日本顎口腔機能学会雑誌
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19 巻, 2 号
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特別講演
  • 吉野 賢一
    2013 年 19 巻 2 号 p. 103-110
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/30
    ジャーナル フリー
    我々は視覚情報をもとに食べ物を認知し,その食べ物を口まで運ぶ.一方,多くの動物は嗅覚情報をもとに食べ物を認知し,その食べ物まで口を運ぶ.また,動物では生命維持のために摂食行動を行うが,我々はそれも含めた多様な目的で摂食行動を行う.摂食行動に関わる大脳皮質の働きが,ヒトの摂食行動を動物のそれとは似て非なるものにしているのかもしれない.摂食行動における大脳皮質の働きについては,大脳皮質咀嚼野を含む大脳皮質運動関連領野および感覚関連領野が自発的な咀嚼運動に重要な役割を果たしていることが明らかになっている.しかしながら,高次脳機能の関与が示唆されている先行期や準備期において,大脳皮質の働きは明らかになっていない.本稿では先行期および準備期における高次脳機能の働きについて,視覚情報処理および到達運動や把持運動制御などから得られた脳科学的知見,および著者らの研究をもとに考察する.
原著論文
  • 菱川 龍樹, 山口 泰彦, 斎藤 未來, 三上 紗季, 後藤田 章人, 岡田 和樹
    2013 年 19 巻 2 号 p. 111-124
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/30
    ジャーナル フリー
    【目的】睡眠時ブラキシズム(SB)の筋電図検査における筋活動量の標準化の手段として,最大随意咬みしめ(MVC)時の筋活動量に対する相対値(%MVC値)が使われることが多い.本研究では,覚醒時に発揮される最大咬合力とSBの%MVC値との関係を明らかにするため,両者の相関を求めた.
    【方法】被験者はSBを有する患者29名である.咬筋筋電図を含めた通法の音声・ビデオ付き睡眠ポリグラフ検査を行い,夜間咬筋筋電図波形を抽出した.波形を真のSBと判定された波形(SBB),2連続以下のphasic波形(POE),睡眠時におけるSBB以外の波形(OMB),入眠後の中途覚醒期の波形(WB)に分け,%MVC値の平均(平均%MVC値)および最大の波形の%MVC値(最大波形%MVC値)を求めた.最大咬合力の測定にはデンタルプレスケール®を用いた.
    【結果】SBB,POE,OMB,WB群,さらに全体波形において,最大咬合力が小さい程,平均%MVC値は大きい値を示し,有意な負の相関がみられた.また,最大波形%MVC 値においても同様の傾向を認め,SBB群,POE群,OMB群,および全体波形において有意な負の相関がみられた.
    【結論】SBの筋電図%MVC値表示では,最大咬合力が弱い場合にはブラキシズム時に実際に加わっている力が過大評価,強い場合には過小評価される可能性が示され,表示結果の解釈においてはその点への配慮が必要と考えられた.
  • 渡辺 一彦, 山口 泰彦, 後藤田 章人, 岡田 和樹, 三上 紗季, 菱川 龍樹
    2013 年 19 巻 2 号 p. 125-136
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/30
    ジャーナル フリー
    【目的】食事時を含む日中日常生活時と夜間睡眠時の咀嚼筋活動の正常像を明らかにすることを目的に,超小型筋電図システムを導入して健常者における無拘束終日咬筋筋電図解析を行った.
    【方法】電極・メモリー内蔵データロガータイプのウェアラブル筋電図測定システムにて若年健常者,男性10名女性10名の終日咬筋筋活動を測定した.筋活動を睡眠時,食事時間帯,食事時間帯以外の日中(「日中食事以外」と略)に分類し,基線振幅3倍以上と最大随意咬みしめ(MVC)波形の20%以上の2条件で抽出した.
    【結果】食事時の振幅は他の時間帯より大きいが持続時間が短く,1波形当たりの標準化積分値は小さかった.各時間帯の標準化積分値合計の割合は,睡眠時は基線3倍以上と20%MVC以上ともに約5%,日中食事以外では基線3倍以上で41.1%,20%MVC以上で34.1%,食事時は基線3倍以上で53.3%,20%MVC以上で60.3%であった.食事時,日中食事以外,睡眠時の標準化積分値合計は軟化後ガム自由咀嚼10サイクルの387倍,342倍,32倍に相当していた.また,波形振幅,1波形当たり標準化積分値では,食事時とガム咀嚼時の間に高い相関がみられた.
    【結論】食事時,日中食事以外,睡眠時の各筋活動量の関係,さらに,各時間帯の筋活動量とガム咀嚼時の筋活動量の関係が明らかになり,今後,顎機能異常者の終日咬筋活動を解明していく際の参照値として重要と考えられた.
  • Tomio Inoue, Akiko Yamaoka, Shoji Hironaka, Shiro Nakamura, Kiyomi Nak ...
    2013 年 19 巻 2 号 p. 137-144
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/30
    ジャーナル フリー
    Feeding behavior drastically changes from suckling to chewing during the postnatal period. Thus, it is possible that the firing properties of jaw-closing motoneurons (JCMNs), one of the final common pathways in the oro-motor system, are also altered during the postnatal period. We examined the repetitive firing properties of JCMNs in developing rats from an early postnatal stage to a post-weaning stage using intracellular recording techniques. Firing frequency adaptation was observed within the first four spikes in a spike train. The neurons were classified into two groups according to the firing patterns subsequent to the first four spikes: neurons with a constant or slightly decrementing firing pattern (type I) and neurons with an incrementing firing pattern (type II). The percentage of type I neurons increased with age. In more than 50% of the neurons in each age group except for the group at 10-15 days of age, an extra spike was produced from the post-spike afterdepolarization (ADP) of the 1st spike in a spike train, leading to a high firing rate for the first inter-spike interval (1st ISI). The incidence of an extra spike also increased with age. The firing rate for the steady-state was high in JCMNs, even at 4-9 days of age, and approximately 50% of the neurons at this age fired at higher than 50 Hz. These findings demonstrate that JCMNs can fire at a high rate, even in the early postnatal period, and the firing rate for the 1st ISI further increases with age. These changes may contribute to the transition from suckling to chewing.
  • 草野 寿之, 奥津 史子, 松川 高明, 豊田 有美子, 根来 理沙, 頼近 繁, 濵坂 弘毅, 眞木 信太郎, 遠藤 舞, ...
    2013 年 19 巻 2 号 p. 145-156
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,純音ないし音楽による聴覚刺激が味覚機能,特に甘味と塩味に対する味覚の感受性に及ぼす影響を明らかにすることである.
     実験1では,被験者として健常有歯顎者22名を選択し,純音が甘味および塩味に対する味覚閾値に及ぼす影響について検討を行った.聴覚刺激に用いた被検音は10Hz,4,000Hz,20,000Hzの3種類の純音とし,音の大きさは50dBに設定した.味覚閾値の検査に用いる味質は甘味(スクロース)と塩味(塩化ナトリウム)の2種類とし,各味質の濃度は0.005M,0.010M,0.050M,0.100Mとした.聴覚刺激の負荷は15分間とし,味覚閾値の検査は全口腔法を用いた.
     実験2では,被験者として健常有歯顎者22名を選択し,音楽が甘味および塩味の味覚に及ぼす影響についてVASを応用して検討を行った.聴覚刺激に用いた被検音には,3種類の音楽(1)癒しのモーツァルトBEST,(2)refine 身近にできる音楽療法,(3)究極の眠れるCD を用いた.味覚閾値の検査は実験1と同様に行い,さらに自覚した味の強さをVASによりスコア化し,味覚の感受性として評価した.また,今回用いた音楽の嗜好に関するアンケート調査を同一被験者に行い,音楽刺激前と後との間における味覚VAS値の差を嗜好別に算出し,音楽の嗜好が味覚の感受性に及ぼす影響についても検討した.
     その結果,純音による聴覚刺激では味覚機能への影響は認められなかったが,音楽による聴覚刺激では味覚機能,特に甘味における味覚の感受性に影響を及ぼすことが示唆された.さらにその音楽に対する嗜好は甘味における味覚の感受性に影響を及ぼすことが示唆された.
学術大会抄録
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