日本顎口腔機能学会雑誌
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6 巻, 1 号
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  • 檜山 成寿, 今村 尚子, 小野 卓史, 石渡 靖夫, 黒田 敬之
    1999 年 6 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究は, 習慣性咀嚼側と咬合因子および顎関節症状側との関連について検討することを目的とする.
    東京医科歯科大学歯学部附属病院矯正科を受診した患者100名 (13~40歳: 平均年齢22歳) を被験者とした.実験の前に, 全ての被験者に対し実験の趣旨を十分説明し承諾を得た.習慣性咀嚼側および顎関節症状側は問診にて決定した.咬合状態の診査は, デンタルプレスケール50H, type R (富士写真フイルム社製) を用い, 被験者には咬頭嵌合位における3秒間の最大咬みしめを指示した.オクルーザーFPD703 (富士写真フイルム社製) を用いて咬合力および咬合接触面積を算出, 左右側での優位な側をそれぞれ主咬合力側および主接触側と定義し, これらと習慣性咀嚼側との関係を検討した.統計学的検定には比率の検定およびx2独立性の検定を用いた.
    100名中, 習慣性咀嚼側が右側の者54名, 左側の者46名で, 統計学的に左右差はみられなかった.習慣性咀嚼側と主咬合力側が一致する者72名, 一致しない者27名, 習慣性咀嚼側と主接触側が一致する者65名, 一致しない者30名で, 一致する者が有意に多かった (p<0.01) .また, 年齢およびAngle分類に基づく咬合状態の結果に対する影響は示されなかった.顎関節症状に関しては, 片側に症状を有する36名のうち, 習慣性咀嚼側と顎関節症状側が一致する者26名, 一致しない者10名で, 一致する者が有意に多かった (p<0.05) .
    習慣性咀嚼側の決定には, 咬合力および咬合接触面積が一因子として寄与している可能性が示唆された.また習慣性咀嚼側において顎関節症状が発症しやすいことが示された.
  • 宇佐美 博志, 森 隆司, 川口 豊造, 大山 尚彦, 加藤 栄蔵, 高濱 豊, 内藤 宗孝
    1999 年 6 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    CT画像から顎関節を3次元構築して, 骨関節隙を計測することで, 顎関節の骨形態および下顎頭の位置を同時にとらえる方法を検討した.
    顎関節と上顎歯列の位置を対応させるために, 顔弓様の治具を製作した.治具には, アルミニウム管を用いた標点部が3カ所に設けてある.治具を被験者の上顎歯列に装着し, スライス厚2mm, スライス間隔1mmで軸位方向のCT検査を行った.CT画像から抽出した構成座標, すなわち下顎頭では約12000点, 下顎窩では約24000点を用いて, 左右側の顎関節骨形態の構築像を作成してリアルタイムグラフィックスソフトウェアで表示した.さらに, 歯列の情報として, 咬合平面を示す3角形を画像に組み入れた.
    骨関節隙の量は, 下顎窩と下顎頭の構成座標間の3次元的距離を算出して, 5mm以下の部位について1mmごとに下顎頭の構築像上に色分けして描画し, これを近接部位分布図とした.
    以上から, 次の結論を得た.
    1.一度のCT検査で, 両側の顎関節骨形態を同一座標系でとらえることができる.
    2.咬合平面と平行な面を3次元画像に組み入れて, 顎関節と歯列との位置関係を評価できるようにした.
    3.近接部位分布図により, 下顎頭形態と同時に, 下顎窩に対する下顎頭全体の相対的な位置を視覚的に評価することができる.
  • 菅沼 岳史, 山上 芳雄, 新谷 明幸, 古屋 良一, 川和 忠治
    1999 年 6 巻 1 号 p. 19-32
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    補綴物に適切なガイドを付与することは顎口腔機能に対して重要である.しかし, 与えられたガイドと咀嚼機能との関係については不明な点も多く存在する.本研究では, ガイドを変化させた場合の咬筋および側頭筋後部筋活動に与える影響について検討した.
    被験者は, 顎口腔系に異常を認めない成人3名を用いた.各被験者は, 咬合関係が切端咬合や前歯部開咬で, いずれか一方の側方滑走運動時に平衡側大臼歯に咬合接触が認められた.実験は, G0: ガイドなし, G1: 切歯路の角度が同一のガイド, G2: +約10°のガイド, G3: +約200のガイドを両側の上顎犬歯に装着し, 筋電図および下顎運動を記録した.G2およびG3のガイドは, 側方滑走運動時に平衡側の接触が離開するように調整した
    側方滑走運動時にG1のガイドを装着した場合の筋活動は様々な変化を示した.G2のガイドを装着した場合, GO, G1と比較すると, 往路では筋活動が減少する傾向にあり, 復路では筋活動が増加する場合があった.G3は, G2と比較すると筋活動が減少する傾向にあった.ガイドの変化による筋活動への影響は, 咀嚼運動時より側方滑走運動時の方が大きかった.ガイドの変化による咀嚼リズムの変化には一定の傾向がなかった.平衡側の咬合接触は, 咀嚼リズムの安定性や咀嚼経路に影響している可能性があった.
  • 相澤 茂, 築山 能大, 市来 利香, 古谷野 潔
    1999 年 6 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究は咀嚼筋に対する疲労負荷試験の影響を調査することを目的とした.咀嚼筋痛の既往のない健常者20名に対して, かみしめ強さが最大の50%となるかみしめを1分間の休憩をはさんで繰り返し行わせ, 実験的疲労を誘発した.
    実験前後の咀嚼筋の経時的反応を咀嚼筋痛の程度, 圧痛閾値, 咬合力から評価した.安静時の咀嚼筋痛の程度はVisual Analog Scale (VAS) を用いて計測した.圧痛閾値の計測は咀嚼筋群6部位 (咬筋浅部, 深部, 側頭筋前部, 中部, 後部, 胸鎖乳突筋) と顎関節部 (外側部, 後部) に対して行った.咬合力の計測には富士写真フイルム社製デンタルプレスケールを用いた.それぞれの測定項目は実験的疲労負荷前, 疲労負荷1日後, 2日後, 3日後, 7日後の各時点で行った.
    その結果, 被験者全体での解析では, 咀嚼筋痛の程度は負荷試験1日後に有意に大きな値を示した.さらに男女で2群に分けた解析では, 咀嚼筋痛の程度は, 男性群, 女性群とも1日後に最大の値を示したが, 女性群のみ他の測定時期と比較して有意差が認められた (P<0.05) .さらに, 女性群の咬筋深部の圧痛閾値は, 1日後に最小の値を示し, 負荷試験前, 7日後と比較して有意差が認められた (P<0.05) .一方, 男性群では, いずれの部位にも有意差は認められなかった.以上のことから, 男女により疲労負荷試験に対する顎口腔系の反応が異なることが示唆された.
  • 山口 公子, 郡由 紀子, 重本 修伺, 住友 路子, 坂東 永一, 西野 瑞穂
    1999 年 6 巻 1 号 p. 43-54
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    小児の顎運動を下顎全体の運動としてとらえ評価するために, 個性正常咬合を有する乳歯列期小児4名 (男児1名, 女児3名) , 混合歯列期小児7名 (男児2名, 女児5名) , 成人10名 (男性2名, 女性8名) を対象に6自由度顎運動測定を行い, コンピュータグラフィックスによる小児の顎運動の再現を行うとともに, その特徴を明らかにするために, 顎間軸モデルを用いて検討し, 以下のような結果を得た.
    1.小児でも被験者によっては運動論的顆頭点の検索が可能であることが示された.
    2.小児の側方滑走運動における作業側顆頭移動量は成人に比較して有意に大きいことが示された.
    3.小児では側方滑走運動時, 咬頭嵌合位と各顎位との間で求まる顎間軸が成人のように作業側顆頭付近に収斂せず, 作業側顆頭付近に一定の回転中心をもたない場合が多いことが示された.
    4.小児では側方滑走運動時, 咬頭嵌合位と各顎位との間で求まる顎間軸において, 軸に沿った平行移動量が大きく, 回転量はIIA期小児の運動初期を除いて成人とほとんど変わらなかった.
    以上の結果から, 小児では成人と比較して, 側方滑走運動時, 平行移動要素が大きく, 下顎全体として横滑りする様な運動をしている場合が多いことが示唆された.
  • 佐藤 正樹, 鳥井 克典, 岡崎 全宏, 櫻井 秀憲, 龍田 光弘, 田中 昌博, 川添 堯彬
    1999 年 6 巻 1 号 p. 55-65
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 頭蓋顔面系を基準とした三次元咬合診査法を開発し, その評価パラメータについて検討することである.
    被験者として健常有歯顎者2名と, 顎機能異常患者2名を選択した.5%MVC以下のLight Clenchingと30%MVCの咬合力を発揮させて採得した2種類のシリコーンバイトを試料として, 非接触形状計測を行った.シリコーンバイトの三次元構築データから上下顎歯間距離60μm以下の領域を咬合接触域として抽出し, 咬合接触域の傾斜方向と面積を個歯ベクトル, 歯列ベクトルとして表示した.頭部エックス線CTから, 頭蓋顔面骨の三次元構築データを抽出した.頭蓋顔面骨の解剖学的な標点から, 頭蓋顔面系の基準座標を右手座標系にて設定した.テフロン球をマーカーとして, シリコーンバイトと頭蓋顔面骨の三次元構築データの位置合わせを行った.上下顎歯列咬合面の重ね合わせにより, 咬みしめ強度の増加に伴う下顎歯列の変位から下顎変位を推定した.
    三次元咬合診査法における非接触形状計測の再現性と測定精度を調べる実験を行ったところ, 再現性は高く, およそ±20μmの計測精度を有していることが確認された.
    健常者ではLight Clenching, 30%MVC間での下顎変位が小さく, 咬合接触状態はほぼ左右均等で変化の小さい様相を呈した.顎機能異常患者では習慣性閉口位における早期接触により下顎変位が生じていることが観察された.
    以上のことから, 頭蓋顔面系を基準とした三次元咬合診査法を開発し, 咬合接触状態および咬みしめ強度の増加に伴う下顎変位を定量的かつ視覚的に把握することが可能となった.
  • 市来 利香, 築山 能大, 古谷野 潔
    1999 年 6 巻 1 号 p. 67-77
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究では, 被験者自身が日常生活の場で, 簡便に睡眠時ブラキシズムを連続夜測定することが可能な測定機器を開発する目的で, 携帯型生体アンプおよび収録用データレコーダを用い, 携帯型筋電図測定システムを開発した.本システムでは, 睡眠時咬筋筋電図を用いて, ブラキシズムのイベント数, 筋活動時間および筋活動量などの多くの情報を得ることができ, より詳細にブラキシズムを解析することが可能である.また, 筋電図原波形の観察によって, 計測時のアーチファクトを可及的に取り除くことができ, 解析データの精度を上げることが可能である.
    開発したシステムを用い, 臨床診査によって選出した正常者 (コントロール) 2名とブラキサー2名について, 睡眠時咬筋筋活動を7日間連続測定した.正常者とブラキサーの測定データについて, 最大かみしめの10%のかみしめ強さの筋活動 (10%MVC) を越える筋活動をブラキシズムイベントとみなし, ブラキシズムのイベント数, 発生時間および筋活動量を算出した.これによってブラキシズムの評価を行い, さらに個々の被験者についてブラキシズムの日間変動を検討した.
    その結果, 覚醒時のブラキシズム様運動と同様の筋活動を示す睡眠時咬筋筋活動, すなわち, クレンチングおよびグラインディングがブラキサーに確認できた.ブラキサーの筋活動はコントロールに比べて有為に大きかった (P<0.05, ANOVA) .また, 今回計測した2名のブラキサーはコントロールとは異り, 50-70%MVCレベルでの筋活動が多くみられた.筋活動の分布は, 被験者によって異なり, また日によって異なっていた.さらに被験者毎にブラキシズムの日間変動を検討したところ, 被験者内の変動係数は20-30%であった.
    以上のことから, 本システムはブラキシズムの評価に有用であることが示唆された.
  • 芥子川 浩子, 仲岡 佳彦, 山田 賢, 近藤 亜子, 長谷川 信乃, 田村 康夫
    1999 年 6 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    乳児離乳期における咀嚼運動の発達と各時期での特徴を明らかにする目的で, 離乳食咀嚼運動時における咀嚼運動リズムと, 側頭筋と舌骨上筋群の筋協調パターンを筋電図を用い検討した.被検児は吸啜群を対照とし離乳食を開始してから8週間隔で1群から4群に分けた.筋活動協調パターン評価では持続的舌圧接型, 周期的舌圧接型および成熟型の3タイプに分類し, 今回は特に成熟型の咀嚼運動中に占める割合について検討した.
    その結果, 離乳開始から16週頃までは咀嚼サイクル時間, 持続時間ともに長い咀嚼パターンを示し, また閉口筋である側頭筋と開口筋である舌骨上筋群とが同時に活動する協調運動を示していたが, 離乳の進行に伴い閉口筋と開口筋とが交互に活動する成熟型の割合が高くなっていた.それ故, この時期の咀嚼機能は閉口筋と開口筋の機能的な分離が進み, 次第に発達することが示唆された.
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