現在,わが国では,空調用消音器の性能測定方法を規定した国内規格(JIS)は存在しない。このため,消音器の性能測定方法規定したJISを制定する際には,原則的に国際規格であるISO7235に基づいた方法になると考えられる。このISO7235の性能測定方法では,直管型消音器には長さおよび接続断面が等しい置換ダクトを,曲管型消音器には接続断面が等しく,かつ,側面形状がスムーズド・カーブを有する置換ダクトを,それぞれ用いた置換法が規定されている。一方,わが国では,空調ダクト系に設置する消音器の設計用資料は,損失圧力は直接法により,挿入損失は置換ダクトを用いない置換法により,それぞれ測定された値を用いている。このため,ISO7235に規定されている置換ダクトを用いた置換法により求めた消音器の性能特性と,わが国の設計用資料としての性能特性とに,差異があるか否かを明らかにしなければならない。直管型消音器の挿入損失を,直接法と置換ダクトを用いた置換法および置換ダクトを用いない置換法とにより測定した結果,また,曲管型消音器の挿入損失を1/1オクターブバンド中心周波数において,直接法と置換ダクトを用いない置換法とにより測定した結果,ほぼ等しい値を示すことが明らかになっている。本論文では,直管型および曲管型消音器の損失圧力を,直接法および置換法により,また,曲管型消音器の挿入損失を,置換ダクトを用いた置換法と用いない置換法との1/1オクターブバンド中心周波数により,それぞれ測定した。その結果,以下2点の知見を得た。1)ISO7235に規定されている測定方法は,直管型消音器の損失圧力および挿入損失,曲管型消音器の挿入損失に関しては,妥当であると考えられる。2)ISO7235の規定に基づき,曲管型消音器の損失圧力を測定するには,その方法を再考する必要があると考えられる。
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