史学雑誌
Online ISSN : 2424-2616
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126 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 2017 年 126 巻 1 号 p. cover1-
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
  • 2017 年 126 巻 1 号 p. cover2-
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
  • その実態と影響について
    2017 年 126 巻 1 号 p. 1-35
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    フェリペ四世統治下のスペイン帝国は対外戦費の増大に伴う深刻な財政難に苦しんだ。王とその寵臣オリバーレス伯公爵は財政改革によって状況の打開を図ったものの、各地で暴動を招き、帝国の衰勢は決定的となる。このような状況下で、スペインの宮廷からは遠く離れ、かつ他の領土と同じく重い負担を求められながらも平穏を保ったのがペルー副王領である。この地でなぜ暴動が起きなかったのかを知るためには、導入された様々な財政策の実践過程と、植民地社会の反応を究明する必要がある。その財政策の中でも、歳入の増加に有効だったと評価されてきたのが、民から王に供された献金である。しかし、これまでの研究ではその額ばかりが注目され、実態が検討されてこなかった。そこで本稿では、ペルー副王領における献金について、その実現過程と植民地支配に及ぼした影響について考察を試みた。
    本稿では、ペルー副王領において一貫して巨額の献金を集めていたクスコとポトシの二都市について事例分析を行った。そして、献金はその扱いが司教や行政官など在地の権力者の裁量に任されており、彼らの配慮がなければ実現不可能であったことを論じた。金銭負担に対する民の不満を和らげたのは権力者が彼らとの間に培った紐帯である。この権力者たちは多くの場合、王の任命を受けて新たに地域社会の外部からやってきた人々だったが、民に協力を求める過程で地域に根を張ってゆく。しかしこの繋がりは多額の献金を実現させて帝国の財政に利する一方、癒着に転じ巨大な損失を引き起こすこともあった。植民地社会の諸権力が地方で領袖化することの危険性を王室は認識していたが、それを促進する側面を献金という制度は持っていたと言える。かくして、スペイン王室にとって献金は諸刃の剣のようなものであったことが明らかになるだろう。
  • 文部官僚と専門性
    2017 年 126 巻 1 号 p. 39-66
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は、1887年に制定された近代日本最初の官僚任用制度である試補及見習規則期における文部省の官僚任用と文部官僚に要求された専門性・専門知識について明らかにすることである。従来、文部省・文部官僚への言及は、主に教育史領域からなされてきたが、そこでは政策過程を解明することが主眼であり、文部省・文部官僚自体がいかなる組織・集団で、官僚制度の進展とどのように関連したのかといった視角は希薄であった。本稿では、多数の帝国大学法科出身者が各省へ入省する契機となった試補規則期に焦点を当て、文部省による官僚任用の実態を明らかにした。そのうえで、雑誌『教育時論』を用いることで、文部官僚が同時代的に要求された教育行政の専門性・専門知識に関する議論を浮き彫りにした。
     本稿の成果は以下の三点である。
    (1)試補規則期の文部省の試補の採用は、多数を占める帝国大学法科出身者の任用は各省中最少であり、対照的に文科出身の試補全員を任用するという点で、各省の中でも独自の人事任用を行っていた。そして、省内多数を占めた省直轄学校長兼任者・経験者とともに、文科出身者は教育行政を担うに足る専門性・専門知識を持っていると考えられていた。
    (2)文科出身者とは異なり、井上毅文相期の省幹部が「法律的頭脳」と批判されたように、法科出身者は教育行政官としての資質において批判を受ける可能性を持った。根底には、教育とは「一科の専門」であり、法学領域の能力とは別のものであるという見解があった。
    (3)「法律的頭脳」と批判された木場貞長は、「行政」を主として教育行政を考える自身を「異分子」と認識した。そして、木場は文部省直轄の学校長などから学校の実情を理解しないと批判されに至った。木場のような思考を持つ文部官僚が主流となるのは、文官高等試験を経て、内務省の官僚が文部省へ異動し、局長などの省内幹部を占める明治末期まで待たなければならなかった。
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