木質バイオマス利活用事業の事業経済性のために必要な協力行動に対する影響要因を明らかにするために,木質バイオマス事業の先進地岡山県真庭市と取組を開始したばかりの福岡県朝倉市・周辺地区において,事業者(企業)・市民に対するアンケート調査を実施した。両地域において,事業者・市民の一般的な行動特性に大きな違いはなく,地域で取り組んでいるバイオマス利活用事業に関する認識に大きな違いがあった。真庭市の高い協力度は,地域特有性によるものではなく,バイオマス利活用事業を取り組むこと自体によってもたらされていると考えられ,朝倉地域は取組次第で協力行動を高めることができる可能性を持つ。
またバイオマス利活用事業がもたらす地域社会に対する効果の認識が企業・市民共に大きく影響する。さらに事業者の場合は経営上の顧慮,市民の場合は価格や使いやすさなどが重要となる。
地域の協力行動の促進にはバイオマス利活用事業の地域効果を明確にすることが重要である。直接的な需要にならない場合でも,市民を巻き込んだまちづくりビジョンと企業のイメージアップによって二次的な市民の需要行動を促進でき,それによって企業行動の促進が期待される。導入期,発展期で,企業・市民行動への影響要因が異なるために,発展プロセスに即したビジョンを持つことが望ましい。
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