本研究では,不燃性の膜天井内に天井カセット型パッケージエアコン(以下PAC)を配置し、膜面からの放射効果を期待した空調方式を提案し,その有用性を検証することを目的としている。本報では,冷房時の実大実験を行った結果、室内の垂直温度分布が良好であることが分かった。一方で、膜を介しても発熱負荷に見合った空調能力があること、実験時間平均(12時間平均)でのCOPが5から6程度であることを示した。また、膜天井内と膜下室内の循環ファンを運転させることで、膜天井内の冷気により空調能力が上がることを示した。
本論文では,畳み込みニューラルネットワーク(CNNs)を用いた不具合検知・診断(FDD)手法において,対象熱源システムで高い診断性能を発揮可能とする教師データの作成を目的として,作成手法を検討した。具体的には,CNNs の学習時間の抑制と診断性能の向上の観点から,1)診断対象とする不具合の選別,2)不具合程度の設定,3)複数不具合同時発生時の教師データの作成,4)各不具合における画像データ量(日数)の設定を検討した。本手法を用いることで,対象システムにおいてデータ量を抑えかつCNNs が高い診断性能を発揮する教師データを作成できることが示された。
金属角ダクトの差込接続工法は,接続部の製作が簡単で軽量であるという特徴があり,英国の一般空調や日本の船舶空調で汎用されている。差込接続式角ダクトを日本の一般空調へ適用する目的で,ダクトを試作してその安全強度とリーク性能を評価した。試作したダクトは,設備耐震上及び80kg 積載時の安全強度と性能の評価基準を満足した。制限圧力時における変形は,リブやタイロッド,中間フランジ等で補強すると基準値を満たすことが確認された。以上より,差込接続式角ダクトを国内の一般空調の分岐ダクトへ適用できることがわかった。
本研究は、予冷再熱に一次エネルギーを使用しないヒートパイプ組込型除湿再熱外気処理空調機を実験実測により評価するものである。前報では、実験室における性能試験から、冷水コイル冷却量の削減効果を評価するとともに、実運用建物の運転実績から除湿再熱サイクルの正常運転していることを確認した。本報では、実運用建物の実測データに基づき、年間のヒートパイプ作動状況及び省エネルギー効果を評価した。これによると、予冷コイルの入口温度が15℃以上においてヒートパイプ作動があるのに対し、空調停止時や暖房運転において作動していないことを確認した。また、ヒートパイプ導入による局部抵抗を考慮した年間空調機負荷は、西系統39.9%、東系統34.4%の削減率で、年間での省エネルギー効果があると判定された。
The BEST Program(Building Energy Simulation Tool)は,産官学の協力で,新たなエネルギーシミュレーションツールとして,平成17 年度から開発委員会が発足し,その後開発・検証が継続され現在に至っている。BEST プログラムには,いくつかの種類があるが,専門版が最も詳細な検討が可能であり,詳細設計・研究への利用が期待されている。しかしながら,業界に十分に浸透しているとは言い難い状況である。その原因としては,入力項目の多さ,専門性などと共に計算結果データの扱いも容易でないことも一因と考えられる。そこで,BEST 専門版の計算結果出力ファイルを用いた空調性能評価ツールを開発したので,その内容と試行結果を報告する。
本研究は新築・既築のオフィスビルを対象に、そのコンバージョンやリニューアルによって、水まわりの変更や増設が生じても対応できる圧送排水ポンプユニットと小口径圧送排水管を用いた「圧送排水システム」と自然流下による「重力式排水横枝管システム」を併用したハイブリット排水システムを提案し、その性能評価と計画・設計手法に資する知見を得ることを目的とする。本報では、前報の基礎実験の結果より得られた知見も生かして、実在のオフィスビルのコンバージョンへ同システムを適用し、約1年間に渡り実使用下での排水負荷と管内圧力を実測し、排水性能への影響を調査した。さらに、短期的な調査であるが、圧送排水ポンプユニットの運転時の騒音を測定し、居住スペースへの影響を検討した。これらの結果より、同システムの実使用下での有効性を提示した。