WBGT(湿球グローブ温度)は,暑熱環境における労作業時の熱ストレスを評定する指標として,国際標準化機構のISO-7243で基準化され,日本を始めとする多くの国で使用されている.この指標は兵士の熱中症予防のために,兵士を被験者として米国で作成された実験式であるが,現在では労働環境や屋外スポーツの為の評価指標としても多用されている.本研究では,実験によって開発されたWBGTを,人と環境との間の熱平衡式を基にした熱伝達論から理論的に導き,WBGT式を規定している湿球温・黒球温・気温の項に掛かる3つの定数係数の構造を特定し,WBGTの持つ温熱生理的意味について考察した.さらに実数値を用いた検討を行なって,WBGTの指標としての特徴,疑問点と使用上の注意点を示した.なお,本稿では主として屋内や屋外の日陰で使用するWBGTを検討の主対象とした.
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