環境科学会誌
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4 巻, 1 号
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  • 内藤 正明
    1991 年 4 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 1991/01/31
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
  • 木村 眞人, 安藤 豊, 原口 紘〓
    1991 年 4 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 1991/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     稲作期間土壌有機物の分解にともなって,わが国の水田土壌より発生する二酸化炭素とメタンの総量およびこれらガスの単位面積あたり発生量を,各県に分布する土壌統面積,代表地点土壌の作土深と化学性さらに稲作期間の気温より推定した。 すなわち,窒素の無機化量を土壌の化学性と稲作期間の気温から求め,10.8倍することにより炭素全無機化量を推定した。次いで,二酸化炭素とメタンへの分配割合を土壌の酸化容量(遊離鉄量)と還元容量(窒素無機化量)の比から求めた。 わが国の水田から発生する二酸化炭素,メタンの総量はそれぞれ炭素当たり3.8×106,9.6×104トンと見積もられ,灰色低地土壌統群から全発生量の二酸化炭素37%,メタン41%,次いでグライ土壌統群から二酸化炭素26%,メタン20%が発生していると推定された。 1ha当たり発生量では,二酸化炭素で黒ボク土壌統群(2.4トン/ha)が,メタンで黒ボクグライ土壌統群(73kg/ha)がそれぞれ最大値を示した。 メタン発生量は南に位置する地方ほど増加する傾向を示し,二酸化炭素に比べて稲作期間の気温および土壌群の種類の影響が顕著であった。 本実験で得られたメタン発生量は世界各地での観測結果の約1/10に相当する低い値であった。従って,本研究では考慮しなかった新鮮植物遺体や水稲根からの有機物の分泌がメタン生成に重要な役割を担っているものと推察された。
  • 佐野 政文, 横内 陽子, 中杉 修身, 河村 武
    1991 年 4 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 1991/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     汚染レベルの異なる3地域において,土壌中および大気中の揮発性有機塩素化合物(VCH)濃度の測定を行なった。土壌の場合,その試料の加熱気化成分をキャピラリーGC/MS(SIM)により分析する手法を用いて,11種類の塩素化炭化水素(ジクロロメタン,1,1-ジクロロエチレン,tyans-1,2-ジクロロエチレン,cis-1,2-ジクロロエチレン,1,1-ジクロロエタン,1,2-ジクロロエタン,クロロホルム,四塩化炭素,1,1,1-トリクロロエタン,トリクロロエチレン,エトラクロロエチレン)の分析を行なった。その結果,直接的な汚染源のない地域においてもテトラクロロエチレン等のVCHが土壌中に最高2ng/g・湿土壌の濃度レベルで存在することが明らかとなった。また,それらの鉛直濃度分布は,表層に近いほど高濃度となる傾向を示して,その起源が大気からの寄与(雨水を含む)であることが示唆された。一方,地下水汚染地域の土壌中では,トリクロロエチレン等のVCH濃度は表層より深い所で高濃度(最高114ng/g・湿土壌)となり,汚染された地下水からの直接的影響が顕著であった。
  • 松井 一郎, 笹野 泰弘
    1991 年 4 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 1991/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     都市域の夜間における窒素酸化物高濃度汚染現象の発現は都市境界層高度,平均風速と密接に関係していることを,ミー散乱レーザーレーダーを用いた低層大気構造の観測データを基に論じた。ミー散乱レーザーレーダーはエアロゾルの高度分布を時間的に連続して捉えることができる。エアロゾルの高度分布は大気の成層構造を反映することから,都市境界層の検出に用いることができる。都市境界層高度と平均風速の積の逆数で定義される停滞指数(Stagnant Factor)を用いて夜間平均の窒素酸化物(NOx)濃度,二酸化窒素(NO2)濃度を表現することができる。
  • ―降水の陽イオン組成を考慮した中和能の計算法―
    佐藤 一男, 大岸 弘
    1991 年 4 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 1991/01/31
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー

    前報で提案した土壌の酸中和能(ANC)の簡易測定法は,土壌中の交換性塩基と炭酸塩に基づく中和能(ANC)cおよび降水中のSO42-の土壌吸着に基づく中和能(ANC)aを個別にバッチ法で求め,両者からANCを計算する方法である。ANCの計算式には(ANC)aの寄与度が降水の陰イオン組成(SO42-の当量分率α)に依存することが考慮されている。このさい降水の陽イオンについてはH+のみの存在を仮定し,H+の当量分率ξ=1とした。しかし実際の降水にはNH4+やCa2+が含まれるのでξ は1より小さい。このことはα<ξ<1の場合にANCを過小評価することを意味する。本研究では,前報の考え方に基づいてξ<1の条件で使用できるANCの計算式を導出し,カラム実験によってその妥当性を検討した。得られたANCの計算式を以下に示す。
    α/ξ<(ANC)a/(ANC)c+(ANC)aのとき ANC=(ANC)c/1-α/ξ(1)
    上記以外のときANC=(ANC)c+(ANC)a(2)
    前報との違いは(1)式にξ<1の効果が加味された点である。(2)式に変更はない。ξ>α,ξ=α,ξ<αとなるようにイオン組成を調整した人工酸性雨(pH3)を用いて黒ボク土を対象にカラム実験を行ない,上式で算出されたANCがカラム法で得られたANCによく一致することを確認した。
  • 高橋 啓二, 梨本 真, 植田 洋匡
    1991 年 4 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 1991/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     関西・瀬戸内地方におけるスギの衰退分布と大気二次汚染物質,暖候期の降雨量との関係について検討した。二次汚染物質の指標にはオキシダント指数(OxI),暖候期の降雨量には5~9月における降雨量の合計(ATP)を用いた。スギの衰退地域は大気汚染物質の長距離輸送に伴う内陸型汚染地域や海陸風の循環に伴う沿岸型汚染地域にほぼ一致し,OxIが高く(OxI≥100),ATPが少ない(ATP<800mm)地域でスギの衰退が進行して,激害・中害地が多く分布することが明らかとなった。しかし,ATPが多くなると被害は軽減される。これらのことから,スギの衰退は生育期間中のオキシダント指数が高く,したがって二次汚染物質が多く,降雨量が少ない地域で発生しやすいことが明らかとなった。これらの現象は,関東・甲信地方で認められたスギの衰退分布と大気二次汚染物質,暖候期の降雨量との関係と同一であった。
  • 佐藤 泰哲, 沖野外 輝夫
    1991 年 4 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 1991/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     過栄養の諏訪湖で,1977年から1987年にかけて,尿素の現存量を測定した。湖心の水柱における尿素の現存量は,この期間に年平均で60%減少した。 諏訪湖の集水域では1979年10月に,広域下水処理場の一部供用が開始された。その処理排水は湖を迂回して,唯一の流出河川である天竜川に放流されている。処理場は現在,家庭雑排水,工業一次処理排水の一部と,湖岸の4つの都市のし尿一次処理排水の全てを処理している。これらを供給源とした栄養塩類は,以前は26の河川を通じ諏訪湖に流入していた。年平均で60%の尿素の現存量の減少には,集水域の農地における尿素肥料の施肥量の減少による寄与も含まれていると推定される。広域下水処理場の一部供用開始による,湖水中の尿素現存量の減少は,約40%と見積られた。この尿素現存量の減少は,湖外の供給源が諏訪湖の尿素供給源として主要なものであった事を示唆している。
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