本論文は,トレーサガス法により換気量を測定する場合において,ガス濃度測定の際に生じる測定誤差が算定した換気量に与える影響について検討したものである.対象とした室は単一室空間であり,ガス濃度減衰法およびガス一定発生法を用いて測定を行った場合に,測定したガス濃度およびガス発生量に生じる誤差の出現確率が正規分布に従うと仮定し,それによって引き起こされる換気量誤差の出現確率を求めた.その結果,減衰法の場合には,室内ガス濃度が初期濃度の0.5〜0.3倍にまで減衰した時点での濃度を用いて換気量を算定すれば換気量誤差率を小さくできることがわかった.また,ガス一定発生法の場合には,換気量と発生量の組合せ,それら誤差の与え方などを変化させて誤差検討を行ったが,いずれの誤差条件においてもガス発生開始直後での低い濃度を換気量算定に用いた場合には,算定誤差が大きくなるが,測定時間を長くすればするほど換気量の算定誤差は小さくなることが明らかになった.
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