環境科学会誌
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9 巻, 2 号
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  • 藤田 慎一
    1996 年 9 巻 2 号 p. 185-199
    発行日: 1996/05/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     電力中央研究所では日本列島を対象に,硫黄化合物の人為発生量,天然発生量,湿性沈着量,乾性沈着量などのデータの収集と解析を進めてきた。本報はこれらのデータをもとに,1980年代後半の日本列島を対象に,大気中における硫黄化合物の収支について解析したものである。日本列島を15の気候区に分割して,これにほぼ80km正方の114個のメッシュ系を重ね,発生量と沈着量を推計して,その季節変化や地理分布を調べた。 陸域と沿岸を含む面積が約722,000km2の領域の年間値をみると,人為発生量約435GgS/yに対して,湿性沈着量約620GgS/y ,乾性沈着量約430GgS/yであり,当該領域に沈着する硫黄化合物の全量は,みかけ上,人為発生量を2倍以上うわまわる。硫黄化合物の収支構造は,列島の背骨をなす中央の山脈の南側と北側とでは大きく異なる。山脈南側の気候区では,発生量に対する沈着量の比率は2以下であり両者の値はほぼ均衡する。これに対して,山脈北側の気候区では比率が2以上であり,天然発生源の寄与か圏外からの流入を考慮しないと説明できない。日本列島の火山からは,人為起源にほぼ匹敵する量の硫黄化合物が発生している。このため火山の寄与を考慮すると,日本全域では発生量に対する沈着量の比率は1に近い値になる。ただし火山の分布は偏在しており,また風系的にみて,寒候期に観測される高濃度の硫酸イオンを説明することは難しい。生物起源の硫黄化合物の動態に関する知見は乏しいが,既往のデータを参考にする限り,その寄与は人為起源や火山起源よりも相対的に小さいとみられる。 寒候期の日本海側に湿性沈着する硫黄化合物は,卓越風によって大陸から輸送されたものと推察され,また発生量と沈着量の差は,海域における気象データや濃度データをもとに,気候区内に流入した硫黄の大部分が沈着していると考えれば説明し得るとみられる。
  • 藍川 昌秀, 芳川 一宏, 冨田 道夫, 原口 紘〓
    1996 年 9 巻 2 号 p. 201-210
    発行日: 1996/05/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     我々は名古屋市において,1990年8月から都市大気中のメタン濃度の連続測定を行っている。都市域における大気中メタン濃度は,昼間において低濃度,夜間において高濃度となる特徴的な平均日変化を示した。この平均日変化に加えて,大気中メタン濃度には月及び季節変化が観測された。メタン濃度のこれらの特徴的な動態には,大気の安定度が深く影響を与えており,この大気の安定度は気温逆転層の形成につながる。従って,本論文では大気の安定度が都市域における大気中メタン濃度の日変化及び季節変化の主な原因となっていることを示した。
  • 山田 武, 大野 原基, 佐藤 昌憲, 山田 悦
    1996 年 9 巻 2 号 p. 211-219
    発行日: 1996/05/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     京都盆地を囲む15の山において,土壌の酸性度と化学組成を調べ,京都里山における土壌酸性化の実態について検討した。京都里山の土壌のpH(H2O)の平均値は,腐葉土層(A0)で3.96,その下層で4.26とかなり酸性土壌であることがわかった。京都里山は,土壌pHが酸性から中性の領域に広く分布する比叡山型の山と,土壌pHが比較的狭い酸性pH領域に分布する大文字山型の二種に分けられ,大文字山型の山がほとんどであった。土壌の水溶性陰イオンは,塩化物イオン,硝酸イオン,硫酸イオンの平均値がそれぞれ0.046,0.0064,0.0322cmolkg-1であった。低pH土壌では,塩化物イオンと硫酸イオン濃度が高くなる傾向を示したが,硝酸イオン濃度は全体的に低かった。交換性アルミニウムは土壌pHが5.5以下になると現れ,pHが低くなるに従って増加した。各山ごとの土壌緩衝能を解析したところ,京都盆地を三方から直接囲んでいる山々が,土壌pH及び交換性(Ca+Mg)が低く,交換性Alと硫酸イオン濃度は高く,土壌緩衝能の低下が推測された。京都の降水の平均pHは4.33でかなり酸性化しており,硫酸イオン及び硝酸イオン濃度が高かった。人為的汚染のほとんどない京都北山の沢水の平均pHは6.90で中性であり,酸性降水は比較的容易に中和されていることがわかった。
  • 佐藤 一男, 高橋 章
    1996 年 9 巻 2 号 p. 221-230
    発行日: 1996/05/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー

    神奈川県伊勢原市のスギ人工林において,1994年4月~1995年3月の1年間にわたりスギの樹幹流・樹冠雨,林外雨の化学性を測定した。また,スギの樹幹から下流方向に幅150cm,深さ90cmの土壌断面を作成し,土壌試料のpH(H2O),ANC,交換性A1量の2次元分布を調べた。
    樹幹流,樹冠雨,林外雨の年平均pHはそれぞれ3.11,4.41,4.56であり,樹幹流は強酸性を呈した。樹冠下の土壌pHは5.8~6.4の比較的高い値であったが,樹幹の近傍だけは著しく低く,最低pHは4.05であった。樹幹から120cm離れた樹冠外の土壌pHは,樹冠下よりも0.2~0.5程度低かった。土壌pHの低下は,交換性塩基量の減少および交換性A1量の増加とほぼ対応していた。林床における単位面積当たりのH+沈着量は,樹幹流>>林外雨>樹冠雨の順であったことから,樹幹近傍土壌のpH低下は強酸性の樹幹流の影響,樹冠外でのpH低下は林外雨の影響と推察された。
    林床における化学成分の物質収支モデルを用いて,林床にもたらされたH+の起源(湿性沈着,乾性沈着,樹体からの溶脱)を推定した。その結果,樹冠ではH+が消費されているが,樹幹ではH+が溶脱していることがわかった。しかしながら,溶脱H+のみでは樹幹流の強酸性は説明がつかず,水分蒸発による樹幹流の濃縮,および樹幹への酸性物質の乾性沈着が重複した結果であると考えられた。
  • 近藤 美則, 森口 祐一, 清水 浩
    1996 年 9 巻 2 号 p. 231-240
    発行日: 1996/05/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     オイルショック以降省エネルギーの進展した産業部門に比べて,運輸部門および家計部門では,GNPの伸びに比例する形でエネルギーを消費し,そしてCO2を排出し続けている。本報では,エネルギーの直接消費からのCO2排出と財やサービスの利用による間接的なCO2排出の両面から,家計部門におけるCO2排出の構造とその推移について分析した。この分析では3種類の産業連関表と商業マージン表を利用し,1975年から90年までの5年おき4時点を分析の対象時点とした。また,国内需要を満たすための輸入品の生産のために国外で排出されるCO2量についても,輸入品は国産品と同じように生産されたと仮定することにより分析には含めた。 その結果,以下のことが明らかとなった。1) 家計の消費支出に伴うCO2排出量は全体量としてもまた一人当たりの量としても1975年から85年まではほぼ一定であるが,85年から90年にかけて急増した。2) 1985年から90年にかけての排出量の急増を引き起こしたのは,電力やガソリンの消費,遊戯場の利用,航空輸送の利用,乗用車の購入である。3) 家計の消費支出に伴うCO2排出量のうち,輸入品に伴うCO2量は10数%を占める。近年輸入に伴うCO2排出量が増加しており,これを無視するならば温暖化対策に関して誤った結論を導く可能性がある。4) 道路貨物輸送部門に含まれるべき宅配便の利用に伴うCO2排出量が,1985年までの産業連関表では正しく取り扱われていなかったが90年の産業連関表では正しく取り扱われるようになった。
  • 佐治 光, 青野 光子, 久保 明弘, 田中 浄, 近藤 矩朗
    1996 年 9 巻 2 号 p. 241-248
    発行日: 1996/05/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     トマトのリブロースニリン酸カルボキシラーゼ小サブユニット遺伝子のプロモーターとシロイヌナズナのサイトゾル型アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)のcDNAからなるキメラ遺伝子をタバコに導入した。得られた遺伝子組換え植物の葉は様々なAPX活性を有し,高いものでは対照の非組換え植物の5~10倍の値を示した。これらの植物の葉片を除草剤のパラコートで処理し,葉片からの電解質の漏出量によりパラコート感受性を調べたところ,組換え植物と対照の植物との間で有意な差は見い出されなかった。組換え植物,対照の植物共に,パラコート処理後光照射下に置いた葉片のアスコルビン酸含量及びAPX活性は,急激に減少した。従って,サイトゾルにおけるAPX活性は,少なくとも本研究で用いた材料及び条件下においては,パラコートによって生じる酸化的ストレスに対する耐性の制限因子にはなっていないと考えられる。
  • ―各種細菌の分布の季節変化と有機物施用の影響―
    加来 伸夫, 上木 厚子, 大渕 光一, 上木 勝司
    1996 年 9 巻 2 号 p. 249-261
    発行日: 1996/05/31
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
     稲わら,堆肥および無機質肥料を連用した各種水田土壌中のメタン生成細菌,嫌気性細菌および好気性細菌の各細菌数の季節変化を3年間にわたって調べた。さらに,これらの細菌の水田土壌作土層の深さ別と水稲栽植区および無栽植区土壌中における分布を調べた。施用した肥料の違いは,各細菌数とその季節変化にあまり影響を及ぼさなかった。メタン生成細菌は稲作付期間中には105MPN/g・d.w.のオーダーで検出され,刈り取り後には一旦減少する傾向が認められたが,冬期でも検出された。嫌気性細菌数は1年を通して106CFU/g・d.w.のオーダーで細菌数変化は顕著ではなかった。好気性細菌は通常,嫌気性細菌よりさらに高い107CFU/g・d.w.のオーダーで検出された。水田土壌の作土層の深さ別分布は,細菌により,また,作付期間と刈り取り後で傾向が異なった。メタン生成細菌数は作付期間中は深さ3~5cmで最も高かったが,刈り取り後は0~1cmで高かった。嫌気性細菌数は作付期には下層ほど,刈り取り後には上層で高かった。好気性細菌数は,いずれの時期においても上層の方が高い傾向にあった。メタン生成細菌を含むいずれの細菌数とも,栽植区土壌中の方が無栽植区土壌中に比べて高い傾向があった。各試験区からのメタン放出量の季節変化は,稲わら施用の有無により大きく異なったが,各細菌数にはこれと対応する季節変化や試験区毎の差は認められなかった。
  • 廃棄物処理と環境問題
    中杉 修身
    1996 年 9 巻 2 号 p. 263-266
    発行日: 1996/05/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
  • 廃棄物管理におけるあるべき姿
    古市 徹
    1996 年 9 巻 2 号 p. 267-275
    発行日: 1996/05/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
  • ごみ有料化論をめぐって:到達点と課題
    山川 肇, 植田 和弘
    1996 年 9 巻 2 号 p. 277-292
    発行日: 1996/05/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
  • 廃棄物リサイクルの現状と課題
    後藤 典弘
    1996 年 9 巻 2 号 p. 293-301
    発行日: 1996/05/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
  • 有害廃棄物のコントロール方策について―汚染回避戦略と残留性有機汚染物質を中心に
    酒井 伸一
    1996 年 9 巻 2 号 p. 303-315
    発行日: 1996/05/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
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