環境科学会誌
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25 巻, 1 号
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一般論文
  • 四蔵 茂雄, 原田 秀樹
    原稿種別: 一般論文
    2012 年 25 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/04
    ジャーナル フリー
    製造業を牽引役とした工業化は,国民経済の発展に不可欠である。そのためには,生産要素として需要されるエネルギーへの理解が欠かせない。この観点から,本研究ではネパールの製造業を対象に,エネルギー消費構造ならびにエネルギー需要や生産に及ぼす価格の影響を調べた。また,資本のエネルギー代替効果を検討した。その結果,以下の点が明らかとなった。1)「26窯業」,「15食品業」,「28金属製品」,「17繊維織物業」が,主なエネルギー多消費産業である,2)石炭需要は,価格に対して弾力的でない。その他のエネルギー需要は,価格に対して極めて弾力的である,3)全エネルギーと石油製品の場合,価格変動は生産に影響する,4)資本のエネルギー代替効果は,「26窯業」と「28金属製品」,「29一般機械」等で高い。以上の結果を元に,エネルギー価格,特に石油製品の価格安定化と「26窯業」に対する省エネルギー投資の実施が,優先的政策課題であることを指摘した。
  • -二酸化炭素の間接排出と消費者の個人的便益を考慮した低炭素型生活行動の提案に向けて-
    栗島 英明, 井原 智彦, 工藤 祐揮
    原稿種別: 一般論文
    2012 年 25 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/04
    ジャーナル フリー
    本研究では,二酸化炭素(CO2)の間接排出と消費者の個人的便益を考慮した低炭素型生活行動を抽出し,その受容可能性と実践メカニズムを検討した。その際,回答者のデモグラフィック属性や,消費志向と行動実践との関連についても考慮した。
    まず,従来研究を参考に食生活にかかわる以下の3つの低炭素型の代替行動を抽出した。「買い物を店頭購入から宅配に変える(宅配)」,「中食の日を週に1日増やす(中食)」,「野菜や果物,魚介類などはできるだけ旬のものを食べる(旬のものを食べる)」である。
    次に3つの行動について,その行動意図を尋ねたところ,「旬のものを食べる」行動は約7~8割の消費者が受け入れる一方で,「中食」は半数,「宅配」は2割程度の消費者にしか受け入れられなかった。
    さらに,共分散構造分析を実施して3つの行動の実践メカニズムについてモデル化し,以下の知見を得た。第1に,低炭素型生活行動の目標意図形成には,地球温暖化のリスク認知の影響が最も強く,「健康志向」「旅行好き」の消費者ほどリスク認知が高かった。第2に,行動意図に最も影響を及ぼすのは,その行動に対する個人的な評価であり,受容性の向上のためには行動の実施容易性や行動によって得られる個人的な便益を消費者にアピールする必要がある。第3に,目標意図は直接的には行動意図に結びつかなかったが,他者や社会がその行動を高く評価するという認知を醸成し,それが行動に対する個人的な評価を経て,間接的に行動実践に影響していた。第4に,各行動実践には「流行志向」「健康志向」といった消費志向が影響していたことから,人々のライフスタイル志向に合ったきめ細やかな代替行動の提案が必要であることが示唆された。
  • 藤田 慎一, 速水 洋, 高橋 章, 光瀬 彦哲, 三浦 和彦, 出田 智義
    原稿種別: 一般論文
    2012 年 25 巻 1 号 p. 26-36
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/04
    ジャーナル フリー
    電力中央研究所では,ヨーロッパや北アメリカで提案された指針を参考に独自の観測ネットワークを構築し,1987年10月に全国規模の降水成分のモニタリングを開始した。全国規模のモニタリングは1996年9月に終了したが,東京都狛江市ではその後も測定方法をほとんど変えることなく,20年以上にわたってモニタリングを続けてきた。本論文ではこの観測データを用いて,非海塩起源の陰イオンの濃度の経年変化や季節変化や降水量との関係を調べ,東京都内における降水の質的変化の実態を明らかにするとともに,前駆物質の排出量の抑制効果との関係について考察を加えた。
    狛江における非海塩起源の硫酸イオンに対する硝酸イオンの当量濃度比は,1980年代から1990年代にかけて増加したが,2000年の三宅島の噴火に伴って急減し,2003年ころからおむね一定の値で推移してきた。非海塩起源の陰イオンの総量に占める硝酸,硫酸,塩化物の各イオンの割合は,1980年代のおわりには31:53:16であり,全量の半分以上を硫酸イオンが占めた。1990年代のおわりになると,各イオンの割合は48:44:8となり,硫酸イオンと硝酸イオンの順位が逆転するとともに,塩化物イオンの占める割合は半減した。2000年代のおわりになると,各イオンの割合は40:56:4となり,硝酸イオンと硫酸イオンの順位が再逆転するとともに,塩化物イオンの占める割合はさらに半減した。2000年の三宅島の噴火にともなって,降水中の硫酸イオンと塩化物イオンの濃度は特異的に上昇した。降水量が平年値より大きく増減した期間の成分濃度は,その影響を受けて減増した。塩化物イオンの濃度の経年的な減少には,1999年のダイオキシン類特別措置法の施行のまえから,首都圏の廃棄物焼却炉における塩化水素の排出量の抑制効果が,少しずつ現れていたのではないかと推定された。
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