史学雑誌
Online ISSN : 2424-2616
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125 巻 , 6 号
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  • 2016 年 125 巻 6 号 p. cover1-
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
  • 2016 年 125 巻 6 号 p. cover2-
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
  • 紺谷 由紀
    2016 年 125 巻 6 号 p. 1-36
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    紀元後四世紀以降の後期ローマ帝政期の皇帝たちは、発達した宮廷機構の内部に多くの宦官―去勢者―を有した。このような去勢者に関して本稿は、法史料、特にユスティニアヌス一世(在位五三七~五六五年)治世の法集成である所謂『ローマ法大全 Corpus Iuris Civilis』に収録された紀元後二―六世紀の法学者の見解や勅法を分析し、去勢者や生殖不能者の法的位置付け、起草者たる法学者、皇帝、中央行政の去勢認識の明確化を試みた。中でも、従来看過されてきた去勢者と奴隷・被解放自由人という法的身分との関連、並びにユスティニアヌスの法典編纂事業に伴う規定の変化に注目し、用語(一)、去勢奴隷に関する規定、帝国内の去勢を禁止する勅法(二)、そして被解放自由人に関しては婚姻や養子、相続をめぐる去勢者の法的能力(三)の問題を考察した。
    結論は以下の二点に集約される。第一は、過去の規定の整理や新しい勅法の発布を伴う大規模な編纂事業が去勢の規定の変化に大きな影響を及ぼしたという点である。中でもユスティニアヌス治世には奴隷・解放奴隷の法的地位の向上が確認されるが、この傾向が同じ身分に属する去勢者の規定を左右する背景の一つであったと指摘した。二点目は、去勢に対する立法者の多様な認識である。去勢行為は、その死亡率の高さから殺人や傷害、隷属化の手段として認識される一方、去勢者は、生殖不能の一種として生殖器の損傷を受け、将来的に実子を持ち得ない者とみなされた。他方、法史料における去勢者の評価に関しては、叙述史料の非難、偏見にみられるような否定的なものではなく、むしろ一定の帝国内の去勢者の存在を許容する寛容なものであった。以上の法史料の分析は、去勢者が、先行研究で強調されるような宮廷宦官という社会的役割でなく、生殖器の損傷や生殖不能という根本的な身体の状態に第一に結び付けられていたことを明らかにし、結果としてより広範な帝国社会の去勢者研究を喚起する。
  • 鈴木 裕之
    2016 年 125 巻 6 号 p. 37-62
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/10/05
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は、内裏の夜間警備(夜行・宿直)の分析から、摂関期における左右近衛府の機能を検討することである。律令制以来、衛府は内裏警備を主たる職掌とした。夜間の警備も同じく規定されていた。延喜式段階でも、その職掌は継承された。本稿の問題意識は、このような内裏の夜間警備が摂関期(一一世紀)に機能していたか、あるいは貴族に認識されていたかという点にある。従来の研究で否定的に理解されてきた摂関期の左右近衛府の治安維持機能について、内裏夜行・宿直の観点から再検討した。
    まず、延喜式の夜行・宿衛規定の分析を起点とした。夜行に関する諸規定から、六衛府すべてが内裏・大内裏の夜行に関与していることを指摘した。内裏夜行の検討が、摂関期の左右近衛府の性格を知るうえで有効であると判断した。また、宿衛は考第・昇進の条件として考えられていた。内裏夜行・宿衛の実態史料の分析から、その日常性が確認できた。
    次に、一一世紀の左右近衛府の内裏夜行・宿直を考えるため、行事書・儀式書から次第を確認し、古記録から実態を検討した。その結果、摂関期における左右近衛府の内裏夜行・宿直の日常性が明らかとなり、貴族が治安維持組織たる左右近衛府を認識していたことを指摘した。
    最後に、内裏夜行・宿直の有効性を補足する論点として、内裏火災における左右近衛府の活動に着目した。摂関期の内裏火災において、消火活動と予防組織としての左右近衛府の姿がみられた。消火・予防という活動の背景には、内裏夜行・宿直の有効性とそれに付随する貴族認識があると考えた。
    従来の研究で否定的に理解されてきた左右近衛府の治安維持機能を、内裏の夜間警備を通じてみることで、肯定的に捉えようとしたのが本稿である。儀式関与・芸能・摂関家への奉仕など、様々な存在形態が認められる左右近衛府であるが、本来的な治安維持組織としての姿もその一つとして認めるべきであると結論づけた。
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