重金属汚染が土壌中のセルロースの分解にいかなる影響を及ぼしているかを明らかにするためにセルラーゼ複合体の1成分であるエキソセルラーゼ(C
1セルラーゼ)活性を3地域(富山,太田,対馬)の重金属現地汚染土壌を用いて調べた。 1)重金属の自然界値に対し,富山土壌では平均Cd3.0倍,Zn4.2倍およびCu1.2倍,太田土壌では平均Cd6.5倍,Zn6.6倍およびCu28.0倍,対馬土壌では平均Cd23.0倍,Zn20.0倍およびCu3.0倍がそれぞれ含まれていた。したがって,対馬土壌が最も汚染度が高く,ついで太田土壌,富山土壌が最も汚染度の低い土壌であった。 2)3地域の中では,1枚の水田土壌から採取された太田土壌の理化学性の分析値のばらつきが最も小さかった。このことを反映して,太田土壌のみに重金属含量とエキソセルラーゼ活性との間に有意な相関関係が示された。 3)形態別の重金属含量(交換性および全量)とエキソセルラーゼ活性との関係をみると,両者の間にはいずれの重金属とも,大きな差異は認められなかった。 4)非火山灰土壌で有機物含量の低い富山および対馬土壌のエキソセルラーゼ活性は,風乾処理により活性の低下が著しく,一方火山灰土壌で有機物含量の高い太田土壌では活性の低下は小さかった。重金属汚染土壌の重金属含量とエキソセルラーゼ活性との関係は,再湿潤土のエキソセルラーゼ活性を用いた方が高い相関が認められた。エキソセルラーゼ活性を炭素当りに換算すると,さらに両者の関係が明確になった。 5)3地域の中で低濃度汚染地の富山土壌(平均Cd0.89およびZn250μg・g
-1)では,エキソセルラーゼ活性と重金属含量との間には特に際だった関係はなかった。しかし,中濃度汚染地の太田土壌(平均Cd1.91およびCu531μg・g
-1)では重金属含量の増加に伴いエキソセルラーゼ活性は低下した。同様に,高濃度汚染地の対馬土壌(平均Cd6.7およびZn1192μg・g
-1)でも,エキソセルラーゼ活性は低下した。
抄録全体を表示