環境科学会誌
Online ISSN : 1884-5029
Print ISSN : 0915-0048
ISSN-L : 0915-0048
30 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
一般論文
  • 古川 浩司, 川口 寿之, 工藤 清惣, 中澤 智子, 山田 悠貴, 船坂 鐐三, 奥村 明雄
    2017 年 30 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2017/01/31
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー

    内部標準物質を用いた液体クロマトグラフ/タンデム型質量分析計(LC/MS/MS)による水道水中の陰イオン界面活性剤の直接注入法の検討と水道水質検査としての妥当性を評価した。検討の結果,LC/MS/MS測定による直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(以下,「LAS」と略)測定強度のイオンサプレッションが,水道水中に存在するカルシウムイオンに起因して発生することを確認した。このため,LAS-C10~C12の内部標準物質にLAS(C13)-C12を,LAS-C13~C14の内部標準物質にLAS-C8を用いて,各LASのイオンサプレッションによる測定強度の低下を補正した。また,総硬度が異なる8種類の水道水及び原水に対してLAS-C10~C14(各LAS濃度4.0 µg/L)の添加回収試験を行った。その結果,水道水におけるLAS-C10~C14の回収率は72.2~122%であり,良好な回収率を得ることができた。一方,水道原水中のLAS-C14の回収率は59.0~68.1%と低い結果であった。次に,水道水(LAS濃度4.0 µg/L:5日間,各5併行)に対する妥当性評価の結果,併行精度3.54%,室内精度7.47%,回収率95.2%の妥当性評価が得られ,厚生労働省が通知する「水道水質検査方法の妥当性評価ガイドライン」の目標値を満たした。これらの結果は,本分析法が水道水中の陰イオン界面活性剤の定量分析に適用可能であることを示している。

  • Lee Chang Yuan, 宮下 公一, 蒲原 弘継, 熱田 洋一, 大門 裕之
    2017 年 30 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2017/01/31
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー

    嫌気性消化処理から得られたバイオガス中にCO2は一般的に40%程度含まれているが,その利活用についてはあまり検討されていない。本研究では陸上での海藻養殖にこのバイオガス由来のCO2を利用し,海藻の生産性を高めることを目的とした。まずは先行実験としてベンチスケール(500 mL培養槽)においてスジアオノリに対してCO2施用濃度などの初期培養条件やCO2施用効果を確認した。このベンチスケールにより得られた培養条件をもとに,パイロットスケール(100 L培養槽,1000 L培養槽)において海藻養殖を行った。その結果,バイオガス中のCO2施用により,海藻の生産量は約2倍増加したことを確認した。さらに,CO2施用効果を検証した上で,事業化における採算性について考察したところ,陸上養殖を行う際に海水の循環使用がコスト削減に大きく影響することを明らかにした。

  • 白井 信雄, 壽福 眞美
    2017 年 30 巻 1 号 p. 20-33
    発行日: 2017/01/31
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー

    大規模な再生可能エネルギー設備の地域への立地が,地域主体との紛争や地域主体と設備間の乖離を招いている。一方,小売電力の完全自由化により再生可能エネルギーの新たな可能性が拓けてきている。こうしたなか,地域主体は,再生可能エネルギーの導入による目標を検討することが必要となっている。本研究では,再生可能エネルギーの導入による地域社会の構造的再生の目標のチェック項目を作成した。長野県飯田市と滋賀県湖南市の事例調査により,チェック項目を作成し,チェック項目の有効性の確認を行った。チェックリスト作成に用いた理論的枠組は,(1)エネルギーの自治,(2)対話とネットワーク,(3)地域経済の自立,(4)公正と安全,環境共生,(5)地域主体の自立共生,の5つの要素で構成される。作成したチェック項目の特徴は3点である。(1)本チェック項目は,地域社会の構造的再生を重視して作成したものである。(2)本チェック項目は,定量的に把握できない側面も含めて,目指すべき地域社会の状況を網羅的にカバーする。(3)本チェック項目は地域のチェック&アクションのためのみならず,取り組みの第一歩への指針としても有効である。今後の研究課題として,さらに多くの地域の事例調査を行い,チェック項目を改良していくことがあげられる。

  • 徳村 雅弘, 山取 由樹, 畑山 瑠莉香, 根岸 洋一, 益永 茂樹
    2017 年 30 巻 1 号 p. 34-43
    発行日: 2017/01/31
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー

    車室内におけるダストを介した汚染物質の曝露は,不揮発性および準揮発性の汚染物質にとって重要な曝露経路である。ダストに含まれる汚染物質には有機物質だけでなく無機物質も含まれるため,それらの測定には有機・無機物質ごとに煩雑な前処理に加え,別々の分析機器が必要とされる。ダストの汚染実態の把握のためには,より簡便な測定法の開発が望まれている。また,より効果的な汚染物質対策の提案のため,汚染物質の起源解析法の開発が求められている。本研究では,単一の前処理および分析機器を用いた,車室内ダスト中の有機および無機汚染物質の同時スクリーニングおよび起源解析法を開発するため,電界放出型電子プローブマイクロアナライザ(FE-EPMA)を用いて車室内ダストに含まれる汚染物質の指標となる元素の元素分析を行った。本研究では準揮発性有機化合物である臭素およびリン系難燃剤を有機汚染物質の例として選定した。また,ダストサンプルをFE-EPMAにて分析するための最適な試料台への固定方法を検討した。固定にかかる時間,測定結果の再現性,電子線照射による安定性などの観点から,アドフィックス樹脂がダストの接着剤として最も適していた。二次電子像などからダストの形状に関する情報(繊維状,粒子状など)が得られ,カラーマッピングイメージよりダストに含まれる元素やその濃度分布に関する情報が得られた。臭素およびリン系難燃剤の指標元素として臭素(Br)とリン(P),重金属類の指標としてアンチモン(Sb),鉛(Pb),クロム(Cr)を選定し,FE-EPMAにより元素分析を行うことで,難燃剤と重金属類の含有濃度に関する情報が得られた。また,スクリーニングに用いた試料を用いてダストを構成する元素の定性分析を行うことで,難燃剤の汚染源に関する情報が得られた。以上より,本方法が車室内ダスト中の有機および無機汚染物質の同時スクリーニングおよび起源解析法として有用であることが示された。

feedback
Top