日本顎口腔機能学会雑誌
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17 巻, 1 号
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原著論文
  • 荒川 一郎, 志賀 博, 小林 義典, 水内 一恵, 渡邊 篤士, 羽村 章
    2010 年 17 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    有床義歯装着患者の咀嚼機能を評価する目的で,有床義歯装着患者の咀嚼運動経路のパターンと安定性を分析した.
     有床義歯装着患者12名にグミゼリーを主咀嚼側で20秒間咀嚼させた時の下顎切歯点の運動をMKGK-6Iで記録した.分析は,はじめに全被験者の咀嚼開始後の第5から第14までの10サイクルについて,運動経路の重ね合わせと平均経路の表示を行い,下顎切歯点の運動経路のパターンを7種類に分類後,各パターンの発現数を調べ,治療前後間で比較した.次いで,運動経路の安定性を表す3指標,すなわち開口時側方成分,閉口時側方成分,垂直成分の各SD/OD(標準偏差/開口量)を算出し,治療前と治療後との間で比較した.
     咀嚼運動経路は,治療前では,種々のパターンを呈していたが,治療後では,ほとんどの被験者が健常有歯顎者の代表パターンを呈し,治療前後間に有意差が認められた.開口時側方成分,閉口時側方成分,垂直成分の各SD/ODは,いずれも治療後のほうが治療前よりも小さくなる傾向を示し,治療前後間に有意差が認められた.
     これらのことから,有床義歯装着患者の咀嚼機能は,歯科補綴治療により改善すること,また運動経路の安定性とパターンの分析による咀嚼機能の評価が応用できることが示唆された.
  • 横山 正起, 志賀 博, 小林 義典, 藤井 重壽, 上濱 正, 平賀 泰
    2010 年 17 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,有床義歯装着患者の咀嚼機能を評価する目的で,有床義歯装着患者の治療前後における咀嚼能力と咬筋筋活動を分析した.
     有床義歯装着患者12名にグミゼリーを主咀嚼側で20秒間咀嚼させた時の咀嚼能力と咬筋筋活動を記録した.グミゼリー咀嚼後のグルコースの溶出量を血糖測定器で測定し,咀嚼能力の指標とした.咬筋筋活動について,咀嚼開始後の第5サイクルから第14サイクルまでの10サイクルのサイクルタイムと積分値を求めた.次いで,サイクルタイムの平均値と変動係数,1サイクル当りの積分値をそれぞれ算出した.得られた結果について,治療前と治療後との間で比較した.グルコースの溶出量と咬筋筋活動の積分値は,治療後のほうが治療前よりも大きく,治療前後間に有意差が認められた.サイクルタイムの平均値と変動係数は,治療後のほうが治療前よりも小さく,治療前後間に有意差が認められた.
     これらのことから,有床義歯装着患者の咀嚼機能は,歯科補綴治療により改善すること,またグミゼリー咀嚼時のグルコースの溶出量の測定による咀嚼機能の評価が応用できることが示唆された.
  • 大石 めぐみ, 足立 忠文, 安富 和子, 中塚 久美子, 山田 一尋, 増田 裕次
    2010 年 17 巻 1 号 p. 11-21
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,新たに開発された多方位口唇閉鎖力測定装置を用いて,永久前歯被蓋完成初期における口唇閉鎖力の特性を把握するとともに,その体格・体力との関連を検討することである.【対象および方法】長野県下の小学4年生児童242名を対象とし,野外調査にて,口唇閉鎖力,身長,体重,握力,咬合力をそれぞれ測定した.口唇閉鎖力は,最大努力での口すぼめ運動時の多方位口唇閉鎖力を測定した.口唇閉鎖力の性差の有無,全8方向における口唇閉鎖力の総和(総合力)と各方向別口唇閉鎖力との関連,対称的方向別口唇閉鎖力間の関連さらに,総合力と体格(身長,体重)ならびに体力(握力,咬合力)との関連について統計学的解析を行った.【結果】男児の総合力は女児に比し有意に大きかった.方向別口唇閉鎖力は,垂直方向,斜め方向,水平方向の順で大きかった.総合力は水平方向を除く各方向別口唇閉鎖力との間に中等度~強い相関が見られた.また垂直方向,水平方向,斜め方向で相対する方向別口唇閉鎖力の間には弱い~中等度の相関が認められ,大きさにも対称性が認められた.女児では,身長,体重,握力,咬合力と口唇閉鎖力との間に弱い相関が認められたのに対し,男児では,体重,握力との間に弱い相関を認めた.【結論】永久前歯被蓋完成初期における口すぼめ時の口唇閉鎖力に方向特異性が認められた.また口唇閉鎖力は随意運動能力と関連があることが示唆された.
  • 寺辺 やよひ, 志賀 博, 小林 義典
    2010 年 17 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,食品の味が咀嚼運動に及ぼす影響を明らかにする目的で,22~28歳(平均25.8歳)の健常男性16名における苦味の程度が異なるグミゼリー咀嚼時の咬筋筋活動を検討した.グミゼリーの苦味の程度は,苦くない,わずかに苦い(0.016%キニーネ添加),苦いグミゼリー(0.032%キニーネ添加)の3種類とし,それぞれを主咀嚼側で20秒間咀嚼させた時の主咀嚼側の咬筋筋活動を多用途計測装置(EMG)で記録した.分析は,咬筋筋活動を観察後,咬筋筋活動の持続時間,間隔時間,サイクルタイム,全サイクルの積分値と1サイクル当りの積分値をそれぞれ算出し,苦味の程度間で比較した.咬筋筋活動の持続時間,間隔時間,サイクルタイムは,いずれも苦くないグミゼリー咀嚼時が最も短く,わずかに苦いグミゼリー咀嚼時,苦いグミゼリー咀嚼時の順に延長する傾向を示し,苦くないグミゼリー咀嚼時と苦いグミゼリー咀嚼時との間に有意差が認められた.また,咬筋筋活動の総積分値と1サイクル当りの咬筋筋活動の積分値は,苦味の程度間に有意差が認められなかった.これらのことから,食品の味の違いは,咀嚼リズムに影響を及ぼすが,咬筋筋活動量には,影響を及ぼさないことが示唆された.
  • 松田 慎平, 山口 泰彦, 三上 紗季, 岡田 和樹, 後藤田 章人, 渡辺 一彦
    2010 年 17 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    目的:Rhythmic Masticatory Muscle Activity(RMMA)は睡眠時にみられる1Hz程度のリズミカルな咀嚼様運動であり,睡眠時ブラキシズムの大部分を占める.本研究の目的は,歯ぎしり患者におけるRMMAのphasic burstの波形の特徴を明らかにすることである.
    方法:被験者はAASMのICSD-2の臨床診断基準を満たしたブラキサー群30人とした.超小型筋電図測定システムを用い,自宅睡眠時の右側咬筋筋活動を記録した.波形の閾値を最大随意咬みしめ(MVC)の20%としてRMMAを選択した後,20%MVC以上のphasic burstのみを波形解析の対象とした.
    結果:被験者毎に算出した睡眠1時間当たりのphasic burst数の平均は19.4,1つのepisode当たりのphasic burst数の平均は6.1であった.被験者毎に算出したphasic burstの平均持続時間の平均は0.72秒であった.個々の波形でみると,持続時間の分布はピークが左方に偏り(最頻値:0.4-0.5秒),右にすその長い様相を呈した.個々の波形の最大振幅は20-30%MVCのものが最も高頻度であり,右すそ広がりの分布を呈した.8割の被験者で最大振幅の平均が50%MVC以下であった.
    結論:RMMAの中に含まれる20%MVC以上のphasic burstの持続時間や最大振幅には最頻値が存在すること,一方で,分布範囲は幅広いことが明らかになり,その多様性が示唆された.
学術大会抄録
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