本研究は,除湿型放射冷房パネル(以降,放射冷房パネル)により冷房される室内の温熱環境を実測及び対流・放射連成シミュレーションにより解析し,放射冷房方式の有効性を明らかにすることを目的としている.検討を行った放射冷房パネルは,放射パネル表面温度を積極的に下げ,場合によっては結露を許容するものである.放射冷房パネル単独でも室内の冷房負荷に対応でき,冷房エネルギーの効率利用と室内空気の除湿効果を期待できるものである.本研究では,まず,放射冷房パネル方式を用いる実在のオフィス空間に対して,測定と対流・放射連成シミュレーションにより室内温熱環境を解析し,その結果を比較・検討することにより対流・放射連成シミュレーションの実用面における予測精度を検証する.次に,様々な空調方式(放射冷房パネル方式,床吹出し空調方式,自然換気を併用した放射冷房方式)を用いるオフィス空間の温熱環境を,人体モデルを含んだ対流・放射連成シミュレーションにより解析し,放射冷房パネルを用いる冷房方式の有効性を検討する.但し,解析は顕熱による室内温熱環境を主な対象としており,潜熱に関しては検討していない.放射冷房パネル方式は,同一の冷房負荷の条件での床吹出し空調方式と比べ人体の放射温度(MRT)と作用温度をより低く保つことができ,その意味で効率的な空調方式と言える.
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