日本顎口腔機能学会雑誌
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16 巻, 2 号
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特集記事
  • 塩田 清二, 竹ノ谷 文子, 柴 加奈子, 影山 晴秋
    2010 年 16 巻 2 号 p. 85-92
    発行日: 2010/02/28
    公開日: 2011/08/05
    ジャーナル フリー
    新規Gタンパク質共役型受容体(GPCR)リガンドは脳内に広く分布し,摂食・エネルギー代謝調節を行っていることが知られている.本稿では,GPCRリガンドのうち最近発見された神経ペプチドに着目し,とくに摂食調節に関わる脳内神経ネットワーク解析の結果を報告する.これらペプチド性リガンドとしてオレキシン,グレリン,ガラニン様ペプチド,ニューロペプチドWなどについて視床下部におけるニューロンネットワークを概説し,摂食およびエネルギー代謝調節にどのように個々の神経ペプチドが関与しているかを解説し,末梢の脂肪細胞から分泌される摂食抑制物質であるレプチンとの関連性などについて概説する.これらの研究によって肥満を引き起こすメカニズムが解明できればヒトにおける肥満患者の抗肥満治療につながり,ひいては糖尿病や高血圧などの成人病の治療法の開発に有用である.
原著論文
  • 丸山 智章, 林 豊彦, 加藤 一誠
    2010 年 16 巻 2 号 p. 93-101
    発行日: 2010/02/28
    公開日: 2011/08/05
    ジャーナル フリー
    患者の下顎運動機能に適した歯冠修復物の咬合面を設計するためには,患者固有の歯牙滑走運動を考慮する必要がある.しかし,現在市販されている歯科CADにおいて,歯牙滑走運動を再現する方法はまだ確立はされていない.そこで我々は,咬合器を数値シミュレーションし,歯牙滑走運動を再現する機能を開発した.この運動経路は,実際の咬合器と同様に,矢状顆路角Csおよび矢状切歯路角Isを調節することにより決定される.しかし従来は,その設定値を患者に合わせて簡便に調節することはできなかった.本研究の目的は,患者固有の口腔機能に合わせて簡便に自動調整する機能の実現である.
     咬合器シミュレータの設定値を患者ごとに最適化するために,次の方法をとる:1)患者より機能印象を採得;2)機能印象形状に対してシミュレートされた運動経路形状が,できるだけ一致するようにSA(Simulated Annealing)を用いて値を決定;3)シミュレータに値を設定.そこで2つの形状の一致度を定義し,それを評価値として咬合器シミュレータの設定値を最適化する機能を試作した.
     試作した機能の有効性を確かめるために,実際の咬合器から採得した機能印象を用いて,シミュレータの自動調整実験を行った.実験の結果,咬合器の設定値に対して,シミュレータに設定された値との誤差はΔIs = 0.9°,ΔCs = 0.6°であった.これより,提案法により咬合器シミュレータを患者の歯牙滑走運動に合わせて簡便に自動調整できる可能性が示唆された.
  • 武田 勝之, 服部 佳功, 村上 任尚, 岩松 正明, 渡邉 誠
    2010 年 16 巻 2 号 p. 102-111
    発行日: 2010/02/28
    公開日: 2011/08/05
    ジャーナル フリー
    【目的】咀嚼に関連する顎筋全部の筋電図を同時記録することは難しく,咀嚼制御における自由度縮小については,筋シナジーの詳細を含めて,不明の点が多い.本研究では,一部顎筋の筋電図に基づく咀嚼経路の推定可能性を検討し,咀嚼運動制御における自由度縮小の間接的証拠を得ようと試みた.推定に用いた以外の顎筋の活動が推定に用いた顎筋と常に連動して変化する場合にのみこの推定は可能であり,推定可能性は筋シナジーを含めた制御上の自由度縮小の間接的証明となりうると考えられる.【方法】4名の被験者にて片側ガム咀嚼中の下顎切歯点運動経路と両側の咬筋,側頭筋前部ならびに顎下部開口筋群の筋活動を同時記録した.各人200周期分の記録について,開口相,閉口相,咬合相の各相時間を10等分した計31時点を設定し,各時点の切歯点座標ならびに整流筋電波形の振幅値により咀嚼経路と筋活動パタンを記述した.ついでそれらを個々に主成分分析に供し,90%以上の変動の記述に要する主成分を抽出した.さらに筋活動パタンの主成分を入力して咀嚼経路の主成分を出力するニューラル・ネットワーク(ANN)を作成し,100周期分のデータを用いて逆誤差伝播法による学習を行わせ,その成果を残る100周期分のデータで検証した.【結果】ANNの学習の結果,咀嚼経路は筋活動パタンから良好な精度で推定され,全31点における平均推定誤差は,学習用データでは0.7mm,検証用データでは0.8mmであった.最大誤差はそれぞれ1.5および1.8mmで,開口相後期に認めた.【結論】上述の知見は咀嚼における制御上の自由度縮小の間接的証拠を提供すると考えられた.
  • 敦井 智賀子, 荒井 良明, 谷口 裕重, 矢作 理花, 堀 一浩, 井上 誠
    2010 年 16 巻 2 号 p. 112-123
    発行日: 2010/02/28
    公開日: 2011/08/05
    ジャーナル フリー
    下顎タッピング運動や咀嚼時の頭部と下顎の協調運動は中枢性に制御されているという報告があるが,これらの運動に後頸筋群がどのように関与しているかについては明らかにされていない.本研究では,頸筋が顎機能にいかに関わるかを検索することを目的とし,下顎運動と顎筋および頭頸部筋の筋電図の同時記録を行った.
     被験者は全身と顎口腔系に臨床的な異常を認めない健常成人11人(男性,平均年齢29.3歳)とした.記録内容は右側咬筋及び舌骨上筋群,両側胸鎖乳突筋及び後頸筋群の表面筋電図,ならびに頭部及び下顎運動の3次元運動とした.被験者には,頭部無拘束下,90度座位にて椅子に定位させた後,1)咬頭嵌合位ならびに後方歯牙接触位時の記録,2)75/60 Hzの速度での下顎タッピング運動を12秒間,十分に軟化したガム(8.7g)の右咀嚼を12秒間行った際の記録を行った.
     結果として,1)下顎を咬頭嵌合位から後方歯牙接触位に後退させることにより舌骨上筋群の活動とともに胸鎖乳突筋および後頸筋群の筋活動が増加した.2)下顎タッピング時の顎開口量と頭部前後屈量は,いずも咀嚼時のものに比べて有意に大きかった.個体内での運動の安定性を調べた変動係数は,規定された運動であるタッピング時のほうがいずれの値においても小さい傾向があった.3)胸鎖乳突筋および後頸筋群はいずれのリズム下顎運動時にも開口相に明らかな活動を認めた.4)胸鎖乳突筋には,閉口相にもピークが観察された.ことに咀嚼側の活動は,タッピング時と咀嚼時で有意差が認められた.
     結論:胸鎖乳突筋,後頸筋群はともに顎位の決定や頭頸部協調活動に深く関与するが,その協調様式は互いに異なる可能性をもつ.また,咀嚼時の閉口時における胸鎖乳突筋活動は食物粉砕に関わる咬筋活動の上昇に伴い発現するものであると示唆された.
学術大会抄録
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