日本顎口腔機能学会雑誌
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1 巻, 1 号
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  • 古木 譲, 長谷川 成男, 三浦 宏之, 益田 高行
    1994 年 1 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    ブリッジ補綴による支台歯の連結固定が支台歯の機能時の変位に及ぼす影響を明らかにする目的で, 上顎第2小臼歯と第2大臼歯を咬合接触および隣接接触関係を変化させずに連結固定して, その前後での水平面内における歯牙の変位を測定した.その結果, 以下の結論を得た.
    1.機能時の歯牙の変位経路は連結固定によって変化を示すが, 連結固定前の両支台歯の変位方向の中間的方向とはならないで, 一方が大きい影響を受けることがある.
    2.歯牙の連結固定には隣接接触関係と類似の効果があって, 歯牙の変位の生理的分布範囲は近遠心方向での規制を受ける.
    3.3歯程度のブリッジ補綴による連結固定が支台歯の歯周組織の動態に影響を及ぼすことはほとんどないものと考えられる.
  • ―顎関節症患者における水平的下額位の変化が直立姿勢に及ぼす影響―
    島田 淳, 石上 惠一, 武田 友孝, 柿沼 秀明, 中島 一憲, 豊田 將盟, 西川 修弘, 大岩 陽太郎, 高山 和比古, 月村 直樹, ...
    1994 年 1 巻 1 号 p. 11-23
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    抄録顎口腔系は咀嚼筋を始めとする頭頸部諸筋群, 歯, 顎関節および周辺組織ならびにこれらを支配している神経系などにより成り立っておりこれらが調和することにより, 顎口腔系の機能が営まれる.顎関節症は主に咬合に起因する様々な原因により, これらの調和が崩れることにより起こるとされている.このような顎関節症患者の中には顎口腔系のみでなく全身症状を含む種々の不定愁訴を持つ者も多くみられることから顎口腔系の不調和がそれのみにとどまらず, 全身状態にまで影響が及んでいるのではないかと推測され, 近年この顎口腔系と全身状態との関連についての報告も多くみられるようになってきた.著者らも, これらの関連を探求することを目的とした一連の報告の中で顎口腔系の変化が, 全身状態に与える影響について重心動揺分析システム, 聴性脳幹反応, 眼振図および指尖容積脈波などを用い, 検討を行ってきた.これらの研究の一つとして, これまでに水平的下顎位保持装置を用い, 健: 常者における水平的下顎位の変化が重心動揺および抗重力筋筋活動量に影響を与えることを報告した.そこで今回は水平的下顎位の変化が, 顎関節症患者の直立姿勢にどのような影響を及ぼすかについて検討を行ったところ, 重心動揺, 抗重力筋筋活動量のいずれについてもアペックスに比べ, いずれの水平的下顎位においても, その値は日間変動範囲を越え増加傾向にあるとともに左右側差の大きい者が多く見られる傾向であった.よって, 水平的下顎位の変化は, 重心動揺および筋活動量に影響を与えることから, 顎口腔系の変化は全身状態に影響を及ぼすこと, また, 顎関節症患者においてはすでに全身状態に影響が及んでいるだけでなく, 負荷を加えることによりその影響がより著明に現れる可能性が示唆された.
  • ―舌運動能力と咀嚼能力―
    越野 寿, 平井 敏博, 石島 勉, 大友 康資
    1994 年 1 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    全部床義歯装着者において, 義歯の維持・安定の観点から舌の位置や動きは重要となる.しかし, 全部床義歯装着者における舌運動機能と咀嚼能力の関係は, 未だ明らかになっていない.
    本研究は, 舌運動能が咀嚼機能に及ぼす影響を検討することを目的として, 無歯顎患者20名に対する舌運動能と咀嚼機能の評価を行なった.舌運動能は, 超音波診断システムを用いて評価した.咀嚼機能評価には, 試験食品としてピーナッツを用いる節分法と摂取可能食品アンケート法の2つの評価法を用いた.
    その結果は以下に示す通りである.
    1.全部床義歯装着者の舌運動能, 咀嚼効率, 咀嚼スコアは, ともに加齢に伴い低下することが示された.
    2.全部床義歯装着者の舌運動能力と咀嚼効率および咀嚼スコアの間には統計学的に有意な相関が認められ, 舌運動の巧みさが咀嚼能力に影響を与えることが示された.
    3.咀嚼効率と咀嚼スコアの間に有意な相関が認められた.
    4.客観的咀嚼機能評価の一助とするため, 舌運動能と咀嚼効率の標準的存在範囲を棄却楕円にて表示した.
    本研究結果から, 全部床義歯装着者において, 舌運動能が咀嚼機能に大きく影響を及ぼすこと, 舌運動能および咀嚼機能が加齢により低下することが示唆された.さらに, 摂取可能食品アンケート法による咀嚼機能評価の有用性が示された.
  • 大川 周治, 篠原 希和, 橋原 真喜夫, 足立 真悟, 操田 利之, 小村 育弘, 吉田 光由, 西中 寿夫, 八塚 信博, 阿部 泰彦, ...
    1994 年 1 巻 1 号 p. 33-44
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    今回我々は, JTバレーボール部に所属する男性10名 (平均年齢24.7歳) , 及び湧永製薬ハンドボール部に所属する男性10名 (平均年齢25.3歳) を用いて, バレーボールのスパイク時ないしハンドボールのシュート時における咀嚼筋の活動様相をテレメータにより記録分析するとともに, 記録された咀嚼筋の活動様相とスパイク・フォー・ムないしシュート・フォームとの関連性について分析した.その結果, スパイク時及びシュート時における明らかな咀嚼筋筋活動の発現が被験者全員に認められた.しかも, 運動動作の強弱に同調して, 咀嚼筋筋活動も変化した.これらのことから, バレーボールのスパイク動作及びハンドボールのシュート動作と咀嚼筋機能との間には密接な関連があることが明らかとなり, スポーツにおける全身運動に咀嚼筋が関与している可能性が示された.
  • ―運動経路と運動リズム―
    志賀 博, 小林 義典, 王 孝, 栃倉 純
    1994 年 1 巻 1 号 p. 45-55
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    咀嚼運動におけるガム軟化前後間の機能的差異を明らかにする目的で, 独自のシステムを用いて正常者10名のガム軟化前とガム軟化後における咀嚼開始後第5ストロークからの10ストロークの運動経路と運動リズムを分析した.結果は, 以下の通りである.
    1.開口量と咀嚼幅は, ガム軟化前の方がガム軟化後よりも大きく, ガム軟化前後間に有意差が認められた.
    2.開口時側方成分, 閉口時側方成分, 垂直成分の各SD/0Dは, ガム軟化前の方がガム軟化後よりも大きく, ガム軟化前後間に有意差が認められた.
    3.中心咬合位から下方1mmに閾値設定した場合の咬合相時間の平均は, ガム軟化前の方がガム軟化後よりも短縮していたが, 開口相時間, 閉口相時間, cycle timeの各平均は, ガム軟化前の方がガム軟化後よりも延長した.
    4.中心咬合位から下方2mmに閾値設定した場合の咬合相時間の平均は, ガム軟化前とガム軟化後とがほぼ同じ値を示したが, 開口相時間, 閉口相時間, cycle timeの各平均は, いずれもガム軟化前の方がガム軟化後よりも延長した.
    5.中心咬合位から下方3mmに閾値設定した場合の開口相時間, 閉口相時間, 咬合相時間, cycle timeの各平均は, いずれもガム軟化前の方がガム軟化後よりも延長した.
    6.中心咬合位から下方1mm, 2mm, 3mmに閾値をそれぞれ設定した場合のcycle timeの各変動係数は, いずれもガム軟化前の方がガム軟化後よりも大きく, ガム軟化前後問に有意差が認められた.
    7.以上のことから, 正常者のガム咀嚼時の咀嚼運動は軟化前の方が軟化後よりも垂直的かつ側方的な運動量が大きく, また運動リズムが不安定であり, ガム軟化前後間には機能的差異のあることが明らかになった.
  • ―咬筋筋活動―
    石原 裕之, 小林 義典, 王 孝, 児玉 秀夫, 佐藤 泰彦
    1994 年 1 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    総義歯装着者の夜間睡眠中のブラキシズムの様相を明らかにする目的で, 無咬頭人工歯を排列した治療義歯により咀嚼系の機能が安定したと認められた49~65歳の無歯顎者5名における義歯装着時の夜間睡眠中の生体現象を無線テレメーターシステムを用いて終夜連続記録し, 咬筋筋活動の発現様相について, すでに報告している正常者7名の結果と比較した.その結果, 咬筋EMGのburstとburst群の発現頻度, 筋活動時間は, 義歯装着者群の方が正常者群よりも低い値を示し, 両群間に有意差が認められた.また, これらは, 義歯装着者群では, 主咀嚼側と非主咀嚼側との間に有意差が認められなかった。
    これらの結果から, 機能的に安定した総義歯装着者における夜間睡眠中の咬筋筋活動のレベルは, 正常有歯顎者のそれよりも明らかに低く, また, これは, 主咀嚼側と非主咀嚼側との間で均等性を示すことが示唆された.
  • ―睡眠時無呼吸の発現の発現頻度―
    小林 義典, 三田 貢司, 武田 悦孝, 石原 裕之, 王 孝, 児玉 秀夫
    1994 年 1 巻 1 号 p. 65-77
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    総義歯装着者の睡眠時無呼吸の発現様相を明らかにする目的で, 治療義歯 (総義歯) の応用により咀嚼系の機能が安定した49~65歳の無歯顎者5名における夜間睡眠中の義歯装着時の生体現象を無線テレメーターシステムを用いて終夜連続記録し, すでに報告した正常者7名, bruxist7名, CMD患者10名の結果と比較した.
    睡眠時無呼吸の発現頻度は, bruxist群のみが高く, 正常者群とbmxist群との間以外の被験者群間に有意差が認められず, 持続時間は, 被験者群間に有意差が認められなかった.また, 咬筋EMGburst群に関連した睡眠時無呼吸の発現の割合は, 被験者群間に有意差が認められなかった.さらに, 睡眠時無呼吸に関連する各睡眠段階の割合は, 浅睡眠の増加と深睡眠の減少が認められ, 正常者群, bmxist群, CMD患者群, 義歯装着者群の順に著明となる傾向を示した.これらのことから, 中高年における睡眠時無呼吸の発現は, 機能的な総義歯装着者では, ほぼ正常レベルにあることが示唆された.また, 中高年で睡眠時無呼吸が多く発現するという従来の報告については, 加齢による生理的変化のみならず, 咀嚼系の機能的問題の関与の可能性も分析する必要性のあることが示唆された.
  • ―その臨床応用における精度―
    菊池 元宏, 能地 康和, 赤坂 守人
    1994 年 1 巻 1 号 p. 79-85
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    顎口腔系の形態や機能の研究に3次元測定装置が開発・応用され, これを用いた多くの報告がある.特に下顎運動の解析には3次元的な軌跡の記録が不可欠であり, このような測定を目的とした下顎運動記録装置が用いられてきた.しかし, 小児を被験者とした際, 満足のいく装置は少ない.
    著者らは小児にも応用可能である磁気を利用した下顎運動6自由度測定装置の開発を行っているが, 本装置の臨床上の性能を検討するため, 咬合器上で実際の測定状態および各種下顎運動を再現し, 精度を求めたところ, 以下のような結論を得た.
    1.本装置による寸法における最大誤差は, 被験者に中心咬合位から最大開口運動をさせた際の切歯点移動量における3.3mmであった.
    2.本装置による角度における最大誤差は, 被験者に中心咬合位から最大開口運動をさせた際の矢状面における2.13°であった.
    3.本研究により, 本装置が実際の臨床の場で下顎運動の6自由度測定に使用できる見通しが得られた.
  • 倉沢 郁文, 鷹股 哲也, 甘利 光治
    1994 年 1 巻 1 号 p. 87-93
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    開閉口運動時の顎位における閉口筋ならびに舌骨下筋中の筋紡錘由来の求心性神経の役割について研究を行った.実験時, 筋紡錘を賦活するために筋の振動刺激が用いられた.最初に, 指示された目標顎位へ視覚的フィードバックなしで, 遅い (<10mm/s) 開口ならびに閉口運動が行われた.振動刺激を開口運動時に咬筋の腱に適応すると, 全被験例でコントロールに対して目標顎位が有意に (p<0.001) 過剰評価された.閉口運動時に適応すると5例中2例で目標顎位は有意に (p<0.01) 過剰評価されたが, 残りの3例では有意差は認められなかった.中等度急速運動時に咬筋振動刺激を適応すると, 10例中8例で目標顎位が有意に (P<0.05) 過剰評価された.閉口運動時では有意差は観察されなかった.次に, 指示された目標顎位への, 遅い開閉口運動時に対する, 舌骨下筋振動刺激を行った.閉口運動時に振動刺激を適応すると, 全被験例で目標顎位は有意 (p<0.05) に過剰評価された.開口運動時における振動刺激適応に対しては有意な差は認められなかった.これらのことから, 咬筋ならびに舌骨下筋の筋紡錘由来の求心性情報は, 主としてそれぞれ開口ならびに閉口運動時における位置的情報として機能していることが示唆された.
  • 近藤 宏治, 大井 啓司, 近藤 一雄, 清水 俊也, 山本 伊一郎, 中野 雅徳, 坂東 永一
    1994 年 1 巻 1 号 p. 95-104
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    持続咬みしめ時における咬筋のMuscular soundを表面筋電図, 針筋電図, 咬合力とともに同時測定し, 咬筋におけるMuscular soundの基本的な性質について検討した.咬頭嵌合位での最大咬みしめと咬合力計を介して60~300Nの咬みしめを行い, Muscular soundと表面筋電図の振幅および周波数成分について解析し, また針筋電図を用いて咬筋運動単位とMuscular soundとの関係について検討を行った.
    1.咬頭嵌合位で最大咬みしめを行った時のMuscular soundの振幅は, 咬みしめ開始直後では大きく, その後急激に低下する傾向を示した.
    2.咬合力計を介して咬みしめた時のMuscular soundは, 咬頭嵌合位における最大咬みしめと比較して咬みしめ直後からのMuscular soundの振幅の低下が少なかった.
    3.60Nから300Nまで咬合力を変えて表面筋電図とMuscular soundの測定を行った結果, 表面筋電図のRMS値は咬合力を増すにつれて大きくなったが, Muscular soundのRMS値はほとんど変化を示さなかった.また本研究の測定条件では表面筋電図およびMuscular soundの平均周波数は, 咬合力を増してもほとんど変化を示さなかった.
    4.咬筋のMuscular soundは10~40Hzの周波数帯域の周波数密度が高かった.
    5.Muscular soundの測定データを平均加算処理した結果, 運動単位の活動に同期した信号が得られたことより, Muscular soundは運動単位固有の情報を有していることが明らかになった.
  • 柿谷 幸男, 中村 早江, 清水 真知男, 山内 六男, 長澤 亨
    1994 年 1 巻 1 号 p. 105-109
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    チューインガムを用いた咀嚼訓練が咀嚼機能に及ぼす影響について検討した.
    市販の強化ガムを毎食後10分間, 4週間にわたって咬ませた.訓練開始1, 2, 3, 4週間後と訓練終了2週後までの間の咀嚼時の咬筋EMG, 下顎運動および咀嚼値を記録した.
    EMG持続時間と間隔は咀嚼訓練により有意に短縮した.また筋放電持続時間は訓練停止2週間後も元の値に戻らなかった.筋活動量ならびに咀嚼値は訓練の影響を受けなかった.
    下顎運動の移動量パラメータは咀嚼訓練の影響を受けなかった.開, 閉口相, 咬合相, 咀嚼周期などの時間パラメータは訓練により短縮した.
    これらの結果は咀嚼訓練により筋のパワーを迅速に引き出せることを意味している.しかし, 効率よく筋が働いたとはいえない.
  • 宗形 芳英, 辻 満
    1994 年 1 巻 1 号 p. 111-115
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    麻酔したネコの歯や口腔粘膜からの感覚情報を伝える上歯槽神経の電気刺激で, 背側部頸筋群を支配する第2頸神経から大きな振幅の反射性神経活動 (三叉一頸筋反射) が誘発された.この反射応答は, 顔面皮膚感覚情報による2種類の応答と同じく弱い刺激で誘発されることから, 歯根膜や口腔粘膜中の触, 圧受容器からの感覚情報が反射の誘発に関わっていることが示された.また, 口腔および顔面皮膚感覚情報によるそれぞれの応答は, 刺激強度の増加で潜時が短縮し振幅と持続時間がともに増大した.種々の刺激条件での潜時と神経活動量との関係を調べ, 神経活動量がほぼ同じ大きさになる条件で各応答の潜時を比較したところ, 口腔感覚情報による応答と上唇部からの感覚情報による応答が極めて類似することが判明した.この結果は, 口腔と上唇部からの感覚情報が頭頸部の反射性の運動制御によく似た役割を果たしていることを示唆している.一方, 麻酔したウサギの場合, 鼻部からの感覚情報を伝える眼窩下神経の刺激では振幅の大きな反射応答が誘発されるものの, 上歯槽神経や上唇部からの眼窩下神経の刺激では非常に小さな応答しか記録できなかった.これらの応答の閾値や潜時に差が認められないことから, ウサギの三叉一頸筋反射には鼻部からの感覚情報による唯一の応答しか存在しないことが示された.
  • 仲西 健樹, 龍田 光弘, 更谷 啓治, 田中 昌博, 川添 堯彬
    1994 年 1 巻 1 号 p. 117-125
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    オステオインテグレーテッドインプラントは骨と直接に結合しているため, 歯のように粘弾性に富んだ歯周組織を有していない.今回, 歯とオステオインテグレーテッドインプラントの機械モビリティをわれわれの開発した動揺度自動診断システムを用いて計測を行い, 両者の粘弾性特性の比較を行って以下の結論を得た.
    1.動揺度自動診断システムを用いてオステオインテグレーテッドインプラント周囲骨の粘弾性特性を3つの力学パラメータで評価できた.
    2.歯ならびにインプラントの (歯根/歯冠) 比と, 力学パラメータ値には相関関係があり, 特に弾性特性を示す力学パラメータに強い相関があった.
    3.オステオインテグレーションが得られたインプラントは天然歯に比べて動揺が小さく, 粘性特性を示す力学パラメータに差が大きく現れた.
  • 鎌田 茂, 藤田 幸弘, 戸田 一雄, 相馬 邦道
    1994 年 1 巻 1 号 p. 127-132
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    ヒト歯根膜感覚の咀嚼運動、特に作業側から中心咬合位への側方運動調節における役割を調べるため, 作業側上顎犬歯の圧刺激に対する, 側頭筋前部motor unitの応答変化について検討を行った.被験者は顎口腔系に異常の認められない者4名とした.圧刺激の大きさは約5009とし, 舌側から唇側方向に加えた.側頭筋motor unitは, 針電極により, 自発放電しているmotor unitを選択的に導出した.上顎犬歯に刺激を加えている間, 上下の歯は接触させず, 下顎の位置は切歯点で約2mm側方へ偏位させた状態を保ち, MKGを用いて被験者にフィードバックさせた.
    その結果, 作業側上顎犬歯の持続的機械刺激に応じて, 反対側側頭筋に持続的な応答が認められた.同側側頭筋の応答は, 反対側側頭筋の応答に比べ著明ではなかった.
    2%Xylocaineによる麻酔により歯根膜感覚を遮断した後, 反対側側頭筋の応答は, 徐々に減少し, ほとんど応答しなくなった.したがって, この反対側側頭筋の応答は, 歯根膜感覚により誘発されたものであることが示された.
    犬歯圧刺激に対する応答を示した自発放電している側頭筋motor unitは, 実際のガム咀嚼時にも活動が認められ, 特に作業側から中心咬合位への側方運動時に関与していることが明かとなった.
    以上より, ヒト作業側犬歯歯根膜感覚入力により反対側側頭筋筋活動を調節する反射機構の存在が示唆された.
  • 伊藤 博子, 坂田 真司, 北條 陽太郎, 〓 柄完, 廣島 正樹, 三間 修司, 端森 崇弘, 高島 史男, 丸山 剛郎
    1994 年 1 巻 1 号 p. 133-139
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究は, 咬合彎曲の形態的, 機能的な重要性を明らかにする目的で, 咬合彎曲の矢状面的および側方的形態に関し, 健常者と顎口腔機能異常患者を対象に分析し, 咬合彎曲の形態的特徴と咀嚼運動との関連性について検討したものである.
    その結果, 咬合彎曲の強さは顎口腔機能異常との関連性を認め, 矢状面的および側方的咬合彎曲の強さが, 咀嚼運動のリズムや安定性および開閉口経路の形態に反映されることが明らかにされた.
  • 長砂 孝, 田中 昌博, 鍋島 竜將, 柏木 宏介, 川添 堯彬
    1994 年 1 巻 1 号 p. 141-150
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    従来, 姿勢の制御は反射機構によって行われていると考えられていた。ところが, 立位で可能な限り素早く上肢挙上運動を行うと, 動筋 (三角筋) のEMG活動の開始に先行して下肢の筋に筋活動が認められる.この動筋活動に先行する姿勢筋の活動は予測的姿勢調節活動 (anticipatory postural activity) と呼ばれ, 中枢プログラムによると考えられている.
    本研究の目的は, 顎機能運動時における予測的姿勢調節の有無を調べることにある.被験: 者に音刺激に可能な限り素早く反応して急速な開口運動を行わせ, 胸鎖乳突筋と顎二腹筋前腹の筋活動開始時期の比較を行った.すると, 胸鎖乳突筋は顎二腹筋前腹に先行して活動を開始する傾向を示した.また, 胸鎖乳突筋の活動潜時は反応時間と高い相関を示した.これらの結果は胸鎖乳突筋の活動が動筋活動によって誘発されたというよりはむしろ急速な随意開口運動の一構成要素であることを示唆するものである.
  • 〓 柄完, 坂田 真司, 北條 陽太郎, 廣島 正樹, 三間 修司, 伊藤 博子, 山田 真一, 瑞森 崇弘, 高島 史男, 丸山 剛郎
    1994 年 1 巻 1 号 p. 151-157
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    歯列弓は各歯の咬頭頂を結ぶ曲線であり, 咬合を形態的に構成し, 補綴臨床において咬合再構成を行う際の重要な要素の1つである.本研究は, 咀嚼運動に及ぼす歯列弓形態の影響について検討し, 歯列弓形態の機能的意義を明らかにしようとしたものである.
    個性正常咬合者100名を選択し, 犬歯尖頭と第一大臼歯を基準として, 第二大臼歯, 小臼歯の座標を推定する重回帰式を求めた.被験者を上下顎の臼歯の相対的な頬舌的位置関係により, 正常群, 上顎第二大臼歯が頬側に位置する群, 上顎第二大臼歯が舌側に位置する群, 上顎小臼歯が頬側に位置する群, 上顎小臼歯が舌側に位置する群に分類した.咀嚼運動の記録はSGG/ASIIIを用い, 咀嚼運動の分析は前頭面, 水平面, 矢状面の3平面における咀嚼運動の開口路, 閉口路を丸山の分類に基づいて行った.歯列弓形態と咀嚼運動径路との関連性を求めた.
    結果として、歯列弓における頬舌的な歯の位置を判定する客観的な評価基準を確立し, これに基づく歯列弓形態の分類が可能になった.また, 歯列弓形態が咀嚼運動に影響を及ぼすことが明らかになり, 歯列弓形態の評価が顎口腔機能の診断に有効であることが示唆された.
  • 深川 聖彦, 藤澤 政紀, 鈴木 卓哉, 石橋 寛二
    1994 年 1 巻 1 号 p. 159-163
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    開閉口運動時, 片側の顎関節に相反性クリッキングを認める男性2名, 女性1名を対象とし, 生体の同一顎関節で前方整位型スプリント装着前後におけるMRIと下顎運動を記録した.
    MRIは1.5T超伝導MR装置と両側表面コイルを組み合わせ, MPGRグラディエントエコー法を用いた.1フェイズの撮像時間を16秒とし, 矢状断および冠状断で両側顎関節部を同時撮像し, シネMRIに編集した.患者の最大開口量に応じて開閉口経路を11または15フェイズに分割し, フェイズごとに開口量を3mmから6mmで増減した.その際, 非磁性体の開口保持器を用いてフェイズごとの開口量を保持した.MRI所見から下顎頭や関節円板の位置および形態について解析を行い, 関節円板の復位および再転位した時点の撮像顎位を求めることにより開口量を決定した.
    6自由度顎運動測定装値を用い下顎運動を測定し, 切歯点および両側顆頭点の開閉口運度を記録した.クリック発生位置に対応する変曲点を顆頭運動軌跡上から求め, 変曲点が生ずる顎位の開口量を求めた.MRI所見および下顎運動測定結果の両者から得られた開口量を比較検討することで以下の結論を得た.
    1.顆頭運動軌跡上の変曲点と, 前方転位した関節円板の復位および再転位の関係を生体の同一被験者で確認できた.
    2.関節円板前方転位の程度が下顎運動に影響を及ぼすことが確認できた.
  • 大川 周治, 篠原 希和, 橋原 真喜夫, 足立 真悟, 操田 利之, 小村 育弘, 吉田 光由, 西中 寿夫, 阿部 泰彦, 津賀 一弘, ...
    1994 年 1 巻 1 号 p. 165-173
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    今回我々は, プロサッカーチーム・サンフレッチェ広島に所属する男性6名を対象として, キック時における咀嚼筋の活動様相をテレメータを用いて記録分析するとともに, 記録された咀嚼筋の活動様相とキック・フォームとの関連性について分析した.その結果, 個人差が存在するものの, キック時における明らかな咀嚼筋筋活動の発現が6名中2名に認められ, しかもキック動作の強弱に同調して咀嚼筋筋活動も変化した.このことから, 咀嚼筋機能とサッカーボールのキック動作との間には関連があることが示唆された.
  • ―振幅密度分析―
    村松 瑞人, 小林 博, 河野 正司, 土田 幸弘, 佐藤 斉, 堀 久至, 平野 秀利
    1994 年 1 巻 1 号 p. 175-182
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    顎機能障害患者の咀嚼筋や胸鎖乳突筋の表面筋電図検査を行うと, ほぼ一定の小さな振幅を持った自発的な持続性の筋放電が安静時, 最大かみしめ直後, あるいは咀嚼の直前直後などに記録されることがある.
    このような自発放電の存在についてはすでに, 筋の過緊張や疼痛との関連について論じられており, 咬合治療により自発旅電が消失するとの報告がある.これらの報告は, 咀嚼筋や側頸筋に見られる自発放電が顎機能障害の症状との関係が深いことを示唆している.我々は, 顎機能障害の症状の程度と自発放電の発生頻度, 出現率には何らかの関連があるものと考える.
    もしそうであれば規定された被験運動を一定の条件で行わせた場合, 一定の検査時間における自発放電の発生頻度をパラメータとすることで顎機能障害の症状の程度の判定, あるいは治療効果の判定をすることはきわめて合理的な検査となりうる.
    実際に自発放電の検査時間内の発生頻度の算出を効率的に行うため, コンピューターで自動的に算出を行ないたい.これには, 自発放電と随意的な筋収縮に伴う筋放電とを自動的に識別しなければならない.現在, 自発放電と随意的な筋収縮に伴う筋放電の識別は, 検者がその波形の特徴に基づいて行っている.そこで我々は自発放電を認識する方法として, その波形の特徴が随意的な筋収縮に伴う筋放電波形とは異なることに注目して新たに振幅密度分析法を開発した.
    振幅密度分析は, 分析対象である信号波形の一定時間内の電圧データを電圧に対する分布密度として解析する分析法である.
    今回はまず, 発信器による波形の特徴が既知である3種類の信号波形に本分析法を用いて分析した.その結果, 振幅密度分析により信号波形の形の違いを判別できることが分かった.次に臨床応用例として正常被験者の最大かみしめ時の筋放電と, 表面筋電図検査にて自発放電が記録された顎機能障害患者の自発放電での分析を行った.さらに振幅密度分布に半値幅, 半値幅1最大振幅という評価値を導入して, 正常な最大かみしめ時の筋放電と自発放電を区別できる事が分かった.
    以上より, 振幅密度分析は, 随意的な筋放電と自発放電を自動的に区別でき, 自発放電の発生頻度の算出, さらには顎機能障害患者の検査, 診断に役立つことが期待される.
  • 荒井 良明, 松山 剛士, 河野 正司, 斎藤 彰, 平野 秀利
    1994 年 1 巻 1 号 p. 183-188
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    咀嚼運動は, 咀嚼筋, 頭頸部の諸筋, 舌筋, その他の口腔軟組織の協調活動によって行われるリズミカルな運動である.咀嚼リズムに同期した筋活動が, 咀嚼筋のみならず胸鎖乳突筋などの頭頸部の筋や舌筋にもみられ, 頭部の位置を制御あるいは駆動する神経筋系が, 下顎運動との協調性を示している報告はある.
    これらの神経筋の協調活動によって, 下顎と共に上顎, つまり頭部もリズミカルな協調運動をしていることが推測できるが, いまだその報告はない.
    そこで本研究では, 咀嚼時の頭部の協調運動の存在を明らかにすることを目的として, 咀嚼運動時における上顎切歯点の三次元運動を, 下顎切歯部の三次元運動と同時に記録した.
    その結果, 咀嚼の各ストローク開始点における上顎切歯点の位置は, 咀嚼の進行に伴い偏位方向が周期的に変化しており, 上顎切歯点の運動には周期性が存在した.
    また咀嚼の一ストロークについてみると, 上顎切歯点の前頭面運動経路は, 下顎と同様に閉曲した弧を描いた.さらに各ストローク終末位の直前0.2秒間の上顎切歯点は, いずれも非咀嚼側へ運動していた.
    タッピング運動において, 上顎切歯点は開口時上方に閉口時下方に運動し, 側方への運動は小さかった.
    以上のような咀嚼時における頭部の協調運動と考えられる上顎切歯点部の運動が観察された.
  • 田中 久敏, 虫本 栄子, 古和田 一成, 八重樫 祐成, 遠藤 義樹, 児玉 厚三
    1994 年 1 巻 1 号 p. 189-193
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    偏位した下顎位の修正記録に有用とされるLeaf gauge法の効果発現機序は十分明らかではない.著者らは先に, 実験的咬合干渉によって咀嚼筋の両側性協調活動を崩壊させた条件下で本法を応用し, その効果を確かめた.結果から, その機序を筋の伸展と筋紡錘の興奮から説明したが, その根拠は十分ではなかった.
    そこで本研究では前報 (虫本ら, 八重樫1994) と同様にLeaf gaugeの厚径と介在時間を変えた条件下で, その介在時の顆頭位と筋長変化をX線的に分析し, 咬みしめ時の咀嚼筋平均電位の消長と併せて検討して, その効果発現の機序を筋の伸展を含めたバイオメカニクス的な観点から明らかにすることを目的とした.
    その結果, 咬合干渉による筋の抑制は1側性に生じ, Leaf gauge法応用効果は抑制を受けた筋のみに発現した.その変動因子は筋によって異なり, 側頭筋後部では厚径が, 同前部では厚径と介在時間が影響を及ぼした.この時の顆頭位はLeaf gaugeの介在によって前方移動し, 咀嚼筋は有意に伸展した.
    以上から, Leaf gauge法応用の効果発現機序に関しては, 伸展に伴う筋感覚のポジティブな情報が中枢を介して抑制されていた筋活動を賦活化したことの関与が推測できた.また, 口腔環境の変化に伴う筋活動の挙動を論じるには下顎位の変化ともあわせて考察することの必要性が示唆された.
  • 千葉 雅之, 田邊 忠輝, 虫本 栄子, 田中 久敏, 中里 龍彦, 玉川 芳春
    1994 年 1 巻 1 号 p. 195-202
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    顎機能異常者の顎関節機能診査パラメーター確立を目的として, 有歯顎ならびに無歯顎の被検者4名に対して, 両側顎関節同時撮像MRIから得られた下顎頭および関節円板動態を両側同期的に定量評価し, 下顎切歯点部の三次元的運動経路と対比させてその機能評価法を検討した.
    その結果, 顎関節MRIによる両側同期的定量評価法は, 左右下顎頭滑走運動の同調性, 下顎頭と関節円板の協調性, 転位した関節円板の復位するタイミングを知るうえで, 有益な方法であり, 下顎運動経路とあわせて評価することで, 顎機能異常者における詳細な病態把握に有効であることが判明した.とくに顎機能異常者の特徴として, 左右側の関節円板および下顎頭の非同期的運動は, 下顎切歯点部における下顎運動経路前頭面観の側方偏位傾向とよく対応していた。
    また本法は, 従来困難とされていた無歯顎者の顎関節動態診査にも有効であることが示唆された.
  • 市岡 典篤, 平井 敏博, 石島 勉, 越野 寿, 笠嶋 茂樹, 横山 雄一, 武田 秀勝
    1994 年 1 巻 1 号 p. 203-207
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    咬合機能が身体運動機能におよぼす影響を明らかにするための基礎データを得ること, 併せて, 身体運動時のクレンチングの発現様相を明らかにすることを目的として, 身体運動時にクレンチングの発現を自覚する12名を被験者とし, 水平的な下顎位の変化がクレンチング強さと咬筋, 側頭筋の筋活動および前腕屈曲筋力と上腕二頭筋の筋活動におよぼす影響を検討した.なお, クレンチング強さの測定には, 下顎を水平的, かつ, 連続的に移動させた場合にも対応可能な感圧導電性シリコーンゴムシートを利用した咬合力測定用センサを新たに開発し, 使用した.
    得られた結果は以下の通りである.
    1) クレンチングの発現には個人差があり, クレンチングが強く出現する者 (強クレンチング群: 58.9~85.3kgf) と弱く出現する者 (弱クレンチング群: 4.9~13.2kgf) の2群に分類された.
    2) 強クレンチング群におけるクレンチング強さは, タッピングポイントで最大値を示し, その標準偏差は最小値を示した.
    3) 前腕屈曲筋力は強クレンチング群, 弱クレンチング群ともにタッピングポイントで最大値を示した.
    4) 強クレンチング群におけるタッピングポイントでは, クレンチング強さと前腕屈曲筋力との間に有意な相関が認められた (r=0.69, p<0.01) .一方, 弱クレンチング群では両者間に有意な相関は認められなかった (r=0.04, p>0.05) .
    以上の結果から, 咬合が身体運動機能の発現に関与していることが強く示唆された.
  • 石垣 尚一, Russell W. Bessette, 丸山 剛郎
    1994 年 1 巻 1 号 p. 209-215
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    顎関節雑音は顎関節の内部状態の指標となり得るものとして様々な方面から検討されてきた.しかし, 臨床においてはclickingやcrepitationなどの主観的な表現方法が一般的であり, 客観的な評価方法が確立されるには至っていない.そこで顎関節造影あるいはMR画像診査により診断の確定した顎関節における顎関節雑音の記録および分析を行ない, 正常顎関節との比較を行った.
    対照群として顎関節撮像により正常と診断された83顎関節, 異常群として復位性関節円板転位, 非復位性関節円板転位, 関節円板穿孔, 骨の退行性病変, のうちのいずれか, あるいは複数の存在が確認された214顎関節を選択した.最大開閉口運動時の顎関節バイブレーションは両側顎関節相当部皮膚表面より一対のpiezoelectric transducerを用いて検出し, 高速フーリエ変換によりpower spectrum density functionを求めた.
    復位性関節円板転位症例では正常顎関節と比べ検討した周波数帯のほぼ全域で高い値を示した.関節円板の復位の時期による差はほとんど見られなかった.非復位性関節円板転位症例では正常顎関節と比べ150Hz以下の帯域でのみ高い値を示したが, 復位性関節円板転位症例と比べほぼ全域で低い値を示した.関節円板穿孔症例および退行性病変症例では正常顎関節と比べ検討した周波数帯のほぼ全域で高い値を示した.後者は前者に比べ400Hzないし450Hzより上の帯域で高い値を示した.
  • 「日本顎口腔機能学会」の発足に至るそして日本顎口腔機能学会雑誌の発刊へ
    丸山 剛郎
    1994 年 1 巻 1 号 p. Preface
    発行日: 1994/12/21
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
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