草 哲郎, 國頭 恭, 田辺 信介
    2007 年 20 巻 2 号 p. 133-153
    発行日: 2007/03/30
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
feedback
Top