環境科学会誌
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8 巻, 4 号
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  • 加藤 和弘
    1995 年 8 巻 4 号 p. 339-352
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     生物群集の種組成の変化パターンを分析し,群集に影響を及ぼす環境要因を明らかにしたり,その環境要因から見た地域の環境評価,環境計画を支援するために,種組成データの多変量解析による分析が利用されている。本研究ではそのうちの序列化に焦点を当て,主要な手法の有効性を比較,検討した。既に研究され,種組成の変化のパターンとその環境要因がわかっている生物群集データ2セットを,よく利用されている6つの序列化手法,主成分分析,反復平均法,DCA,多次元尺度構成法, BC序列法,およびCCAにより分析し,結果を比較した。種組成のデータの他に環境条件のデータを必要とするCCAについては,種組成とは無関係の環境条件に関するデータが計算結果に与える影響を知るために,一部またはすべての環境条件のデータを乱数に置き換えての計算も行った。得られた結論は以下の通りである。種組成の変化の幅が狭い場合(総種数がサンプルあたり平均種数の3倍前後またはそれ以下)には,データを対数変換した上での主成分分析が適当であり,DCAと多次元尺度構成法がこれに次ぐ。種組成の変化の幅が広く,かつその環境要因が相互に独立である場合には,DCAが適当である。種組成の変化の幅が広い場合でも,その環境要因が互いに連関して変化している場合には,DCAは誤った結果を示すことがあり,反復平均法との相互検証が必要になる。多次元尺度構成法はおおよそ常に歪みのない結果を出すが,類似度指数の選択により結果が左右されるうえ,サンプル(地点)の序列と種の序列が独立に計算され,不便である。CCAは,種組成の変化に関与する環境条件に関するパラメータが計算に用いられている場合は,他の手法以上に効果的である。そうでない場合には妥当な結果を得ることができず,種組成とは無関係の環境条件に関するパラメータに由来する軸の固有値は,ごく小さな値を取ることが示された。
  • 近藤 美則, 大井 紘, 須賀 伸介, 宮本 定明
    1995 年 8 巻 4 号 p. 353-368
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     本報では,大都市の中でも住宅地住民の持っている公害を含む生活上の迷惑・被害にかかわる意識を,公害等の範囲も種別もまた分類をもあらかじめ限定せず,住民の意識そのものに従って調査し把握しようとする。そのとき特に,住宅地を通過する幹線道路の沿道住民の意識と非沿道住民の意識とを対比して幹線道路の影響を明らかにする。 調査対象者として,住宅地内を通過する幹線道路の直近20m以内の沿道居住者とその幹線道路から300m以上離れた非沿道居住者をとった。調査法には,住民に対して生活の場の中で受けている迷惑・被害についての自由な記述を求める自由記述法を用いた。分析は,得られた回答を単語に分解し,単語の出現頻度について考察を加えるとともに,回答者群の記述した単語集合について,回答者によって同時に数多く記述された単語同士は関連性が高くなるような類似度を定義してクラスタ分析を行った。 単語の頻度分析の結果から,(1)音や自動車交通による被害・迷惑感は幹線沿道に固有の特徴ではなく,非沿道でもそれらは上位に見られること,(2)沿道に特徴的な語は「排気ガス」と「震動」であり,特に「震動」が「騒音」,「排気ガス」と同程度にかつ一体的に語られること,(3)音の認知の表現として,従来注目されにくかった「ひどい」が沿道では「うるさい」よりはるかに高い頻度で使われること,等が明らかになった。 クラスタ分析の結果からは,非沿道では都市計画,土地政策,道路政策,住宅政策にかかわる問題が指摘されるほか,住民や通行者のモラル,生活様式にかかわる問題が見いだされた。このことは,都市・生活型公害を解決するためには,物理的な環境整備だけでは目的を達成しえないことを示している。一方,沿道での主クラスタは,i)間近の幹線道路の交通公害を記述する語で構成され,ii幹線道路公害の主要3要素の「騒音,震動,排気ガス」とともに,当該の幹線道路名称が見いだされる,さらにiii)主クラスタ以外の語クラスタはほとんどが主クラスタの付属的描写や言い換えであり,その中には,主クラスタが概念的かつ対象に心理的距離をおいた表現であるのに対し,状況を感覚的かつリアルに述べるものも見いだされる,iv)幹線道路に由来する圧倒的に多い迷惑・被害感が非沿道の住宅地で見られる類の迷惑・被害感を覆い隠している,等が明らかになった。
  • 楊 振強, 木村 眞人
    1995 年 8 巻 4 号 p. 369-378
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     2種類の下水汚泥を添加した土壌中でのZn, Cu, Cdの保温静置に伴なう存在形態の変化を,逐次抽出法により9画分に分画し調べた。また,これら重金属の各画分における可給性を,DTPA抽出量との関係から検討した。 土壌への下水汚泥の添加に伴ない,各重金属の存在形態は変化した。沈澱剤として酸化鉄と石灰を使用し高pHを示す汚泥を添加した土壌では,いずれの重金属も難抽出性の画分に移行し,DTPA抽出量も低下した。他方,高分子凝集剤を使用し酸性を呈する下水汚泥を添加した場合には,いずれの重金属もその存在形態が易抽出性の画分へと変化し,DlTPA抽出量も増加した。
  • 楊 振強, 木村 眞人
    1995 年 8 巻 4 号 p. 379-386
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     2種類の下水汚泥を添加した土壌中でのZn,Cu,Cdの保温静置に伴なう存在形態の変化を,逐次抽出法により9画分に分画し調査した。 各重金属の保温静置に伴う存在形態の顕著な変化が培養後20日以内に観察され,その変化は各重金属の特性と添加汚泥の性質に依拠していた。汚泥中で主に非晶質鉄または有機物に弱く結合した画分に存在したZnは,汚泥添加土壌中で残渣画分および酸化マンガン画分に変化した。汚泥中で主に水溶性,交換態,非晶質鉄画分に存在したCuは,より難抽出性の結晶質鉄,残渣,酸化マンガン画分に移行した。他方,Cdは汚泥添加土壌中でも水溶性,交換態画分に存在した。 添加汚泥の性質は,易抽出性Zn,Cd量に顕著な影響を及ぼした。また添加汚泥の性質はCuの有機物画分への存在量を変化させた。
  • 田中 正道, 神浦 俊一, 藁科 宗博, 前田 泰明, 鵜野 伊津志, 若松 伸司
    1995 年 8 巻 4 号 p. 387-396
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     関西地域の春期に航空機による300m,600m,2,000m高度(広範囲)および大阪府市内1ケ所の地上レベルでの大気中炭化水素と一酸化炭素濃度の測定を行い,これらの垂直濃度分布から次のようないくつかの興味ある知見が得らられた。(1)測定した総ての大気汚染物質の平均濃度は高度の上昇とともに減少し,非メタン炭化水素に占める17炭化水素成分の割合も高度の上昇に伴って減少した。(2)17炭化水素の高度による平均濃度減少率は各成分により異なり,特にプロピレンのそれには著しい傾向が観察された。また,エチレン濃度の減少率はアセチレンのそれより大きく,[エチレン]/[アセチレン]=E/A比の平均値は300m以上では単調に減少したが,この調査での地上付近(大阪市内1ケ所)から300mにかけてはほとんど変化は観察されなかった。一方,[一酸化炭素]/[アセチレン]=CO/A比の平均値は地上付近から300mにかけては急激な増大を示した。このCO/A比は300m以上ではE/A比と同様単調な減少傾向を示した。これらの結果は次のようなことを示唆する。即ち,地上付近の一測定点での調査対象汚染物質濃度はその近隣に存在する発生源の影響を強く受けて地域特性が強く表れ,広域,高度域でのE/AやCO/Aの平均値と比較しうる地上付近でのそれらを決定することは非常に困難であること。また一方,この影響は高度域(300m以上)では拡散によってある程度弱められると同時に,広域(関西地域)での濃度平均値を用いることによっても希釈され,その結果,これらの大気中の反応速度の差に基づく濃度減少が平均E/AやCO/A等の減少の形で比較的明暸に観察されるようになること。
  • 大石 昌弘, 高橋 千太郎, 菊地 正, 古谷 圭一
    1995 年 8 巻 4 号 p. 397-408
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     空気中浮遊微粒子の呼吸器における溶解性は,吸入摂取後の生体影響発現に関係する重要な要因の一つである。本研究では,すでに著者らにより物理化学的性状が一部明らかにされた緑色および黒色酸化ニッケル粒子をモデル粒子とし,結晶性,軽元素不純物ならびに各種溶媒中での粒子径分布と溶解性について検討を重ねると共に,気管内挿管法を用いてマウスの肺に投与することにより実際の呼吸器における溶解性を明らかにし,粒子の物理化学的特性と動物の呼吸器における溶解性との関係について検討した。その結果,緑色酸化ニッケルは黒色酸化ニッケルに比べ結晶性が良好であり,また,黒色酸化ニッケルは重量濃度で1%弱の塩基性炭酸ニッケルを含むことが明らかにされた。これらの粒子を5種類の溶媒(蒸留水,生理食塩水,ハンクス平衡塩溶液,イーグル培養液,および10%牛胎児血清加イーグル培養液)に超音波分散したところ,両粒子の凝集の程度に差は認められなかったが,7日間の静置後には粒子の凝集による明らかな粒子径の増大が認められ,黒色の粒子で凝集の程度が高かった。また,その際の試験管内溶解性にも,両粒子の間で顕著な差が見られ,緑色酸化ニッケルは全く溶解しないのに対し黒色酸化ニッケルは約25-40%が溶解した。一方,これらの粒子をC3H系マウスの肺に気管内挿管によって投与し,肺滞留率,他臓器への移行率および糞尿中排泄率から呼吸器での溶解率を推定したところ,7日間での緑色および黒色酸化ニッケルの呼吸器内での溶解率は,それぞれ22.3-55.6%および64.6-76.9%と推定され,上記の試験管内溶解性試験と比べかなり高かった。以上のことから,今回用いたような,静置法による試験管内溶解性試験では,呼吸器における酸化ニッケル粒子の溶解性を正確に模擬することは困難であり,撹拌状態や溶媒の組成をより生体の呼吸器の状態に近づけるなどの改良が必要であると考えられた。
  • 岡 憲司
    1995 年 8 巻 4 号 p. 409-418
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー

    大気中の海塩粒子量の簡易測定法として,JIS法(乾式クロス法)およびISO法(湿式円筒ガーゼ法)を検討した。両方法により大気中に暴露したガーゼからは,海塩組成比より大過剰のC1-が検出され,また,その量は同期間の粗大径C1-粒子濃度と無相関であった,(ガーゼ捕集Na+量と粗大径Na+粒子濃度とでは無相関でない)。更に,テフロンフィルターで覆ったJIS法およびISO法のガーゼ試料からも相当量のCl-が検出された。実験室的にも,(1)塩化水素ガス雰囲気中に静置したJIS法およびISO法ガーゼは,塩化水素ガスを受動捕集する。(2)JIS法に倣って,ガーゼ2枚に15cm/sの流速で塩化水素ガスを通気した場合,平均73%(49~86%)の捕集率を示す。(3)JIS法ガーゼの破過量は約0.5mgC1/ガーゼ1gと推定されるが,ISO法ガーゼの場合には1.5mgC1/ガーゼ1g捕集に至っても90%以上の捕集率を維持し,それ以上の暴露に対しても捕集率は低下するものの捕集量は増加し続け,明確な破過量を示さない事を明らかにした。
    以上の事実から,ガーゼはガス状塩化物(塩化水素ガス)をも捕集すると推定された。また,風速の大きい時には,JIS法ガーゼは微細径のCl-粒子もかなり捕集すると推定された。
    したがって,海塩粒子濃度の評価法としては,JIS法やISO法に指定されている捕集C1-量からの算定よりNa+量からの算定の方が適切であろう。
    大阪府南部で沿岸部から内陸府県境30kmまでの10地点で1年間,海塩粒子量を調査した。いずれの地点においてもCl-からの算出量>Na+からの算出量であり,塩化水素ガスによると思われる干渉が広く認められた。また,海塩粒子量は海岸からの距離と共に指数関数的に減少し,6~8kmで半減した。
  • 服部 浩之, 佐竹 研一
    1995 年 8 巻 4 号 p. 419-424
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
     酸性雨とナラタケによる森林被害の因果関係を明らかにするため,ナラタケの菌糸の生長,胞子の発芽に及ぼす酸性物質の影響を調べた。その結果,菌糸の生長の至適pHは素寒天培地でも麦芽エキス寒天培地でも6~7で,酸の種類によらずpHが酸性になるほど生長は低下した。しかし,pH 3~4でも生長するなど比較的耐酸性で,菌糸の生長が完全に停止するのは,pH 2.5以下であった。また,無菌条件下での胞子の発芽の至適pHも6~6.5で,pH4以下で発芽数は大きく減少し,3以下では全く発芽しなかった。一方,土壤微生物が共存した場合はpH4~4.5で最も亀発芽数が多く,pH5以上では共存する細菌類の影響で発芽がみられなかった。これらの結果から,ナラタケにとっての発芽の至適pHは6~6.5であるが,多くの微生物が共存しその影響を受ける自然環境下では,より酸性の条件の方が発芽に適していると考えられた。
  • 福崎 紀夫, 大泉 毅
    1995 年 8 巻 4 号 p. 425-430
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     化学成分の湿性沈着量(D)の降水量(R)依存性(D=D1*Rb,D1は定数)を示すb値の持つ意味を明かにするために,本州日本海側に位置する新潟市郊外で梅雨期と降雪期に一降水毎に採取された降水による沈着量を比較して議論した。塩化物イオン(C1-)を除く全ての成分で,得られたb値は梅雨期よりも降雪期に高い値を示し,特にNO3-,nss-SO42--,NH4+ 及びnss-K+でその違いが大きいことがわかった。他方,海塩成分(Na+,Mg2+,C1-)のb値は,梅雨期と降雪期で大きな差は認められなかった。これらのb値の違いは,日本海側地域における降雪雲は対流性のものでありNO3-,nss-SO42-,NH4+及びnss-K+はレインアウトによって取り込まれ雲中にかなり均一に分布し,また,降雪期においては雲底下における除去効果は海塩成分よりも小さいことを示すものと考えられる。
  • ―蒸発池(Evaporation Pond)の水質とセレン研究をめぐって―
    康 峪梅
    1995 年 8 巻 4 号 p. 431-435
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     アメリカ・カリフォルニア州San Joaquin Valleyの農業排水問題及び排水システムとしての蒸発池について紹介し,セレンによる環境問題を概説した。南San Joaquin Valleyでは,排水システムが完備しないまま,百年近く灌漑農業が行われてきている。1971年から1982年までの間,農業排水は北の方へ流され,Kesterson国立野生動物保護区につくった貯水池に溜められていた。しかし,貯水池の水が原因で野生動物にセレン中毒が発生したことが判明したため,北への排水は中止となり,それに変わって現地で蒸発池をつくって農業排水を溜めるようになった。蒸発池は灌漑農地の10%を占め,農業排水システムの主要な役割を担っている状況から,この地域の農業の存続は蒸発池の維持管理にかかっていると言っても過言ではない。長期間蒸発池を使用していくには,池の貯水量が問題となるが,現段階ではこれにも増して,池水の水質浄化が緊急課題となっている。 San Joaquin Valleyの西側に分布する土壌はパイライトを含む堆積物に由来するためセレン濃度が比較的高く,さらに土壌のpHが高いためセレンは溶解性の高いセレン酸塩の形態で存在する。この可溶性のセレンが溶け出し,農業排水と共に流出して問題を起こしている。水は流入,蒸発を繰り返し,セレンが濃縮されていくので,これらの蒸発池は水鳥などの野生動物にとって非常に危険である。筆者が分析した三つの池では,一つの池の全セレン濃度が飲料水基準(10ng/ml)の8倍ぐらい高く,野生動物にとって危険な濃度であった。池水のセレンの主な形態はセレン酸塩と考えられていたが,筆者の分析結果では無機態セレンでは亜セレン酸塩が多く,また有機態セレン含量も高かった。これらの結果は池水からセレンを除去するに当たって,セレン酸塩以外に亜セレン酸塩や有機態セレンを考慮に入れるべきことを示している。
  • 本特集の主旨
    須藤 隆一
    1995 年 8 巻 4 号 p. 437
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
  • 閉鎖性海域の環境の現状と対策の動向
    志々目 友博
    1995 年 8 巻 4 号 p. 439-447
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
  • 赤潮の発生機構と青潮の生成環境
    渡辺 正孝, 木幡 邦男
    1995 年 8 巻 4 号 p. 449-460
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
  • 水産と内湾の環境汚染
    小山 次朗
    1995 年 8 巻 4 号 p. 461-468
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
  • 海浜環境の創造
    細川 恭史
    1995 年 8 巻 4 号 p. 469-475
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
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