日本顎口腔機能学会雑誌
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2 巻, 1 号
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  • 三浦 宏之, 長谷川 成男, 加藤 均, 古木 譲, 益田 高行
    1995 年 2 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    機能時に発揮される咬合力は歯牙, 歯周組織さらには顎骨にまで及び, それぞれの部位にひずみを生ずる.したがって, 機能時の歯牙の動態を明らかにすることは重要であり, Schöhl (1960) , Behrend (1974, 1978) , Siebert (1980) , 加藤 (1981, 1982) , 三浦 (1985) らによって機能時の歯牙の変位経路が測定されてきた.しかしながら, 三次元測定は容易ではなく, いまだその詳細については明らかになっていない.そこで, 機能時の歯牙の変位経路を生理的に近い条件下で測定する目的で三次元微小変位計M-3型を新たに開発した.
    トランスデューサにはマグネセンサを使用した.変位計はマグネセンサの検出ヘッド, 永久磁石, 精密ユニバーサル機構, 測定子および定位装置固定板から構成され, 総重量は48.79である.変位計は前歯部唇側に固定されたシーネを介して定位される.シーネは厚さ2mmのアルミ板および即時重合レジンにて作製され瞬間接着剤にて前歯部唇側に固定される.変位計は測定子部以外が全て口腔外に設置されるために生理的な咀嚼運動を妨げることなく, 口腔内環境 (温度, 湿度) の影響を受けることもない.直径0.3mmの測定子先端を被験歯頬側面中央部に即時重合レジンにて固定することにより, 測定子先端の三次元的な動きは精密ユニバーサル機構を介して各検出方向の永久磁石の動きに正確に変換される.
    三次元微小変位計M-3型は接触型なので測定圧を避けることができない.この測定圧は歯牙の生理的な変位経路に影響を及ぼすことが考えられるので可及的に小さくしなければならない.本変位計では精密ユニバーサル機構部にピボットを応用することにより, 測定圧を0.4g以下とした.変位計の各検出ヘッドは相互干渉もほとんどなく±200μmの範囲内において±2%以下の精度でリニアな出力を示し, 機能時の歯牙の変位経路の三次元測定が可能となった.
  • ―頭蓋下顎機能障害患者の顎関節雑音の定量的評価―
    志賀 博, 小林 義典, 中島 邦久, 三輪 雅彦
    1995 年 2 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    頭蓋下顎機能障害 (CMD) 患者における顎関節音の性状を客観的に評価する目的で, 可聴音を有するCMD患者20名 (A群) , 雑音を自覚し, 術者が触知できる音を有するCMD患者20名 (B群) , 雑音を自覚せず, 術者が触知できる音を有するCMD患者20名 (C群) , 正常者40名 (D群) について, 開閉口運動時の顎関節音をコンタクトマイクロフォンで記録後, 周波数分析を行い, 被験者群間で比較し, 以下の結論を得た.
    1.CMD患者群のパワースペクトルは, A群, B群では100Hz以上の帯域にも周波数成分の強調がみられたが, C群では100Hz以下に周波数成分の強調がみられる者が多かった.また, A群, B群, C群の川頁に高周波成分の減少が認められた.他方, D群のパワースペクトルは, ほぼ100Hz以下に限定されたパターンを示し, 周波数成分の強調がみられる者が少なかった.
    2.パワースペクトルの累積100%値と累積80%周波数値は, A群が最も大きく, 以下B群, C群, D群の順に小さくなった.累積100%値では, A群とB群との間, C群とD群との間を除く他のすべての各2群間に, 累積80%周波数値ではすべての各2群間にそれぞれ有意差が認められた.
    3.以上のことから, 顎関節音のパワースペクトルのパターン, 累積100%値, 累積80%周波数値の分析は, CMD患者の顎関節雑音の性状の違いを定量的に評価できることが示唆された.また, これらの3指標のうち, 累積80%周波数値は, 特に有効な指標となることが示唆された.
  • 田村 康夫, 堀川 容子, 林 努, 吉田 定宏
    1995 年 2 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    満期正常分娩で出生した健康な乳児25名 (平均週齢, 13.0±4.5週) を対象とした.口腔内の動きが観察できるCCDビデオカメラと吸引圧の変化 (吸啜波) を測定する圧センサを内蔵した哺乳瓶を作製し, 吸啜運動時における舌の動きと, 顎運動と口腔周囲筋筋活動および吸引圧との協調について観察を行った結果, 以下の結論を得た.
    1.全被検者とも吸啜中舌は蠕動運動を示していた.
    2.吸引圧と舌運動および顎運動には相関が認められ, 下顎は舌中央部に隆起が生じるまで挙上し, その間乳首高径は減少し, 吸引圧は陽圧方向を示した.顎は閉口後, 後退し舌中央部の隆起は後方に移動し, この時吸引圧は陰圧方向を示し, そして開口するパターンを示した.
    3.側頭筋と咬筋は顎が閉口し吸引圧の陽圧相で活動を示し, 口輪筋と舌骨上筋群は陽圧相と陰圧相の両者にかけて活動した.口輪筋は陽圧相で活動が大きく, それに対し舌骨上筋群は陰圧相で活動が著明であった.
    以上より, 吸啜運動時において乳児の舌および顎運動と口腔周囲筋の活動と吸引圧との間には一定のパターンで協調していることが示唆された.
  • 木戸 寿明, 渡部 厚史, 河野 正司, 斎藤 彰
    1995 年 2 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    咀嚼運動は, 上下顎の対合する歯と, 口腔周囲軟組織との協調運動により, 食物を粉砕し, 口腔内に取り込み, 嚥下可能な食塊の形成を行う一連の運動であり, 咬合面周囲での食物の動態を把握することは咀嚼機能を理解する上で不可欠なことである.そこで本研究では咀嚼中の食物の粉砕に伴う動態を把握するとともに, その動態と咬合面形態との関連性を検討することを目的とした.
    食物動態を測定するために新たな方法を考案した.すなわち, 被験食品としてピーナッツを用い, 規定回数咀嚼させた後, 頬側に貯留するピーナッツと, 舌側に貯留するピーナッツを別々に回収し, その各々の重量と, 粉砕度について測定する方法である.その結果, 頬・舌側貯留率に関しては咀嚼の進行に伴い頬側貯留率は順次減少し, 逆に舌側は増加すること, 更に, 粉砕度に関してはいずれの咀嚼回数においても頬側よりも舌側が高いことが判明した.
    最近, 機能運動中の上顎第1大臼歯に存在する圧搾空間において食物の圧搾, 粉砕が行われると主張されている.この考えに立脚すると, ピーナッツの動態を規定する因子の一つとして圧搾空間の機能が推測される.そこで, 実験的に天然歯を模倣した咬合面と頬側咬頭を削除した咬合面で食物動態の比較検討を行った.その結果, 前者に比べ, 後者では頬側貯留率が増加するとともにその中に占める小さな粒子の割合が増加する傾向が認められ, 圧搾空間の機能的意義の一端を窺い知ることができた.
  • 高田 佳之, 中島 民雄, 山田 好秋
    1995 年 2 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    咀嚼筋の緊張を評価する目的にて咬筋における緊張性振動反射 (TVR) について筋電図学的に研究した.被験者は咀嚼筋に自発痛, 圧痛を自覚しないボランティアの成人男性16名 (20-45才) とし, 座位にて頭部を固定し, バイトブロックを介して開口位にて実験を行った.振動刺激 (約15m/s2, 160Hz) は, オトガイ正中に20秒間加えた.筋電図は咬筋より表面電極で双極性に誘導, 記録し, 任意に設定した値 (TVR index) にて定量的に解析した.咬合力はDental Prescale50Hを用いて最大噛みしめ時の咬合接触点の圧を計測した.16名の被験者のTVR indexは最大22.7%, 最小0.9%, 平均7.7%と個体差は大きく, このうちクレンチングの習慣のある被験者は無い被験者に比べ有意に高い値を示した.γ運動神経活動を抑制することが知られている塩酸トルペリゾン (100mg) の投与で, TVR indexは減少し, 2時間後に最小となった.臼歯部の咬合接触点での圧とTVR indexの間には負の相関 (r=-0.504, p<0.05) を認めた.
    TVRは咀嚼筋の機能の一つとして, その緊張を評価するのに有効であると考えられた.
  • 柿谷 幸男, 清水 真知男, 山内 六男, 長澤 亨
    1995 年 2 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    従来から咬合状態を筋電図学的に客観的に評価しようとする試みがなされている.すなわち, 安静時や咬みしめ時の筋放電の大きさや左右差, あるいはsilent periodや緊張性頸反射の測定などが行われている.最近簡易筋電計“マッスルバランスモニタ” (以下MBM) が市販された.本器は咬合の異常を左右の筋の活動の差から得た非対称性指数 (以下AI) によって視覚的に表現できるといわれている.そこで本研究ではMBMから得られるAIと筋電図から得られる筋緊張の程度との間にどのような関連があるのかについて検討した.
    被験者には20歳代の有歯顎者20名を用いたが, 咬合関係や顎関節の異常については特に限定しなかった.これら被験者について50%AI, 安静時筋放電, 最大咬みしめ時筋活動, 緊張性頸反射およびT-Scanによる咬合接触歯数を測定し, それらの関連について検討した.
    咬筋の50%AIと安静時筋放電, 咬みしめ時筋放電, 前屈時および後屈時の緊張性頸反射の左右差との間には有意な正の相関が認められた.また, 50%AIの正負とこれらパラメータの片側優位性はよく一致した.一方, 接触歯数の左右差と50%AIにも相関がみられたが, 左右差の正負が異なる被験者もいた.
    以上, MBMより求めた50%AIと従来より用いられてきた筋緊張を表す筋電図データとはよく相関することが判明した.しかし, 接触歯数の左右差とは必ずしも一致しないこともわかった.
  • ―犬歯に装着した金属ガイドによる変化―
    菅沼 岳史, 山上 芳雄, 日高 基雄, 新谷 明幸, 古屋 良一, 川和 忠治
    1995 年 2 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    開咬を伴う顎機能異常患者に対して, 犬歯に金属ガイドを装着し咀嚼筋活動への影響を検討した.患者は, 習慣性閉口位で大臼歯部のみに咬合接触があり, 側方運動時に作業側, 平衡側の両方が接触滑走する.緩, 急の金属ガイドは, 側方運動時に両側大臼歯が離開するように製作した.咬筋および側頭筋前腹のEMGとMKGを, 側方滑走運動, 側方限界運動およびガム咀嚼時において測定した.
    その結果, 犬歯部にガイドを装着することにより, 作業側筋活動は減少し, 側方限界運動は安定する傾向にあった.しかし, ガイドの傾斜の差によって筋活動の大きな変化はなかった.緩いガイドは咀嚼リズムを安定化させ, 筋活動の左右差は, ガイド装着前および急なガイドを装着したときよりも小さかった.
  • ―咬合面形態への適合性に対して―
    篠崎 直樹, 長谷 誠, 石田 哲也, 相馬 邦道
    1995 年 2 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    咬合面に形態的に適合し, 咬合力を分布として測定可能な咬合圧センサを作製した.感圧素子としての感圧導電ゴムは物性として柔軟であり, 複雑な形態に適合可能であるという利点を有する.そこで, この利点を活かすためにセンサを構成する電極に改良を加えた.すなわち, コイル状の伸縮可能な導線を電極として用い, 感圧導電ゴムのもつ形態的な自由度を規制しないようにした.
    ついで, 本センサを用い基礎的検討及び臨床応用を行った.基礎的検討としては, 剛体である金属球をセンサ表面に押し込んだ際のセンサの変形表面形状と金属球の既知表面形状との比較試験を行った.また, 各測定点から出力される値が隣接する測定点における圧力の影響を受けることがないかどうか, すなわち, 出力値の独立性について調べた.その結果, センサの表面は金属球の表面形状にほぼ近似した変形を示し, 形態適合性は良好であった.また, 各測定点からの出力値の独立性も良好であった.また, 臨床応用として大臼歯部の咬合力を測定したところ, 時間の経過に伴う咬合力の推移を分布荷重をして捉えることができた.
  • 1995 年 2 巻 1 号 p. 65
    発行日: 1995年
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
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