パラコートは,水道水質検査の対象農薬に選定されているが標準検査法が設定されていない。また,同様に検査対象とされているイミノクタジンおよびジクワットは,現在の標準検査法では農薬類の検査で原則達成すべき定量下限値(目標値の1/100の濃度)が得られない。
そこで本研究では,これら3農薬に共通する強塩基性に着目し,弱陽イオン交換基と逆相の二つの保持能を併せ持つミックスモード固相カラムを用いた新たな前処理法と,HILICモードの分離カラムを用いたLC/MS/MSによる一斉分析法を開発した。さらに,開発した分析法の妥当性を厚生労働省のガイドラインにしたがって評価した。
標準液を用いた検討により最適化したLC/MS/MS分析条件では,3農薬全てについて,良好なピーク分離とピーク形状を得ることができた。また,検量線の直線性および再現性は良好であり,前処理において20倍以上濃縮すれば,目標値の1/100以下の濃度までLC/MS/MSによる分析が可能であることが示された。
脱塩素処理した水道水に,0.5μg/L(各農薬の目標値の1/10以下の濃度)および0.05μg/L(各農薬の目標値の1/100以下の濃度)となるように混合標準液を添加した試料を用いて前処理方法の検討を行った。確立した最適条件では,各試験の回収率の平均値および相対標準偏差(RSD)がそれぞれ74~91%,RSDが3~7%の範囲にあり,いずれの添加濃度の試験結果も厚生労働省が定めた妥当性評価ガイドラインの真度および併行精度の目標を満たした。
以上のことから,本研究で開発した分析法は,イミノクタジン,ジクワットおよびパラコートについて,いずれも目標値の1/100以下の濃度まで高い精度で分析可能であることが示された。
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