本研究では, 被験者自身が日常生活の場で, 簡便に睡眠時ブラキシズムを連続夜測定することが可能な測定機器を開発する目的で, 携帯型生体アンプおよび収録用データレコーダを用い, 携帯型筋電図測定システムを開発した.本システムでは, 睡眠時咬筋筋電図を用いて, ブラキシズムのイベント数, 筋活動時間および筋活動量などの多くの情報を得ることができ, より詳細にブラキシズムを解析することが可能である.また, 筋電図原波形の観察によって, 計測時のアーチファクトを可及的に取り除くことができ, 解析データの精度を上げることが可能である.
開発したシステムを用い, 臨床診査によって選出した正常者 (コントロール) 2名とブラキサー2名について, 睡眠時咬筋筋活動を7日間連続測定した.正常者とブラキサーの測定データについて, 最大かみしめの10%のかみしめ強さの筋活動 (10%MVC) を越える筋活動をブラキシズムイベントとみなし, ブラキシズムのイベント数, 発生時間および筋活動量を算出した.これによってブラキシズムの評価を行い, さらに個々の被験者についてブラキシズムの日間変動を検討した.
その結果, 覚醒時のブラキシズム様運動と同様の筋活動を示す睡眠時咬筋筋活動, すなわち, クレンチングおよびグラインディングがブラキサーに確認できた.ブラキサーの筋活動はコントロールに比べて有為に大きかった (P<0.05, ANOVA) .また, 今回計測した2名のブラキサーはコントロールとは異り, 50-70%MVCレベルでの筋活動が多くみられた.筋活動の分布は, 被験者によって異なり, また日によって異なっていた.さらに被験者毎にブラキシズムの日間変動を検討したところ, 被験者内の変動係数は20-30%であった.
以上のことから, 本システムはブラキシズムの評価に有用であることが示唆された.
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