長野県飯田市は,環境モデル都市に選定される等,環境先進地として知られている。本稿では,同市で実施したアンケート調査をもとに,住民の環境情報の入手度と社会関係資本への接続度,環境配慮行動の実施度の相互関係が,飯田市の市街と山間地とでどのように異なるかを分析した。
住民の環境配慮行動の実施度に係る規定構造モデルを設定すると,市街では,結合型及び橋渡し型の両社会関係資本への接続度が,環境情報の入手度を経由した環境配慮行動の実施度への経路を規定したが,山間地では,橋渡し型社会関係資本への接続度のみが環境情報の入手度を経由した環境配慮行動の実施度への経路を規定していた。また,環境配慮行動の実施度への経路を直接に規定していたのは,市街での結合型社会関係資本への接続度のみであった。市街と山間地との地理的・社会的な違いを考慮すると,山間地の住民は,橋渡し型社会関係資本に接続し,環境情報の入手度を高めることで,環境配慮行動の実施度を高めていると考えられる。一方,市街では,橋渡し型社会関係資本への接続の他に,飯田市行政による取り組みのため,結合型社会関係資本への接続が環境配慮行動の形成に果たす役割が大きくなっていると考えられる。
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