本研究は,病院の運用段階の消費エネルギー削減手法について,シミュレーションを活用した検討手法の確立を目指している。本報では,冬期暖房運転時の水蓄熱および発電機の排熱利用を含む熱源システムの運用改善を検討した。シミュレーションにより,蓄熱槽からの放熱流量や利用温度差を適正化することによって搬送動力を低減し,蓄熱槽の温熱源を発電機の排温水から空冷ヒートポンプによる夜間蓄熱に変更することが可能となり,排温水を他の負荷処理に変更することで一次エネルギー消費量の削減が示唆された。さらに,発電機の運用を改善後の電力や熱利用に合わせて最適化することにより,省エネルギー効果が向上する結果が得られた。
建築物における再生可能エネルギー利用が注目されている。その中でも地中熱は,太陽光や風力ほど天候・地域に左右されにくく,利用しやすいエネルギー源に位置付けられる。新鮮外気を建物の基礎梁部分などを通過させて,比較的簡便に外気負荷の削減を行う場合,これをヒート&クールトレンチなどと呼んでいる。本研究は,この熱的効果の予測に,古典的とも云える差分法に基づく地中伝熱数値解析の手法を適用するものであり,トレンチ内のコンクリート表面を含む建物及び地盤の断面温度分布を算定し,それを元にトレンチの入口-出口間の空気温度差を推定して,期間取得熱量及び期間除去熱量を求める方法を考案したので報告する。
本論文では、設備施工・建築施工における危険・リスク回避するための実践的研究として位置づけ、設備施工・建築施工における危険予知訓練シート(以下、危険予知シートという)を実施し、安全意識の度合いを分析する。そのため、建築設備に特化した危険予知シートを約 5 年かけて建築設備の施工に従事している監督者、作業者、そして、未だ施工の経験がない大学生を対象に、同様のイラストによる危険予知シートを実施し、これらの分析結果についてまとめる。なお、本報では、その 1 として、設備施工に深く関連している 4 つの危険予知シートの実施結果について、作業者、監督者(経験者)、監督者(未験者)と学生の合計(累計)10,113 人を比較検討、考察を行った。