地球環境負荷低減の観点から,パッシブクーリングの手法として蒸発冷却は有望であるが,これまで屋根散水システムの適用例は,工場等の軽構造建築物が中心でRC造のような熱的に重い建築物への適用は少なかった。そこで,本研究ではRC造の実建物に屋根散水システムを導入し,散水量と散水方法を変化させて,室内外の温熱環境の実測を行い,屋根散水システムによってもたらされる熱的効果を明らかにした。この結果,散水を行うことで,非散水条件の屋根と比較して,屋根表面や天井内の温度が大きく低下したほか,室内放射環境の指標となるグローブ温度も約1℃の低下が見られ,室内温熱環境快適指標であるPMVも改善されたことから,断熱材が施されており,熱的に重い建物においても,屋根散水は大きな熱的効果を有することが確認された。
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