環境科学会誌
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24 巻, 2 号
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一般論文
  • -地球温暖化に関する国際都市間連携への示唆-
    中村 秀規, 加藤 尊秋
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 24 巻 2 号 p. 89-102
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/11
    ジャーナル フリー
    一般市民を対象とした社会調査を横浜市と北九州市で行い,地球温暖化及び国際協力に関する態度から市民をグループ分けし,都市間環境国際協力に対する支持構造を明らかにした。調査では都市間環境協力の支持の程度,及び協力において重視する点,日本政府の京都議定書達成のための途上国からの排出枠利用に対する考え方,日常生活における温暖化対策行動の実施状況,ボランティア実績,海外寄付実績,途上国訪問経験などを尋ねるとともに,調査謝礼を原資とするカーボンオフセットの実施機会を提供してカーボンオフセットに関する市民の実際の行動を把握した。主成分分析及びクラスター分析の結果,排出枠利用肯定環境国際貢献派,排出枠利用否定環境国際貢献派,排出枠利用肯定環境国際貢献消極派,排出枠利用否定環境国際貢献消極派および環境国際貢献無関心派に分かれることが示された。環境国際貢献派の2グループはいずれも構成比率最大の排出枠否定環境国際貢献消極派よりも自治体の環境国際協力に対して支持的である。すなわち自治体環境国際協力に支持的であっても排出枠利用について否定的なグループが存在することが示された。排出枠否定環境国際貢献派は日常の温暖化対策行動の実施比率が高い。自治体が温暖化に関する国際協力を行いその代わりに排出枠を獲得し自治体の温室効果ガス排出削減目標の一部を達成するといった連携を行うことに対して,このグループは否定的な可能性がある。
  • 藤山 淳史, 松本 亨
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 24 巻 2 号 p. 103-113
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/11
    ジャーナル フリー
    第2次循環型社会推進基本計画では,地域の特性や循環資源の性質等に応じた最適な規模の循環を形成する「地域循環圏」の概念が提示されている。地域循環圏の形成は,廃棄物・循環資源の品目別に適した循環圏を形成することで最終的に国全体の資源生産性を向上させ環境負荷を削減することが目的であるが,実現までに取り組むべき課題は多い。本研究では,望ましい地域循環圏を構築するため,廃棄物等の循環圏を決める理論の構築を最終的な目的としつつ,本研究ではプラスチック製容器包装を対象として,循環圏の現状把握と循環圏を決定付けている要因の解析を行った。まずマクロ的視点から発生量と受入量を制約条件とし,現状と最適解との間に乖離があることを明らかにし,制約条件以外の要因が関与していることを確認した。次に制約条件以外の要因を解析するため,重力モデルを用いて解析を行った。その結果,輸送量には排出都道府県の人口が大きく影響を与えていることが明らかとなった。ミクロ的視点からの分析手法として,リサイクルの処理施設に着目し,費用を指標にして最適循環スケールを算出した。
  • 藤井 秀道, 八木 迪幸, 馬奈木 俊介, 金子 慎治
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 24 巻 2 号 p. 114-122
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/11
    ジャーナル フリー
    本分析では国内製造業を対象に,環境技術特許の取得数と財務パフォーマンスの因果関係性を企業レベルのデータを用いて明らかにする。環境技術は(1)汚染防止技術,(2)エネルギー技術,(3)製品開発に関する技術の三つに分類し,特許取得数には引用数で重み付けを行い使用した。分析対象期間は1965年から1997年の33年間であり,分析にはポアソン回帰分析を適用する。分析結果より経済パフォーマンスと汚染対策技術及び製品に関する環境技術特許取得数との間に正の関係性が観測されたことから,業績が好調で研究開発資金に余裕がある企業が環境技術特許の開発を積極的に行っていると言える。企業規模は環境技術開発と強い因果関係性を持ち,大規模企業の高い研究開発能力は汚染防止技術,エネルギー技術,製品開発技術のすべての分類において,特許取得数を増やす関係性が明らかとなった。企業の外部要因が与える影響として,環境規制の強化は汚染対策技術開発を促進させるが,エネルギー技術開発には影響を与えず,製品開発技術にはタイムラグを経て負の影響を与えることが明らかとなった。一方で,石油価格の上昇は汚染対策技術,エネルギー技術,製品開発のすべてにおいて研究開発を促す影響が確認された。
  • 立花 潤三, 迫田 章義, 門脇 亙, 山田 強, 玉井 博康, 稲永 忍, 鈴木 基之
    原稿種別: 一般論文
    2011 年 24 巻 2 号 p. 123-133
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/11
    ジャーナル フリー
    低炭素社会に向けた厳しい目標の達成には産業部門,民生部門等すべての部門における低炭素化の努力が不可欠であり,我が国の燃料消費の約15%を占めるとされる食料生産・輸送も当然にその対象に挙げられる。本研究ではまず,鳥取県において現在生産されている食料によって鳥取県民全員の栄養素を賄えるか(県内食料自給自足)の検討を行った。その結果マンガン,パントテン酸が少量不足する以外,他の19種類の栄養素に関しては県内産食料で賄え,一部栄養素に関しては供給過多であることが分かった。次に,県内食料自給自足の条件下において,移入だけを行わない場合は現状の生産・輸送エネルギーの約1割,生産量を一律1割削減した場合は約2割,現在県内生産量が2000[t/year]を超える食料品のみを生産することを条件とした場合には約3割,そして最もエネルギーが小さくなる食料生産を選択した場合には約5割のエネルギーを削減する事ができることが推算された。
研究資料
  • 佐藤 岳史, 轟木 朋浩, 中島 卓夫, 井澤 武史, 高柳 周二, 野口 喜美夫
    原稿種別: 研究資料
    2011 年 24 巻 2 号 p. 134-143
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/04/11
    ジャーナル フリー
    近年,PCBに汚染された土壌や汚泥の処理について,安全・確実かつ低コストに無害化処理が可能な技術が求められてきており,多くの技術の開発が進められている。土壌や汚泥などのPCB汚染物を間接的に加熱することによりPCBを含む有機物を揮発させて取り除く技術である間接熱脱着法と,揮発させたPCBを含む有機物を水蒸気の存在下で分解する水蒸気分解法を組み合わせた間接熱脱着+水蒸気分解法について,ラボスケールで各プロセスの基本性能を検討した結果を示すとともに,実処理までのスケールアップの内容と,各スケールの装置における間接熱脱着・水蒸気分解を比較し,スケールアップの影響や各プロセスの性能を検証した。間接熱脱着においては,加熱温度を200℃~600℃,加熱時間を15分間~2時間の範囲で変化させて実験をおこなった結果,加熱温度を上げることにより熱脱着でのPCB除去性能が上昇し,200℃と400℃の間に大きな変化があった。この変化はPCBの沸点を上回る温度に加熱することでPCBの気化・脱着が促進されるためであると考えられる。また,水蒸気分解においては,反応温度を800℃~1100℃,水蒸気量をH2O/Cを指標として5~14の範囲で変化させて実験を行った結果,温度の違いにより分解性能に差が見られたのに対し,水蒸気量の違いでは大きな差異が見られなかった。熱脱着ガス中のPCB濃度が10 mg/Nm3程度の場合,温度1100℃,H2O/C=14,滞留時間3秒弱の条件で分解率は99.99%以上となっていた。また,ラボスケールからコマーシャルスケールまでの処理実験結果を比較した結果,スケールアップによる処理性能への影響は確認されず,間接熱脱着・水蒸気分解の性能はともに,入口のPCB濃度レベルによらず,出口のPCB濃度は同レベルとなっていた。これらの知見から,所定の運転条件を確保することにより,汚染物中のPCB濃度が変動した場合でも処理物および水蒸気分解ガス中のPCB濃度は同レベルに保たれることがわかった。
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