日本顎口腔機能学会雑誌
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4 巻, 2 号
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  • 石亀 勝, 三浦 廣行, 佐藤 和朗, 古町 瑞郎, 益田 勉, 石川 富士郎
    1998 年 4 巻 2 号 p. 133-143
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    静的な咬合と全身状態との関係についての報告は多数見受けられるが, 動的な咬合の中の等尺性収縮である噛みしめ行動が, 全身に影響を及ぼすのかについて, 明確な見解は得られていない.
    そこで本研究では, 特に下顎安静時, 咬合時と, 随意性努力で噛みしめを行った場合について, 体調節機構, 特に平衡調節に影響を与えるか否かについて重心動揺を測定し, 検討した後, 以下の結論を得た.
    1.閉眼時における下顎安静時と100%噛みしめ時と比較して, 咬合時, 10%噛みしめ時, 50%噛みしめ時の方が, 重心の移動距離および移動速度が小さくなる傾向が認められた.
    2.重心移動から求められた各種面積に関しては, 1名を除いて咬合時, 10%噛みしめ時, 50%噛みしめ時のいずれかが小さな値を示す傾向がうかがわれた.
    3.重心は, 全体的に後方へ偏位する傾向が認められた.
    4.下顎安静時と咬合時におけるわずかな顎位の変化量では, 重心動揺の各測定値には有意な差が認められなかった.
  • ―咀嚼リズムと筋活動量の安定性―
    大場 浩, 木本 克彦, 藤田 忠寛
    1998 年 4 巻 2 号 p. 145-152
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    補綴臨床において, 下顎第一大臼歯欠損はしばしば遭遇する症例である.しかしながら, 下顎第一大臼歯が欠損していても残存歯が健全に保たれていれば, 自覚的には問題なく咀嚼運動を行っているのも現状である.
    そこで, 今回下顎第一大臼歯欠損症例に対して固定性ブリッジによる補綴処置の意義を機能的に再考するために, 生理的な評価方法とされている咀嚼リズム分析を指標として, その正常者の変動範囲と下顎第一大臼歯欠損症例の経時的変化について検討を行った.
    また, 時間的パラメータを指標としている咀嚼リズムに加えて, 筋活動量を指標とする評価を同時に行い, その筋活動の安定性についても検討を加えた.
    その結果, 以下のような結論を得た.
    1.咀嚼リズムならびにその筋活動量の安定性を考慮した分析ソフトウェアを開発し, その自動解析が可能となった.
    2.本分析ソウトウェアを用いることにより, 正常者の咀嚼リズムと筋活動量の安定性の変動範囲が明らかになった.
    3.下顎第一大臼歯欠損の経時的変化については, 固定性ブリッジによる補綴処置を行うことにより, 咀嚼リズムと筋活動量の安定性の変化はともに良好になる傾向を示し, とくにその傾向は筋活動量において強く認められた.
  • 栗山 實, 長谷川 成男, 大竹 貫洋, 田中 義浩, 笠原 健一
    1998 年 4 巻 2 号 p. 153-160
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    クラウンの咬合調整の目標は, 咬頭嵌合位で歯列全体として均等に咬合接触させること, 側方滑走運動時, 前方滑走運動時にはクラウン装着前の歯列としての咬合様式を変化させないこと, そしてクラウンに隣在歯と類似した咬合接触点数, 咬合接触面積, 咬合接触部位をもつ咬合接触関係を設定することである.
    現在, クラウンは間接法で作製すると, 鋳造後に咬頭嵌合位で200~300μm高くなる.しかし, 咬合紙とバー, ポイント類などによる咬合調整を咬頭嵌合位についてだけ行えば, 数μmの精度でクラウンを正しい高さに調整することは可能である.
    そこで, 実際臨床において側方滑走運動, 前方滑走運動での咬合調整を行った後のクラウンが咬頭嵌合位で歯列に対して数10μm以内の精度で咬合接触点をもち, クラウンの各咬頭が咬合接触点をもっているかを検討した.
    被験クラウンは10名の患者の上下顎臼歯10歯に作製した.クラウンの咬合調整は臨床で通常行われている方法, すなわち視診, 患者の感覚, 咬合紙の引き抜き試験, 咬合紙の咬合接触像を指標として合着時前まで通法により行い, 咬合調整終了後の咬頭嵌合位での咬合接触状態の判定にはシリコーンブラック法を用いた.
    なお, 10被験例中の3例については咬合接触像に関する解析を行った.各クラウンの試適時, 仮着時, 合着時と装着1週後に咬合紙とシリコーンブラックによる咬合接触像を採得し, マイクロスコープとビジュアルスケーラーによって各種の検討を加えた.
    その結果, 咬合接触部位は咬頭の斜面あるいは辺縁隆線部に見られ, 咬合接触点は咬合調整時に作られた咬合小面内のシリコーンブラックが示す咬合近接域に限定されていた.また, 咬合接触点をもたない機能咬頭もあった.咬合調整の過程で, 咬合接触点数は次第に増え, 接触面積は狭くなった.
    結論として, 以下のことが明らかとなった.
    1.咬頭嵌合位において, クラウンの各咬頭に咬合接触を求めることは, 必ずしも容易ではなかった.
    2.咬合近接域の咬合接触に関する評価が必要である.
  • Raúl Medina, Yukihiro Tsuchida, Arnel Salazar, Mizuto Muramatsu ...
    1998 年 4 巻 2 号 p. 161-172
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    Bite force decreases as bite points change posteroanteriorly along the dentition; this raises questions about how the efficiency of the jaw elevator muscles is affected. The objective of this study was to determine the relation between bite force and the EMG/Force characteristics of the jaw elevator muscles as the bite point is changed posteroanteriorly during maximal (MVBF) and submaximal (30%MVBF) isometric clenching efforts. Seven fully dentate subjects without any history of craniomandibular dysfunction, mean age 30.8±2.4 volunteered for this study. Bilateral surface bipolar EMG activity from the superficial masseter (SM) and anterior temporal (AT) muscles was recorded simultaneously to alternate antagonistic vertical bite force measurements from the right and left first molar, first premolar, canine and anterior incisor teeth. The subjects clenched three times for 2 seconds each time to a requested level (MVC; 30%MVBF) on a force transducer. EMG/Force ratio (E/F) values for working (W) and balancing (B) muscles were calculated and normalized for each task. Statistical differences among unilateral bite points were analyzed with Two-way ANOVA. The magnitude of bite forces were similar to those proposed by other authors. Changing posteroanteriorly the bite point induced a gradual and significant (MVBF: p<0.01; 30%MVBF: p<0.001) increase of the corresponding working and balancing SM E/F values, with the latter being either the same or higher than the working ones. The E/F registered at the MVBF and 30%MVBF molar and anterior bite points were different in a proportion of 1: 2 in all subjects. At MVBF the AT's E/Fs also increased corresponding to the anteroposterior shift of the bite point (p<0.01) ; however, the 1: 2 proportion of the molar vs the anterior bite point was not observed; at 30%MVBF there was not any evident pattern, and the E/F were not significantly different among bite points. From these results it can be concluded that the EMG/Force ratio of the working and balancing superficial masseter and anterior temporal muscles is a posteroanterior increasing function and therefore has an inverse relationship with bite force, condition which may induce a negative effect in the electrical efficiency of the jaw elevator muscles.
    The results of this study have been previously presented at the following meetings:
    74th General Session of the International Association for Dental Research.
    20th Annual Conference of the European Prosthodontic Society.
    96th Meeting of the Japan Prosthodontic Society.
    44th Annual Meeting of the Japanese Association for Dental Research.
    75th General Session of the International Association for Dental Research.
    Annual Meeting of the Niigata Dental Association, July 1997.
  • 松永 和秀, 〓島 弘之, 〓島 桂子, 渡邊 孝一, 山田 好秋
    1998 年 4 巻 2 号 p. 173-181
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    摂食・嚥下障害向けの食品として, 増粘剤が数多く開発され, 嚥下訓練や検査に応用されている.本研究では, 増粘剤の一つであるムースアップに造影剤として汎用されているバリトップおよび水を混和して, 嚥下機能検査食を試作し, 物性, 造影性について調べた.さらに, 検査食の物性を変化させることで, どの様に嚥下動態が変わるかについて筋電図学的に検討した.その結果, 以下のことが明らかとなった.
    1.ムースアップと造影剤であるバリトップは均一に混和できた.
    2.食品の物性の一つの要素である粘性の測定を行った.試料のムースアップ含有量を変化させることにより, 液状, トロミ状, 固形状といった性状の異なる試料を作成できた.嚥下訓練食として利用されているヨーグルト (ブルガリアヨーグルト) および白がゆに近い粘性を示す試料も得られた.試料は長時間冷却しても安定した粘性を示した.したがって, 今回試作した試料は, 粘性の変化はほとんどなく, 作り置きが可能であることが示唆された.
    3.エックス線テレビにて, 健常者における試料の造影効果と嚥下動態を観察した.試料の造影効果は良好で, 一連の嚥下動態を明瞭に観察できた.
    4.試料を用いた健常者における嚥下時舌骨上筋群の筋活動を観察した.試料の粘性や嚥下量が増加すると, 食塊の形成から奥舌部への送り込みまでの時間が延長したり, 一塊として飲み込むのが困難であることがわかった.
    したがって, 嚥下機能が低下している嚥下障害者を検査する場合は, 試料の形状および嚥下量に十分注意して検査する必要があると考えられた.
    以上のことより, 今回試作した試料は嚥下機能検査食として有用であると示唆される.
  • 長谷川 信乃, 篠田 圭司, 田村 康夫, 吉田 定宏
    1998 年 4 巻 2 号 p. 183-189
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    本研究はクレンチング時の咀嚼筋活動の対称性を評価するための非対称性指数 (Asymmetry Index, A.I.) を応用し, 交叉咬合を有する小児の咬合状態と咀嚼筋A.I.との関係について検討を行ったものである.被検児は本学小児歯科外来に来院し交叉咬合を認めた小児17名 (男子7名, 女子10名, 平均年齢7歳6カ月) を対象とした.そして左右側頭筋および咬筋活動よりA.I.を算出し検討を行い以下の結論を得た.
    1.被検児17名全員に早期接触が認められ, 早期接触部と咬合偏位側との間に一致が認められた.
    2.側頭筋A.I.は偏位側が優位になった者12名, 反対側が優位になった者5名と偏位側側頭筋の活動が大きくなる傾向がみられ, また咬筋は逆のパターンを示すものが多くみられた.
    3.咬筋活動を, 偏位側優位群と反対側優位群に分け検討した結果, いずれもA.I.と側方偏位量との間に相関が認められた.
    以上の結果より, 交叉咬合による咬合の偏位はクレンチング時に左右咀嚼筋活動のバランスに影響を及ぼしていることが明らかとなり, 咀嚼筋活動左右バランスを非対称性指数で検討することは有効であることが示唆された.
  • 五十嵐 直子, 山村 健介, 山田 好秋, 河野 正司
    1998 年 4 巻 2 号 p. 191-196
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    ヒトにおいて, 咀嚼時には頭部は下顎運動と協調してリズミカルに動いていることが報告されている.この咀嚼時の頭部運動のメカニズムを調べる目的で, 覚醒無拘束のウサギを用いて, 性状の異なる2種の試料 (パン, 生米) を咀嚼している際の頭部運動と頸筋 (胸骨乳突筋, 頭板状筋) のEMGを記録した.また, ウレタン麻酔を施したウサギを用いて, 皮質誘発性咀嚼様運動時に頸筋 (胸骨乳突筋, 頭半棘筋) のEMGを記録した.
    覚醒咀嚼時には, 頭部が下顎運動と同じ周期でリズミカルに動いており, その垂直的な運動方向は下顎運動と反対であった.同時に, 胸骨乳突筋には試料に応じて異なるリズミカルな活動が観察された.パン咀嚼時には開口時と閉口時の二相性に活動し, 生米咀嚼時には閉口時のみに活動した.頭板状筋は持続的に活動しており, 活動に明瞭なリズム性は認められなかった.
    麻酔下の皮質誘発性咀嚼様運動時には, 胸骨乳突筋は閉口時にのみ活動を示し, 臼歯で木片を咬合させると活動が増強した.頭半棘筋は持続的に活動しており, 活動にリズム性は見られなかった.
    覚醒咀嚼時に観察されたリズミカルな頭部運動が, ヒトと同様な様相を呈したことから, ウサギは咀嚼時頭部運動の実験モデルとして有用であることが示された.また, 咀嚼リズムに同期してリズミカルに活動した胸骨乳突筋は, 咀嚼筋や頸部の固有感覚受容器あるいは歯根膜などからの末梢性入力によって活動が増強され, 反射性に活動することが示唆された.一方, 頭板状筋, 頭半棘筋活動の咀嚼運動時におけるリズム性は明瞭でなく, 頭部運動との関連は明らかでなかった.
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