日本顎口腔機能学会雑誌
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20 巻, 1 号
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原著論文
  • 村上 任尚, 岩松 正明, 佐藤 智昭, 服部 佳功
    2013 年 20 巻 1 号 p. 12-21
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    ヒトの咀嚼経路には大きな個人内,個人間変動を認める.本研究の目的は,咀嚼経路の個人内変動における特徴を明らかにするとともに,その特徴について個人間での類似性の有無を検討することにある.健常成人男子12名において右側片側ガム咀嚼時の下顎切歯点の咀嚼経路を記録した.各咀嚼周期の開口相と閉口相それぞれに所要時間を20等分する計41の計測時点を設け,各時点の下顎切歯点の3次元座標,計123変数により,その周期の咀嚼運動経路を記述した.各被験者について記録が古い順に選んだ200周期の咀嚼経路をこの方法で記述して分散共分散行列に基づく主成分分析に供した.各主成分が咀嚼経路に及ぼす影響は,固有ベクトル行列の逆行列を用いて経路の再構成を行って視覚化した.その結果,いずれの被験者においても第1主成分は経路の大きさの変化に関連し,スクリープロットにより選ばれたその他の主成分には前頭面ならびに矢状面内における開口方向,開閉口路間の幅径の変動に関与するものが含まれた.上述4主成分の寄与率の合計は,各被験者で74~87%に及んだ.さらに全被験者の咀嚼経路を合わせた計2,400周期について同様の解析を行ったところ,選ばれた7主成分中の4主成分は,先述した4種の主成分と経路への影響が定性的に類似し,その寄与率の合計は84%であった.上述の知見は,咀嚼経路の著しい個人差にも関わらず,咀嚼経路の調節機序が個人間で共有される可能性を示唆するものと考えられた.
  • 真柄 仁, 林 宏和, 神田 知佳, 堀 一浩, 谷口 裕重, 小野 和宏, 井上 誠
    2013 年 20 巻 1 号 p. 22-32
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,嚥下障害のある患者と健常者の舌骨運動時間と距離,舌骨位,および食塊移送のタイミングを比較することにより,嚥下障害における病態の一つと考えられる舌骨位の下垂が嚥下機能にどのように影響しているかを検証することを目的とした.
     対象は,嚥下障害を主訴として来院され嚥下造影検査を行った65名の患者(以下患者群),対照として健常被験者10名(以下健常群)とした.得られたデータから,舌尖の運動開始を基準に舌骨運動・食塊移送の時間経過を計測し,また,第四頸椎前下縁を基準として舌骨位を計測し,患者群と健常群で比較を行った.
     患者群では食塊移送時間が口腔,咽頭ともに延長しており,更に食塊の咽頭流入は嚥下反射惹起を示す急速な舌骨挙上と比べ有意に先行していた.第四頸椎を基準とした場合,患者群と健常群に明らかな舌骨位の違いは認めなかった.疾患別の検索を行うと,嚥下反射以降は各疾患とも類似した舌骨の動きが認められたが,嚥下反射前は複雑な軌跡を示した.いくつかの疾患では,嚥下反射惹起前の舌骨の移動距離と移動時間に正の相関関係が認められたため,舌骨位が嚥下反射惹起遅延に影響を与えている可能性が考えられた.
  • 岡田 和樹, 山口 泰彦, 小松 孝雪, 後藤田 章人, 三上 紗季
    2013 年 20 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    【目的】頭位と咬筋組織血流の関連性を明らかにすることを目的に,頭部傾斜時における咬筋組織内の血行動態の変動を解析した.
     【方法】被験者は,顎口腔系に異常が認められない健常者16名とした.咬筋組織血流の測定には3波長型近赤外分光血流計,頭部の傾斜角度の測定には頭部傾斜角測定装置を用いた.頭部の傾斜は前傾および側方傾斜とし,それぞれ10°,20°,30°傾けたときの咬筋組織内総ヘモグロビン量(Hb)と酸素飽和度(StO2)を測定した.また,最大咬みしめ前後の咬筋組織血流の測定を行い,頭部傾斜時の変動と比較した.
     【結果】前傾,側方傾斜時におけるHb変化率は,傾斜角度が大きくなるに従い増加する傾向を示し,傾斜角度が30°では咬みしめ終了後の最大変化率の約半分の値を示した.前傾時におけるStO2変化率は,安静時と30°傾斜時の間に有意な増加がみられ,咬みしめ終了後の最大変化率の4割程度の値を示した.側方傾斜時のStO2では有意な変化は認めなかった.
     【結論】頭部の傾斜により咬筋組織血流が変化することが明らかになり,血流測定時には被験者の頭位を一定に保つなど頭位の条件への配慮の必要性が示唆された.
特別講演
  • 泰羅 雅登
    2013 年 20 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    視覚情報は脳の2つの視覚経路で処理される.視覚情報はその過程で,形,色,奥行き,動きの4つの要素に分解され解析される.しかし,脳はこれらの情報を,コンピュータのように詳細に分析するのではなく,適当に解釈を加える.その結果,様々な錯視が体験されることになる.
  • 谷米(長谷川) 温子
    2013 年 20 巻 1 号 p. 6-11
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    嚥下障害者(patients with dysphagia)はしばしば誤嚥する(aspirate)ので,増粘剤やゲル化剤が嚥下困難者用介護食として用いられる.しかし,介護食として適した食品の特性を決定するためには,ヒト咽頭部(pharynx)における食塊(bolus)の流動性を定量的に把握することが重要である.超音波パルスドプラー法は,よく知られているVideofluorographyより人体に安全で,咽頭部における食塊の流速分布が得られる.流速スペクトルからは,食塊の最大流速Vmaxが計算できるが,嚥下障害者が誤嚥しやすい水のVmaxは,誤嚥しにくいといわれるヨーグルトの3倍程度あった.このことから,嚥下障害者にとっての誤嚥の危険性がVmaxの値から予想できると考えられる.
第50回記念学術大会抄録
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