環境科学会誌
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6 巻, 3 号
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  • 萩原 清子, 萩原 良巳
    1993 年 6 巻 3 号 p. 201-213
    発行日: 1993/07/31
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     水質のような環境の質の市場は存在せず,消費者の選好を把握するためのさまざまな方法が考えられている。本研究では,水利用の中で都市用水としての利用の際の水質評価とレクリェーション地での水質評価問題を扱った。前者は水利用の代理市場データを用いた手法,すなわち,生産費用節約アプローチおよび回避費用アプローチによる水質評価を示した。その結果,琵琶湖を水源とする都市用水利用においては,供給側での水質の4ppmの改善は年間40.8億円の便益をもたらし,需要側では少なくとも年間200億円の便益がもたらされることが求められた。一方,レクリェーション地での水質評価に関する従来の研究をわが国への適用という観点から簡単にサーベイした。旅行費用アプローチの拡張モデルである一般化旅行費用モデルおよび離散的モデルは,完全代替性という仮定と無関係な代替案からの独立性という仮定に各々無理がある。また,上記2つとは異なり,実際の市場価格を用いないで,環境の質の仮想的市場での消費者の反応から質の評価を行なう価値意識法は条件設定などによってバイアスの生じることが指摘されている。これらの手法は一長一短であるが,本研究ではわが国において非利用価値が存在するか否かを把握するために,予備的調査を行なった結果を示した。この調査からは,利用価値,オプション価値,遺贈価値の間に有意な差のあることが確認された。
  • 島津 彰, 那須 正夫, 劉 代振, 近藤 雅臣
    1993 年 6 巻 3 号 p. 215-220
    発行日: 1993/07/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     水道水をパーべ一パレーション(PV)膜法より長期間連続的に処理し,膜の汚染対策およびトリハロメタン(THM)の除去性能について検討した。膜モジュールにはシリコーン複合膜で構成されたスパイラルエレメントを用いた。その結果,水道水による膜の汚染物質は鉄やアルミニウム化合物が主体であり,膜の洗浄にはシュウ酸を用いた化学的洗浄法やせん断効果を利用した物理的洗浄法が有効であることがわかった。膜の定期的な洗浄により,膜モジュール通水圧損を制御しつつ水道水中のTHMを長期間安定して除去できた。
  • 美馬 信, 阪本 典子, 谷村 孝
    1993 年 6 巻 3 号 p. 221-227
    発行日: 1993/07/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     アフリカツメガエルの胞胚期の胚を2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD)の0.1pptから100ppb液に72時間曝露し,その後受精後50日までTCDDを含まない脱塩素水中で成育させた。TCDDの影響は10PPb以下の濃度では見られなかったが,100PPbに曝露された13匹中の6匹に,受精後10-18日に頭部,胸部および腹部に浮腫が発症した。それらの内の4匹は2,3日以内に死亡し,残りの2匹は浮腫から回復した。TCDD 100 ppb群の浮腫および死亡発現率は対照群より有意に高かった。
  • 田中 正宜, 宮崎 竹二, 神浦 俊一, 鵜野 伊津志, 若松 伸司
    1993 年 6 巻 3 号 p. 229-238
    発行日: 1993/07/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     1987-1988年にかけて大阪市内の3ケ所の大気モニタリングステーションで夏期(7月),冬期(12月)の早朝(6:30-8:30)に半時間サンプリングした96検体の15成分を分析して,各々の場所の夏期,冬期の平均値に対してリセプターモデルを適用し発生源寄与の算出を行った。発生源として3種の自動車排出ガス,溶剤,ガソリン蒸発成分および石油精製工業を選んだ。その結果,6発生源では自動車排出ガス(ガソリン乗用車+軽ガソリン車+LPG車)の寄与は,3ケ所の平均値として夏期は39.12%,冬期は45 .64%と最も高く,次いで溶剤(夏期;19.86%,冬期20.40%),石油精製工業(夏期;13 .53%,冬期;13.61%),ガソリン蒸発成分(夏期;5.02%,冬期;4.55%)の順であった。未知の発生源寄与は夏期で22.70%,冬期で15.80%と夏期が高い値を示すが,これらの値は既にいくつか報告されている日本やアメリカのそれらより低い値であった。 これらの結果から次のようなことが指摘される。 1.従来,日本では自動車排出ガスの発生源プロフィルが非常に複雑で(アメリカ等ではガソリン車を基にした単一発生源プロフィルが用いられてきた),それ故やむなく,リセプターモデルに道路沿道データ(環境データ)を使用してきたが,3種の自動車排出ガスの発生源プロフィルの使用が大都市の環境炭化水素へのリセプターモデルの適用を極めてスムーズに可能にすること。 2.しかも,これら3種の自動車排出ガスの環境炭化水素への発生源寄与は早朝時間帯では非常に大きく,これらの発生源プロフィルが必須であること。
  • 徐 正仁, 福井 学, 山岸 昂夫, 漆川 芳國, 森 忠洋
    1993 年 6 巻 3 号 p. 239-249
    発行日: 1993/07/31
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
     都市下水汚泥嫌気性消化プロセスにおいてプロピオン酸をめぐる水素・酢酸生成菌,硫酸還元菌およびメタン生成菌の相互作用を明らかにする目的で,異なる硫酸塩負荷(0~0 .475mmolSO42- ・1-1・day-1)のグルコースで馴養した嫌気性汚泥を用い,プロピオン酸の酸化におよぼす硫酸塩負荷の影響について検討した。段階的硫酸塩高負荷馴養過程で硫酸還元活性は増大したが,メタン生成活性は一定であった。硫酸塩負荷0.475mmolSO42- ・1-1・day-1ではプロピオン酸の酸化速度は,硫酸塩無負荷馴養汚泥に比べ,36%程度高かった。一方,クロロホルムを添加すると,硫酸塩無負荷馴養汚泥ではプロピオン酸の分解は完全に阻害された。しかし,硫酸塩負荷0.118mmolSO42- ・1-1・day-1では,プロピオン酸の酸化速度は67%程度減少した。また,モリブデン酸を添加すると,硫酸塩負荷0.475mmolSO42- ・1-1・day-1でプロピオン酸の酸化速度は58%程度減少したが,酢酸の蓄積は認められなかった。これらの結果は,硫酸塩負荷を増加させると,メタン生成を阻害することなく,プロピオン酸不完全酸化型硫酸還元菌によりプロピオン酸の分解は促進され,またこの硫酸還元菌はプロピオン酸をめぐって水素・酢酸生成菌と競合することを示唆している。
  • 金沢 晋二郎, 森 敬太, 広木 幹也, 松本 聰
    1993 年 6 巻 3 号 p. 251-258
    発行日: 1993/07/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     重金属汚染が土壌中のセルロースの分解にいかなる影響を及ぼしているかを明らかにするためにセルラーゼ複合体の1成分であるエキソセルラーゼ(C1セルラーゼ)活性を3地域(富山,太田,対馬)の重金属現地汚染土壌を用いて調べた。 1)重金属の自然界値に対し,富山土壌では平均Cd3.0倍,Zn4.2倍およびCu1.2倍,太田土壌では平均Cd6.5倍,Zn6.6倍およびCu28.0倍,対馬土壌では平均Cd23.0倍,Zn20.0倍およびCu3.0倍がそれぞれ含まれていた。したがって,対馬土壌が最も汚染度が高く,ついで太田土壌,富山土壌が最も汚染度の低い土壌であった。 2)3地域の中では,1枚の水田土壌から採取された太田土壌の理化学性の分析値のばらつきが最も小さかった。このことを反映して,太田土壌のみに重金属含量とエキソセルラーゼ活性との間に有意な相関関係が示された。 3)形態別の重金属含量(交換性および全量)とエキソセルラーゼ活性との関係をみると,両者の間にはいずれの重金属とも,大きな差異は認められなかった。 4)非火山灰土壌で有機物含量の低い富山および対馬土壌のエキソセルラーゼ活性は,風乾処理により活性の低下が著しく,一方火山灰土壌で有機物含量の高い太田土壌では活性の低下は小さかった。重金属汚染土壌の重金属含量とエキソセルラーゼ活性との関係は,再湿潤土のエキソセルラーゼ活性を用いた方が高い相関が認められた。エキソセルラーゼ活性を炭素当りに換算すると,さらに両者の関係が明確になった。 5)3地域の中で低濃度汚染地の富山土壌(平均Cd0.89およびZn250μg・g-1)では,エキソセルラーゼ活性と重金属含量との間には特に際だった関係はなかった。しかし,中濃度汚染地の太田土壌(平均Cd1.91およびCu531μg・g-1)では重金属含量の増加に伴いエキソセルラーゼ活性は低下した。同様に,高濃度汚染地の対馬土壌(平均Cd6.7およびZn1192μg・g-1)でも,エキソセルラーゼ活性は低下した。
  • 岩瀬 晃盛, 瀬戸 信也
    1993 年 6 巻 3 号 p. 259-266
    発行日: 1993/07/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     大気中NO2濃度の日平均値の母集団分布としてべき逆ガウス型分布を仮定し,大気汚染測定局におけるNO2の汚染特性について解析する。3個の母数を持つべき逆ガウス型分布は母数の特別な場合として逆ガウス型分布と対数正規分布を含んでいる。最初に,べき逆ガウス型分布のいくつかの性質を提示し,各母数の役割について論じる。次に,べき逆ガウス型分布のNO2日平均濃度への適合度を逆ガウス型確率紙を利用して調べる。大部分の測定局でNO2,日平均濃度の分布としてべき逆ガウス型分布を採用することは否定されない。べき逆ガウス型分布の平均を表す母数と,分布の形状を決定しバラツキを表すと解釈される母数との相互依存性はほとんど認められない。これらの母数の推定値を基にして一般環境大気測定局と自動車排出ガス測定局との汚染構造の差異についてもあわせて検討する。
  • 溝渕 膺彦, 斎藤 和夫, 市川 博
    1993 年 6 巻 3 号 p. 267-270
    発行日: 1993/07/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    The paper described usage of 196 private wells in Nara Prefecture during the period of February 1990 to December 1991. A quarter of the wells were used for all purposes in daily life because of their locations being away from the public water supply area. Although other domestics can use the public water supply systems, the well waters are still important in their daily life not only as drinking water, but also as the water for washing clothes, watering on the garden, and so on. The ground water level was higher in the middle of Nara Basin than in the other places in Nara Prefecture, and the average groundwater level in Nara was at -2.4 m depth from the groundsurf ace.
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