環境科学会誌
Online ISSN : 1884-5029
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28 巻, 3 号
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一般論文
  • 村上 道夫, 小野 恭子, 中谷 隼
    2015 年 28 巻 3 号 p. 193-210
    発行日: 2015/05/29
    公開日: 2016/06/11
    ジャーナル フリー
    東京電力福島第一原子力発電所事故により,10万人を超過する人々に避難指示が出された。本研究では,市民の一般的態度として,放射性物質のリスク認知や幸福重要尺度が故郷への帰還意志にどのような影響を及ぼすのかを調査した。追加発がんリスクと追加実効線量という2つのリスク情報を提示することで,リスク情報による帰還意志の違いに影響を及ぼす因子を特定した。放射性物質の恐ろしさ因子に関するリスク認知や,放射性物質に関する知識や政府または科学への信頼感の欠如因子が,故郷への帰還意志に影響を及ぼしていた。一方,放射性物質の未知因子に関するリスク認知や家族やコミュニティとの生活に関する幸福重要尺度が帰還意志に及ぼす影響は小さかった。被験者に提示されたリスクレベルの違いよりも,放射性物質の恐ろしさ因子に関する個々人のリスク認知の違いの方が,帰還意志に大きな影響をもたらした。放射性物質に対して直感的な恐ろしさを感じたり,放射性物質に対する知識や政府・科学に対する信頼感を持たない人の一部が,リスク情報として追加発がんリスクよりも追加実効線量を提示された場合に,リスクを大きく感じることが示唆された。
  • 後藤 正樹
    2015 年 28 巻 3 号 p. 211-229
    発行日: 2015/05/29
    公開日: 2016/06/11
    ジャーナル フリー
    建設業の産業廃棄物(以下,産廃)について,課税方式別産業廃棄物税(以下,産廃税)導入と国の建設業界の産廃品目の最終処分量削減に関する施策(以下,建設リサイクル施策)導入による最終処分量削減の複合効果分析を行った。分析にあたり,建設副産物実態調査の産廃品目別排出量及び最終処分量データを用い,パネルデータ分析を行った。まず,産廃品目で産廃税が単独で有意な削減効果が起こるか否かを分析した。次に,産廃税の削減効果が確認された産廃品目について,建設リサイクル施策が単独で有意な削減効果が起こるか否かを分析した。最後に,産廃税と建設リサイクル施策共に単独で有意な削減効果が得られた産廃品目について,産廃税と建設リサイクル施策導入による最終処分量削減の効果分析を行った。その結果,建設発生木材では最終処分業者特別徴収方式(以下,方式B),焼却処分・最終処分業者特別徴収方式(以下,方式C)で有意な削減効果が確認された。一方,建設汚泥,建設混合廃棄物,その他の3産廃品目では,産廃税導入による有意な削減効果は確認することができなかった。次に,建設発生木材について建設リサイクル施策導入による削減効果を確認した結果,有意な削減効果が得られた。そこで,建設発生木材の最終処分量を目的変数に,排出量,課税方式別産廃税導入ダミー変数,建設リサイクル施策導入ダミー変数を説明変数に設定し,パネルデータ分析を行った。その結果,方式B又は方式Cの各産廃税と建設リサイクル施策の複合効果により,方式B又は方式Cの産廃税未導入都道府県より多くの削減効果が確認された。また,近年の建設発生木材の排出量の減少が最終処分量の減少に影響していることも確認された。
研究資料
  • 森 保文, 前田 恭伸, 淺野 敏久
    2015 年 28 巻 3 号 p. 230-240
    発行日: 2015/05/29
    公開日: 2016/06/11
    ジャーナル フリー
    環境ボランティアの社会的重要性について注目が集まっており,ボランティア募集の様々な試みがなされている。その一例として,清掃活動とスポーツを組み合わせた環境活動を取り上げ,その参加者と普通の清掃活動の参加者とを比較した。その結果,この環境活動の参加者の60%は普通の清掃活動には参加していない人であったこと,また環境に関する活動について意向はあるものの実際には活動していなかった人が参加した傾向が明らかとなった。スポーツと環境活動が組み合わさることで,スポーツ競技への興味が参加理由の一つとなり, またチーム競技であることは直接的な参加依頼を誘発したことが示された。環境活動に別の要素を加えることや直接的な依頼を誘導するような工夫は,ボランティア募集において重要な考慮すべき点と結論された。
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