日本顎口腔機能学会雑誌
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3 巻, 2 号
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  • 久野 昌隆, 相馬 邦道
    1997 年 3 巻 2 号 p. 115-119
    発行日: 1997/01/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, ヒトの咬合終末期における咀嚼運動経路の形成を力学的に考察することにある.これに対して, 我々は, 咀嚼される食塊に発生する咬合エネルギーを指標として咬合状態を形態的に評価する方法を開発した.本報告においては, 本法を咀嚼機能の運動学的側面に対する検討に適用した.すなわち, 咀嚼運動経路上で, 特に, 咬合終末期に, 作業側から咬合終末位に向かって強い側方運動要素 (Gysiの第IV相) が現れることに対して, その力学的根拠を考察した.実験方法は次の通りである.すなわち, まず, 歯列模型より, 下顎第一大臼歯とそれに対咬する上顎第一大臼歯および第2小臼歯を分離し, それらが緊密に咬合するように再排列した.つぎに, 通法により, これらの表面形状と位置関係を測定し, それを基に, 咬合終末期における12の上下顎第一大臼歯の位置関係を, 頬舌および垂直的に想定した.それぞれの位置関係ごとに, CADにより, 上下顎歯モデルおよび上下顎歯間に食塊モデルを作製した.これらに対して, 有限要素法を適用し, 食塊モデルの各節点にかかる, ミーゼス応力 (咬合エネルギーの一部として発生する剪断ひずみエネルギーの平方根) を算出した.この際, 荷重条件としては, 咬合終末期における閉口筋の作用方向を, 咬合平面に対して水平および垂直方向に分解し, 下顎第一大臼歯の最下部に対して, それぞれの方向に0.01mmの強制変位を与えた.解析結果より, 垂直荷重時に対する水平荷重時のミーゼス応力の大きさの比を求めた (=P) .
    その結果, P値は垂直的に閉口が進むにつれて大きくなった.また, 同値の変化率は閉口が咬合終末位に向かって水平的に進むにつれて大きくなった.これにより, 食塊の破壊の効率を高めるとの目的に対して, 咬合終末期において閉口筋の作用方向はその水平成分を増加させることが示唆された.これに伴い, 咀嚼運動経路は, 作業側頬側から咬合終末位方向へと水平成分を増加させて形成されているものと考えられた.このことより, ヒト前頭面咀嚼運動経路における第IV相の出現の力学的根拠の一端が示されたものと考えられた.
  • 山辺 芳久, 藤井 弘之
    1997 年 3 巻 2 号 p. 121-129
    発行日: 1997/01/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    下顎運動時における頭部, 頸部そして体幹の動きの観察に加速度計を応用できる可能性について検討した.頭部および頸・体幹部が無拘束な直立椅座位で, 下顎tapping運動時の1) 頭部と下顎の上下方向における動揺, 2) 頭部, 下顎と頸・体幹部の前後方向における動揺を, 圧電型加速度計を用いて測定した.
    加速度計は前額部, オトガイ部そして第6頸椎 (C6) , 第12胸椎 (T12) および第3腰椎 (L3) の棘突起相当部に貼付した.加速度波形は下顎運動曲線 (MKG) と同時記録し, 以下の結果を得た.
    1. オトガイ部で測定した加速度波形の原波形には, 下顎tapping運動の個々のストロークには対応しない低周波成分と, 咬合接触時点に同期して現れる高周波成分が重畳していた.前者はほぼ2Hz以下の体動成分, 後者は100Hz以上の歯の接触振動成分と考えられた.
    2. 2Hz以下および100Hz以上を遮断したオトガイ部加速度波形の変化は, 開・閉口相初期の下顎運動曲線の変化と時間的に対応し, かつ, 変位の方向も一致した.
    3. 下顎開閉運動に伴う頭部・頸椎下部および体幹部の動揺を観察した.これら動揺は記録部によって特定の方向に集中する傾向があった.
    4. 以上のことから, 加速度計を用いて下顎開閉運動時の体動, 特にその方向を観察できることを確認し
  • 大竹 博之, 河野 正司, 松山 剛士, 土田 幸弘, 荒井 良明, 金田 恒
    1997 年 3 巻 2 号 p. 131-138
    発行日: 1997/01/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    咀嚼運動や下顎のタッピング運動時には, 下顎運動に協調して, 下顎と同一の周期を示す頭部運動が存在している.その中でタッピング運動に観察される頭部運動は, 開口時には上方へ, 閉口時には下方へと相対する運動方向を示し, その垂直的運動量は開口量の約10%であることが報告されている.
    一方, 顎機能障害症例においては, 種々の下顎運動の障害が存在することから, 下顎の運動に附随した頭部運動が存在しているか否か大いに興味があるが, いまだその報告はない.
    そこで著者らは, 顎機能障害症例の行う習慣的タッピング運動時に, 下顎運動と協調した頭部の周期的な運動の存在の可否を検索し, 正常者の頭部運動と比較することとした.
    習慣的タッピング運動の測定に際しては, 頭部固定装置やヘッドレストを一切用いず, 頭部を拘束することなく行った.また, 顎機能障害症例の行うタッピング運動は開口量および頻度の指示を一切行わず, 「リズミカルに開閉口運動を行って下さい」と指示し, 被験者が楽に行えるものとした.
    その測定結果において, 正常者では見られなかった頭部の運動様相が観察された.その運動について上下成分を時系列描記して, その波形を単峰性, 多峰性, 無峰性に分類し, それぞれの出現率を求めた.
    その結果,
    1. 顎機能障害症例における頭部運動は, 下顎との協調性を示す単峰性の運動が79%を示し, その他は多峰性あるいは無峰性を示し, 正常者とは異なった.
    2. 臨床検査に見られる痛みに関する症状と頭部運動の出現率の低下には関連がみられた.
    3. 正常者に比較して顎機能障害症例では, 頭部運動の出現率が低いことから, 頭部運動は下顎の機能運動を円滑に遂行するための随伴運動であると考えられる.
    以上の結果より, タッピング運動時の頭部運動様相は顎機能障害症例と正常者で異なり, 頭部運動が下顎の機能運動に協調した運動であることが確認できた.
  • ―クレンチングの強と咬合力との関係―
    小林 義典, 志賀 博, 田中 彰, 鷹橋 雅幸, 王 孝
    1997 年 3 巻 2 号 p. 139-146
    発行日: 1997/01/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    クレンチングの強さとデンタルプレスケールで表示された咬合力との関係を明確にする目的で, デンタルプレスケールを用いて異なるクレンチングの強さにおける歯種別にみた咬合力の分布および被験者別にみた咬合力について分析し, 以下の結論を得た。
    1. 20%MVC, 40%MVC, 60%MVC, 80%MVC, 100%MVCの各クレンチング時における筋活動量と咬合力は, クレンチングの強さの増大に伴ってほぼ比例的かつ直線的に大きくなった。
    2. 20%MVC, 40%MVC, 60%MVC, 80%MVC, 100%MVCの各クレンチング時における歯種別にみた咬合力は, いずれも第2大臼歯で最も大きく, 以下第1大臼歯, 第2小臼歯, 第1小臼歯, 犬歯, 側切歯, 中切歯の順であった。
    3. 20%MVC, 40%MVC, 60%MVC, 80%MVC, 100%MVCの各クレンチング時における標準化した咬合力の変動係数は, それぞれ17.4%, 9.7%, 8.3%, 8.2%, 11.8%であり, 20%MVCの値が最も大きく, 以下100%MVC, 40%MVC, 60%MVC, 80%MVCの順に小さくなった。
    4. 以上のことから, 歯種別の咬合力の分布は, クレンチングの強さに関係なく一定のパターンを示す傾向にあること, またプレスケールで表示される咬合力は, 40%MVC~80%MVCのいわゆる中等度のクレンチング時に最も個人差が少ないことが明らかになった。
  • 早崎 治明, 中田 志保, 山崎 要一, 西嶋 憲博, 岡本 篤剛, 峰松 清仁, 中田 稔
    1997 年 3 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 1997/01/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 下顎の重要な機能である咀嚼運動の終末路において, 上下の歯牙が接触しながら行われる滑走運動の範囲を計測する方法を開発することにある.25歳の個性正常咬合を有する男性を被験者として東京歯材社製TRIMETを用いて下顎運動を計測した.この装置は100Hzで下顎運動を計測することができる.被験者に30秒間の下顎の任意な滑走運動を4回計測した行わせた.これにより12000顎位を得た.これを使用して, 下顎切歯点の咬頭嵌合位を原点とした前方15mm, 後方13mm, 左右方向各々14mmの範囲における下顎滑走運動面を得た.また, その間隔は0.1mmとした.下顎滑走運動面上のメッシュの各点について, 水平面上で距離が最小距離となる顎位を12000顎位の中から探索し, その最小となった顎位のZ座標値をそのメッシュのZ値とした.この方法により, 下顎の任意の点で作成することが可能である.
    その結果, この下顎滑走運動面と咀嚼運動の終末路を比較することにより, 終末路での滑走運動範囲を計測することができ, この被験者のガム自由咀嚼運動の滑走範囲を計測したところ, 閉口時に, 約0.4mm, 開口時は約3.4mmであった.
    この下顎滑走運動面は, 下顎運動やその範囲を視覚化できることから下顎運動の理解や診査・診断に有用であると考えられた.
  • ―上腕二頭筋, 大腿直筋との比較―
    笠嶋 茂樹, 越野 寿, 平井 敏博, 石島 勉, 木花 八友
    1997 年 3 巻 2 号 p. 153-159
    発行日: 1997/01/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究では, 咀嚼筋の疲労特性を明らかにすることを目的とした.正常男性5名の咀嚼筋と四肢筋を被験筋とし, 最大咬みしめ, 随意最大肘関節屈曲, 随意最大膝関節伸展を行わせた時の筋力を, デンタルプレスケールシステムとウェイングインジケータとロードセルからなる装置で記録した.同時に, 運動中の咬筋, 側頭筋, 上腕二頭筋, 大腿直筋の筋活動をマルチテレメーターシステムにより記録した.記録の採取は, コントロールとして, 実験開始時に5秒間の各々の運動を行わせ, 1回目の記録を採取した (Cont) .この10秒後に30秒間の疲労負荷のための各々の運動を行わせ, その10秒後に, 2回目の5秒間の各々の運動中の記録を採取した (F1) .さらに, 同様の過程で, 3回目 (F2) , 4回目 (F3) の記録を採取した.その後, 10秒経過後 (R1) , 30秒経過後 (R2) , 1分経過後 (R3) , 3分経過後 (R4) , 5分経過後 (R5) に, 5秒間の各々の運動を行わせ, 記録を採取した.筋電図記録の分析には, 筋電図積分値とピーク周波数を用いた.また, 筋活動電位を機械的仕事に変換する効率を示すパラメータとして, 筋力/筋活動量比を用いた.
    得られた結果は, 以下の通りである.
    1) 最大咬合力, 随意最大肘関節屈曲筋力, 随意最大膝関節伸展筋力は, 繰り返し試行により, 徐々に低下し, 疲労回復過程においては, 徐々に増加した.
    2) 咀嚼筋における疲労とその回復の発現は, 上腕二頭筋, 大腿直筋のそれらよりも早かった.
    3) すべての筋において, 疲労に伴うピーク周波数の低周波帯域へのシフトと回復による高周波帯域へのシフトが認められた.
    4) 咀嚼筋においては, 疲労に伴う筋活動量の減少傾向が認められた.
    5) 咀嚼筋における筋力/筋活動量比は上腕二頭筋, 大腿直筋のそれよりも高値を示した.
    これらの結果から, 咀嚼筋の疲労特性は, 上腕二頭筋, 大腿直筋のそれと異なることが示唆された.
  • 谷 斉子, 奥 猛志, 舛元 康浩, 豊島 正三郎, 朝隈 恭子, 中尾 さとみ, 森主 宜延, 小椋 正
    1997 年 3 巻 2 号 p. 161-167
    発行日: 1997/01/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    顎関節症発症の初発期である思春期を対象に, 顎関節症症状と平衡機能の調査を行い, 両者の関係を検討するとともに, 開咬を認める者の平衡機能についての検討も行った結果, 以下のような結論を得た.
    1. 対照群と比較して疼痛群では, 外周面積が5%の危険率で有意に大きく, 単位面積軌跡長が1%の危険率で有意に小さい値を示したが, いずれも時田の示した健常者の標準偏差内の値だった.
    2. 対照群と比較して雑音群では, 単位面積軌跡長が1%の危険率で有意に小さい値を示したが, 疼痛群と同様, 時田の示した健常者の標準偏差の範囲内の値だった.
    3. 対照群と比較して開咬群では, 全ての検査項目で有意差はないものの, 外周面積は大きく, 単位面積軌跡長は小さい傾向が認められた.
    このように, 顎関節症ならびに開咬は, 平衡機能と何らかの関係をもっている可能性が示唆された.
  • 長谷 誠, 相馬 邦道
    1997 年 3 巻 2 号 p. 169-172
    発行日: 1997/01/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 咬合状態と咬合終末期における顎運動パターンとの関連性を, 食塊の破壊粉砕効率を基に検討することである.
    検討の方法および結果は, 以下のとおりである.
    1. 被験者として, アングルII級症例2名と正常咬合症例1名を選択した.これらの上下顎歯の咬合面形状と位置関係, および咀嚼運動と咬合力を用いて, 有限要素法非線形動解析により食塊の破壊粉砕効率を求めた.その結果, 症例間に著明な経時的咀嚼効率の差異は認められなかった.
    2. 顎運動記録より, それぞれの症例について, 咬合終末期め下顎第一大臼歯の運動方向を観察した.その結果, アングルII級症例の下顎第一大臼歯の運動方向は, 正常咬合症例のそれに比較して前後成分が大きかった.
    3. アングルII級症例について, 咬合終末期における下顎第一大臼歯の運動方向を, 正常咬合症例のそれと入れ換えて食塊の破壊粉砕効率を求めた.その結果, 経時的咀嚼効率は著しく低下することが認められた.
    このことにより, 咀嚼運動方向は, 上下顎歯の位置の差異を補い, 食塊の破壊粉砕効率を高めている可能性があることが示唆された.
  • 1997 年 3 巻 2 号 p. 179
    発行日: 1997年
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
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