環境科学会誌
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27 巻, 3 号
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一般論文
  • -長野県飯田市住民の分析-
    白井 信雄, 馬場 健司, 田中 充
    2014 年 27 巻 3 号 p. 127-141
    発行日: 2014/05/30
    公開日: 2015/06/09
    ジャーナル フリー
    地球温暖化に起因する気候変動の地域への影響が顕在化しているなか,地域住民の気候変動の影響実感を高めることで,地球温暖化への主体的な取組みを引き出す可能性がある。本研究では,長野県飯田市の住民アンケート調査により,気候変動の影響実感の状況,気候変動の影響実感と緩和・適応に関する意識・行動の規定関係,緩和優先タイプと適応優先タイプを分ける要因を分析した。この結果,次の結果を得た。
    1)飯田市の住民は,ここの10年間程度の変化として,気温(夏の高温化等),冬の降雪の変化,夏の健康被害,局地的な豪雨・風水害等を強く実感している。高温化は観測データと一致する傾向である。
    2)気候変動に関する認知・行動モデルを作成した結果,気候変動の影響実感は,直接的に適応行動の実施度を規定している。のみならず,気候変動の影響実感は,危機認知等を高めることにより,間接的には緩和行動の実施度を規定している。
    3)女性あるいは60歳以上は気候変動の影響実感が高く,関連行動の実施度が高い傾向にある。男性あるいは30歳代は気候変動の影響実感も関連行動の実施度も低いが,気候変動の影響実感が関連行動の実施度を規定する効果が高い。
    4)緩和行動と適応行動の必要性認知がどちらも高いタイプが65%と多いが,緩和行動を優先するタイプと適応行動を優先するタイプが各々1割強,存在する。緩和行動を優先するタイプは気候変動の地域への影響認知が低く,適応行動を優先するタイプは気候変動の原因認知が低い傾向にある。
    上記の結果を踏まえ,気候変動の影響実感を高めることにより,緩和・適応に関する意識・行動を促す学習プログラムの方向性を考察した。
  • 田原 麻衣子, 杉本 直樹, 大槻 崇, 多田 敦子, 穐山 浩, 合田 幸広, 五十嵐 良明
    2014 年 27 巻 3 号 p. 142-150
    発行日: 2014/05/30
    公開日: 2015/06/09
    ジャーナル フリー
    物質量の絶対値は国際単位系(SI)にトレーサブルな測定によって得られると定義されている。しかし,環境分析において測定対象となる化合物は多種多様であり,計量計測学的に純度が証明された標準物質はほとんど流通していない。環境分析に応用されているクロマトグラフィーで正確な定量値を求めるためには,計量計測トレーサビリティが確保された純度値が決定された測定対象の標準物質が必須である。本研究では,環境中の多環芳香族炭化水素(PAH)類についてSIにトレーサブルな分析法を構築するため,定量核磁気共鳴法(定量NMR: quantitative NMR(qNMR))の一つであるAQARI(Accurate quantitative NMR with internal reference substance)法を応用した。AQARI法を応用することにより,科学的な根拠に基づいた,且つ,計量計測学的に信頼性を確保した純度値が求められる。定量用標準物質の代用品として使用される市販試薬製品18 種のPAH および水酸化PAH(OH-PAH)について,計量計測学的に信頼性の高い純度値を測定した。その結果,各市販試薬製品の純度は90.2±0.04~101.6±0.9%(arithmetic mean±RSD)と算出された。このことから,メーカー成績書の純度値より最大6.6%下回るものが認められ,メーカー成績書記載の純度値を質量%純度とし定量用標準物質として扱うことは適切ではない場合があることが示唆された。また,市販試薬製品の品質管理や使用時の純度が定量分析値の精度に大きく影響を及ぼすため,標準物質として使用する市販試薬製品の精確な純度の把握が重要であることが明らかとなった。
  • 後藤 正樹
    2014 年 27 巻 3 号 p. 151-160
    発行日: 2014/05/30
    公開日: 2015/06/09
    ジャーナル フリー
    建設廃棄物削減要因に関するデータ分析を行った。まず,建設廃棄物について課税方式別産業廃棄物税(以下,産廃税)導入による排出抑制,及び最終処分量削減の有無を分析した。次に,近年の建設不況による排出抑制が発生し,最終処分量削減が誘発されているのか否かを分析した。分析するにあたり,建設副産物実態調査の建設廃棄物の排出量及び最終処分量データを用い,47都道府県のパネルデータを整備した。排出抑制を分析するために排出量を目的変数に設定し,課税方式別産廃税導入ダミー変数,経済影響要因である建築物解体工事の解体床面積,建築物新築・増築工事の着工床面積,その他工作物の請負契約額をそれぞれ説明変数に設定し,パネルデータ分析を行った。次に,最終処分量削減を分析するために最終処分量を目的変数に設定し,課税方式別産廃税導入ダミー変数,排出量をそれぞれ説明変数に,各経済影響要因を操作変数に設定し,パネルの操作変数法を行った。その結果,全ての課税方式別産廃税導入で排出抑制効果はない。一方,課税方式別産廃税導入による最終処分量削減効果については,事業者申告納付方式,最終処分業者特別徴収方式では有意な削減効果が,焼却処理・最終処分業者特別徴収方式では有意ではないものの,少なからず削減効果があることが分かった。経済影響については,経済影響要因である3要因共に増減すれば,排出量が増減することに寄与し,排出量が増減すれば最終処分量が増減することに寄与することが分かった。全国的には3要因共に概ね減少傾向にあり,さらに排出量,最終処分量共に減少傾向にある。以上の関係より,近年の建設不況により排出抑制が起こり,最終処分量削減を誘発していることが明らかとなった。
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