地球温暖化に起因する気候変動の地域への影響が顕在化しているなか,地域住民の気候変動の影響実感を高めることで,地球温暖化への主体的な取組みを引き出す可能性がある。本研究では,長野県飯田市の住民アンケート調査により,気候変動の影響実感の状況,気候変動の影響実感と緩和・適応に関する意識・行動の規定関係,緩和優先タイプと適応優先タイプを分ける要因を分析した。この結果,次の結果を得た。
1)飯田市の住民は,ここの10年間程度の変化として,気温(夏の高温化等),冬の降雪の変化,夏の健康被害,局地的な豪雨・風水害等を強く実感している。高温化は観測データと一致する傾向である。
2)気候変動に関する認知・行動モデルを作成した結果,気候変動の影響実感は,直接的に適応行動の実施度を規定している。のみならず,気候変動の影響実感は,危機認知等を高めることにより,間接的には緩和行動の実施度を規定している。
3)女性あるいは60歳以上は気候変動の影響実感が高く,関連行動の実施度が高い傾向にある。男性あるいは30歳代は気候変動の影響実感も関連行動の実施度も低いが,気候変動の影響実感が関連行動の実施度を規定する効果が高い。
4)緩和行動と適応行動の必要性認知がどちらも高いタイプが65%と多いが,緩和行動を優先するタイプと適応行動を優先するタイプが各々1割強,存在する。緩和行動を優先するタイプは気候変動の地域への影響認知が低く,適応行動を優先するタイプは気候変動の原因認知が低い傾向にある。
上記の結果を踏まえ,気候変動の影響実感を高めることにより,緩和・適応に関する意識・行動を促す学習プログラムの方向性を考察した。
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