戦略的環境アセスメント(SEA)は,持続可能な社会づくりのための重要な手段になると期待されるが,その導入は容易ではない。だが,一部の自治体では新しい動きが見られる。SEA制度の我が国での制度化実現のための知見を得るには,現実の動向を把握し,制度化への条件を明らかにすることが必要である。そこで,都道府県と政令市を対象に,2002年に実施された先行調査に対応するパネル調査を2006年1月に行なった。その結果,SEA制度の制定自治体は4団体から8団体に増加した。一方,SEA制度等の導入の態度が後退した自治体も相当数あることが明らかになった。制度化した自治体の導入要因のひとつは,以前はメディアの影響が強かったが,今回は専門家の意見の影響が強いという変化が見られた。制度導入の態度が後退した自治体では,他の制度を運用するためという理由が多いが,その他の導入阻害要因としては人材や手法の不備をあげており,導入時の問題が指摘されていることは制度化が次第に具体的な課題になりつつあることを示唆している。また,SEAの核心である代替案の評価方法では,社会・経済面の比較考量は一般的には導入困難だが,SEA制度の導入自治体では,これを含む試みもあることが確認された。制度規定の実現度の分析結果では,調整困難項目は先行調査と同じだが,導入可能項目は先行調査のものに加え,新たに意見書提出と説明会開催が加わり,第三者審査の必要性への認識が高まるなど,実現性への前進が見られた。
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