本研究では,二酸化炭素(CO
2)の間接排出と消費者の個人的便益を考慮した低炭素型生活行動を抽出し,その受容可能性と実践メカニズムを検討した。その際,回答者のデモグラフィック属性や,消費志向と行動実践との関連についても考慮した。
まず,従来研究を参考に食生活にかかわる以下の3つの低炭素型の代替行動を抽出した。「買い物を店頭購入から宅配に変える(宅配)」,「中食の日を週に1日増やす(中食)」,「野菜や果物,魚介類などはできるだけ旬のものを食べる(旬のものを食べる)」である。
次に3つの行動について,その行動意図を尋ねたところ,「旬のものを食べる」行動は約7~8割の消費者が受け入れる一方で,「中食」は半数,「宅配」は2割程度の消費者にしか受け入れられなかった。
さらに,共分散構造分析を実施して3つの行動の実践メカニズムについてモデル化し,以下の知見を得た。第1に,低炭素型生活行動の目標意図形成には,地球温暖化のリスク認知の影響が最も強く,「健康志向」「旅行好き」の消費者ほどリスク認知が高かった。第2に,行動意図に最も影響を及ぼすのは,その行動に対する個人的な評価であり,受容性の向上のためには行動の実施容易性や行動によって得られる個人的な便益を消費者にアピールする必要がある。第3に,目標意図は直接的には行動意図に結びつかなかったが,他者や社会がその行動を高く評価するという認知を醸成し,それが行動に対する個人的な評価を経て,間接的に行動実践に影響していた。第4に,各行動実践には「流行志向」「健康志向」といった消費志向が影響していたことから,人々のライフスタイル志向に合ったきめ細やかな代替行動の提案が必要であることが示唆された。
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