本報を含む一連の研究は,新たな換気効率指標として質点での汚染物質の実質的な排出速度を示すNet Escape Velocity (NEV)を定義・提案した上で,単純2次元モデル,3次元モデル内に形成される汚染物質拡散場を対象としてNEVを適用することで,その換気制御上の有効性を検討するものである.既報(第1報)ではCFD解析を前提とするNEVの定義と計算方法を示した上で,単純な2次元流れ場を対象としてRANSモデルによるNEV分布を解析した結果を報告した.加えて,局所汚染物質排出換気量Purging Flow Rate (PFR)との関係を整理した結果も示した.前報(第2報)では,IEA Annex 20のベンチマークテストケースを対象として,3次元空間を対象とした流れ場・汚染物質拡散場の予測結果と,NEVならびにPFRの解析結果を一緒に示すことで,NEVを利用した換気設計のための基礎データを整理した.本報(第3報)では,産業換気分野にて特徴的な換気システム,特に厨房換気における局所排気装置とPush-Pull型換気装置に着目し,現実的な空間を対象とした制御対象局所領域の換気性状をNEVにて評価した結果を報告する.
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