近年,自然災害を起因とした産業事故(Natural hazard triggered technological accidents: Natech)が世界各国で発生し,大きな被害をもたらしている。このようなNatechに対し,日本では石油コンビナート等の大規模な事業所を対象とした全国規模のリスク評価が実施されているが,Pollutant Release and Transfer Register(PRTR)制度等の対象事業所の大部分は網羅的なリスク評価は行われていない。また,National Risk Assessment(NRA)の観点から,全国規模でNatechリスクの抽出を行った研究は見られず,日本で増加傾向にある土砂災害に着目した研究はほとんど存在しない。そこで本研究では,全国の土砂災害に被災する可能性のあるPRTR対象事業所を取り上げ,分類によって得られた各事業所のハザードと周辺地域の脆弱性の特徴から,Natechリスクを定性的に抽出することを目的とした。分類では事業所が有するハザード指標として,年間取扱量,GHS分類区分,周辺地域の脆弱性指標として,周辺人口,経済,周辺施設,自然環境を設定した。分類手法には,分類結果を可視化できるSelf-organizing map(SOM)にWard法を組み合わせた手法を適用した。
土砂災害に被災する可能性のあるPRTR対象事業所を特定した結果,本研究で対象とする事業所は1,306件となった。ハザードによる事業所の分類の結果,各事業所が扱う化学物質の数や種類が主な特徴となったクラスターが形成された。また,周辺地域の脆弱性による分類の結果,周辺人口が大きいクラスターや河川,農地,海洋,湖沼などの自然環境が周辺に存在するクラスターが形成された。これらの分類結果を統合させた結果,ヒト健康リスク,生態系リスク,農地の汚染等のリスクが特に懸念される事業所はそれぞれ321, 523, 462件となった。このように各事業所の特徴から,Natechリスクを定性的に抽出することによって,土砂災害を起因としたNatech発生の恐れがある事業所の位置を懸念されるリスクごとに地図上に表示することが可能となり,優先的に調査すべき事業所の特定に繋がると考えられる。
昨今,一人一日あたりごみ排出量は,日本全体では減少傾向が見受けられるが,その傾向が見受けられない自治体もある。そうした自治体で,ごみ減量の切り札として期待されているのがごみ有料化である。一方,ごみ有料化は,住民の理解をどう得るかが一つの課題であり,ごみ有料化の合意形成に関する既往研究は,ごみ有料化の動きが出始めた2000年あたりを中心に見られる。しかし,多くの自治体でごみ有料化が導入されている昨今,近隣自治体でごみ有料化が既になされている場合もあり,そのことの影響については十分な検討がなされてきたとはいいがたい。
本稿では,このような昨今の状況を踏まえ,近隣自治体のごみ有料化に関する情報が,ごみ有料化の合意形成に与える影響について実証的に検討した。そこでは,ごみ減量に向けてごみ有料化の検討を進める自治体として福島県会津美里町を取り上げ,町民にごみに関するモニター調査を行い,そこでの回答を分析した。その結果,近隣自治体のごみ有料化に関する情報は,ごみ有料化の合意形成を促すことが伺われた。