環境科学会誌
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36 巻, 6 号
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一般論文
  • 松嶋 一成, 三木 朋乃
    2023 年 36 巻 6 号 p. 185-193
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,製造企業のプロジェクトマネジャーを対象とした質問票調査から得られた161件の集計データを分析することによって,法規制がプロジェクトの成否に与える影響を実証的に明らかにした。

    分析の結果,第一に,法規制の影響のあるプロジェクトほど,プロジェクトの規模がより拡大されやすくなることが示された。また,その規制が特に環境・エネルギー技術の開発に関するものである場合,その傾向が高まる可能性も示された。法規制の中でも環境規制は社会的性格が強く,社会的正当性が高まることでプロジェクトの規模が拡大されると考えられる。

    第二に,法規制の影響のあるプロジェクトほど,社内での情報交換が低減し,社外での情報交換が増大する傾向が示された。そして,社内での情報交換を多く行うほど,事業化の可能性が高まる傾向が示されたが,社外での情報交換による事業化への影響は特に見られなかった。つまり,法規制の影響を受けたプロジェクトの場合,マネジメントが外向きになり,そのことによって事業化に向けた社内資源の動員が進まなくなる可能性がある。

    一方で,分析結果は,プロジェクトの規模が拡大するほど社内及び社外での情報交換が増大する傾向も示していた。つまり,法規制の影響そのものは社内での情報交換を低減させるが,法規制はプロジェクトの規模を拡大させる影響ももつため,法規制の影響があってもプロジェクトの規模が拡大する限りは社内での情報交換が促進されることとなる。したがって,法規制の影響を受けて相対的に外部とのやり取りが増大するプロジェクトであっても,事業化に向けて社内資源と切り離さずに支援する必要性を分析結果は示唆してる。

  • 川西 正人, 加藤 真, 藤倉 良, ウォンサパイ ウォンコット, シャープ アリス, 藤倉 まなみ
    2023 年 36 巻 6 号 p. 194-210
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー

    国際都市間協力が,個々の状況に応じた気候変動適応策の実現にいかに貢献し得るかについて,バンコク都庁(BMA)が横浜市と進める都市間協力を事例として考察した。まず,BMAの関係職員向けに,気候変動対策に関するキャパシティの状況と国内及び国際都市間協力の効果について,質問票による調査を行ったところ,適応策と緩和策に関わる職員からの回答に異なる傾向が認められた。その原因を探るため,適応に関わる職員とのフォーカス・グループ・ディスカッションを実施した。その結果,緩和策では国際都市間協力の高い効果が確認されたものの,適応策では,個々の状況に即した対応が求められることなどの課題が挙げられ,国内都市間協力に比して状況の異なる都市との国際協力の難しさが明らかになった。都市間協力においては,それぞれの固有の状況を互いによく理解する一方で,共通のニーズと課題を特定し,適応協力の対象を明確に特定することが重要である。さらに,国際都市間協力で適応策を進めるためには,中央政府の関与が重要である。そして,都市間の対話を促進し,一方の知見や経験を他方の状況に即して伝え,個々の状況において科学が提供する知見がどのような意味をもつかを伝える仲介機能を果たしうる現地の大学や専門家の活用が意味を持ちうる。

短報
  • 宋 科翰, 新城 竜一, 諸見里 結美
    2023 年 36 巻 6 号 p. 211-217
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー

    ホウ素同位体は,河川水や地下水中の汚染物質の定量的評価など,環境問題の解決に有効なトレーサーである。同位体分析の正確度を評価するためには,マトリックスが類似し値付けされた標準物質(RM)が必要である。しかし,ホウ素濃度の保証値はあるものの,同位体組成が既知の標準物質はまだ少ない。今回,河川水(NMIJ CRM 7202-c, JSAC 0301-4a)および水道水(NMIJ CRM 7203-a)の日本産認証標準物質(CRM)のホウ素同位体組成を初めて報告する。あわせて,0.1 mLの陽イオン交換樹脂カラムのみを用いた,環境水からのホウ素の簡便な分離法も開発した。この方法は煩雑な分離を簡略化したもので,ホウ素の回収率は97%以上,マトリックス元素の分離効率は98%以上である。δ11B値は7202-cが−8.81±0.19‰,0301-4aが14.33±0.49‰,7203-aが17.86±0.28‰である。また,応用例として市販されている4種類のペットボトル水(富士山,六甲,阿蘇山,久米島)を分析した。報告した分離方法は,簡便かつ短時間での処理であり,ブランクレベルも低く,ホウ素の測定効率を向上させることができる。

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